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性被害で母親が嫌いになった

なんとか捻くれず中学生になったにゃりぺよ。
そのころ、近所では強姦事件が多発していました。

にゃりぺよは事件の概要も知らないけど、同級生にも被害者がいたよう。

その日18時ころ、にゃりぺよは塾から家までの帰り道を歩いていました。
晩ご飯の時間が迫っていたこともあり、にゃりぺよは近道を通って帰ることに。

そのとき、にゃりぺよの左側から男が歩いてくるのが見えました。
にゃりぺよはなんだか直感的に「あ、やばい」と感じました。

にゃりぺよが歩いていたのは、見通しの悪い住宅街でした。
後ろから男が歩いてくることに気づきながら、早く大通りに出ようと歩みを進めます。

前のほうからジャージを着た女子高生が歩いてきました。
人がいたことに安心して、にゃりぺよは早足で歩いていましたが…。

女子高生とすれ違った数秒後、男が急に走り出したのです。
にゃりぺよはパニックになって走り出しました。

女子高生は助けてくれませんでした。
聞こえていなかったかもしれないし、気づいても怖くて助けられなかったでしょう。

にゃりぺよと男が追いかけっこになったのは、ほんの数秒だと思います。
足の遅いにゃりぺよは当然逃げられず、男に腕を掴まれました。

焦るあまり足がもつれて、うつ伏せ状態で歩道に倒れたにゃりぺよ。
薄暗くなってきた住宅街で、男がにゃりぺよのスカートの中に手を差し込んだとき…。

にゃりぺよは半身を起こして「うわあああ!!!!」と絶叫しました。
自分がいざというとき大声を出せる人間だったと知り、にゃりぺよは驚きました。

男も驚き、固まっていたように思います。
すぐ、にゃりぺよの声を聞いた年の近い男の子が「大丈夫!?」と駆け寄ってきました。

男は慌てて、半身起こしたにゃりぺよを突き飛ばすと、元来た方向に走っていきました。
にゃりぺよはその拍子に手をつき、手のひらに大きく擦りむきました。

呆然とするにゃりぺよに、男の子は「今母ちゃん呼ぶから!」と言ってくれて…。
にゃりぺよは頭の中が真っ白で、駆けていく男の子を見送ったあと立ち上がりました。

そして110番通報したけど、恐怖のあまり言葉は出ません。
警察は呆れた様子で「イタズラですか?」と言い、にゃりぺよはショックで電話を切りました。

それからすぐ、男の子とそのおばあちゃんが戻ってきました。
おばあちゃんはにゃりぺよを家に入れてくれて、事情も聞かずに擦りむいた手のひらを処置して、制服の汚れを落としてくれました。

男の子は「俺いないほういいよね」と配慮してくれて、お茶だけ出して部屋を出て行ってくれました。
そしてその後駆けつけた男の子のお母さんが、家と警察に連絡をしてくれました。

ショックでお礼の一つも言えなかった。
それから記憶はないですが、どうにかして家に帰りました。

家で事情を聞かれることになりましたが、警察は初めから怪訝な顔をしていました。
そしてにゃりぺよの話を聞いて「支離滅裂だな」と言いました。

警察は「今まで被害に遭った子は、全員最後まで犯されてる。君は脱がされてもいないだろ」と言うのです。
にゃりぺよは被害に遭っていないか、恥ずかしくて被害を隠しているかのどっちかだと判断されました。

さらには触られた箇所も証拠として撮影すると言われ、にゃりぺよはパニックで泣き叫びました。
にゃりぺよが話せる状態ではないため、しばらくして警察は帰りました。

その後もにゃりぺよは息ができなくなるほど泣き続けました。
とてもご飯を食べられる状態ではありません。

母親は部屋に入ってくると、にゃりぺよに「ご飯できてるんだけど」と言いました。
にゃりぺよは、警察と話している間、険しい顔で俯く母親が何を考えているのかわかりませんでした。

でもきっと味方になってくれるだろうと思って…。
甘えた気持ちもあり「今食べられるわけないでしょ!」と泣きながら言いました。

次の瞬間、母親は「いつまでも泣くな!うるさい!」と絶叫しました。
にゃりぺよは唖然として、泣くのをやめて母親を見ました。

電気の点いていない部屋、真っ暗ななか、母親の顔は見えません。
暗闇の中「近所に聞こえたらどうするの!?こんなこと知られたら…本当に最悪!」と絶叫する母親に、にゃりぺよはまた狂ったように泣き叫びました。

鼓膜が破けるほど大声で泣いていれば、消えてしまえるかもしれないと思いました。
もしくは母親が抱きしめて、慰めてくれるかもしれないと思いました。

母親はにゃりぺよを置いて、ご飯を食べに行ってしまいました。
にゃりぺよは泣きながら、一体どうすれば死ねるのか検索するので精一杯でした。

その後、母親が選んだのは「なかったことにすること」でした。
母親はにゃりぺよの話を聞こうとすらしなかったので、にゃりぺよが強姦されたのだと思っています。

母親は翌日以降、事件のことを口にせず、にゃりぺよを気遣うこともしませんでした。
それどころかご飯を食べなかった反抗的な態度だけを責め、何もなかったかのようにふるまったのです。

にゃりぺよは恐怖であの道に近づけなくなりました。
代わりに伯母が、男の子一家にお礼を言いに行ってくれました。

母親は事実を受け入れず、お礼すらしに行ってくれませんでした。
にゃりぺよは大好きだった母親のことが、憎くてたまらなくなりました。

娘が害されて正気じゃいられなかった、そんな態度には思えませんでした。
少なくとも、母親は母親として、にゃりぺよに寄り添うべきでした。

ちなみに数年後、警察は犯人と思われる男を捕まえました。
でもひどい被害に遭った子たちはトラウマを抱えてしまったのでしょう。

犯人はあの日、にゃりぺよが被害に遭ったことを認め、男の顔を確認してほしいと言ってきました。
にゃりぺよは「土下座で謝罪するのが先では?」と言って、捜査には一切協力しませんでした(警察が土下座で謝罪しなかったからです)。

小さな被害かもしれませんが、にゃりぺよは人生が終わったように思いました。
ここから先は、母親が大嫌いで憎いぐちゃぐちゃになった人生の始まりです。


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