停学
言ったからには、せめて赤点を取らないくらいの姿勢で、と思えば思うほどできない自分がいた。学校へは行くけれど、朝課外はほぼ欠席し、遅刻にならない程度に登校すると、
「社長出勤〜」
えいちゃんが、面白おかしく私をクラスに馴染ませてくれた。あまりにえいちゃんがそういう風に崇めるので、隣のトップクラスの男の子や、クラスメイトの男子は、登下校の際に私にこうべを垂れるようにまでなってしまった。
私がクラスでいじめに遭っているとでも思ったのだろうか、まさかの橋田美子と同じクラスになったのに、えいちゃんのおかげか、女子特有のイジメみたいなものに巻き込まれることなく高校生活を自由に送ることができた。
2学期になる頃、成績は中間くらいになり、何に対してなのか、沸々とストレスが溜まり出し、楽しいと思えることをしたいのがきっかけで、単車通いの男友達の後ろに乗って、国道を走ったり、田舎道を抜けたり、気分良く得体の知れないスリルを楽しんでいた。
警察とすれ違った。ヤバイ、終わった、そう思ったけれど、乗せてくれた男友達が逃げろと言ってくれ、道も分からないところだったせいか、どこぞの知らぬ家に忍び込んだ。
「誰かあ!!」
怒鳴り声がし、慌てて
「すみません。知らない人に付け回されて、怖くてここに逃げ込みました」
警察に追われていた身などとはつゆ知らず、不法侵入してしまった私を、家主も川内高校の制服だということを理解したこと、警察に追われる恐怖心から身震いまで演技できてしまっていたことによって、嘘ではない、と匿ってくれた。
「ごめんなさい。両親が心配しているだろうし、家にも帰らなくちゃいけないし、電話をしても良いですか」
「うちの電話を使いなさい」
携帯を持っているのに、わざわざ知らぬ人の家の電話を借りた。迎えにきてもらうと
「大丈夫ね」
母は心配してくれていた。家主も、田舎だからって何も起こらないと思っていてはいけませんねえと言ってくれた。
帰路に着き、男友達が無事に逃げ切れたのか心配になり、メールを打った。
「どうなった?」
警察に捕まり、事情聴取をされ、白状するしかなかった、ごめん!それで、正直に話したから、高校へは連絡しないって言ってくれた!でも、学校へは連絡しておくのが筋だと思う。
え?なんで?でも、その友達に無理を言って単車二穴をお願いした身としては、言うしかない....
学校へきちんと報告すると、案の定、停学処分を受けた。
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