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ノブレス・オブリージュの原罪

甘ったれの格好付けで独善的なその作家の引用に好きなものがある。
"選ばれてあることの 恍惚と不安と 二つ我にあり"
ポール・ヴェルネールだ。

稀代の言語学者かつ風俗史も体現する超歌手の真夏の卒業式という曲にこんな歌詞がある。

ありがとうって言ってあげる
何もしてないのに感謝される
からっぽな幸せでいてね

どれ程身をすり減らして心を砕いたところで魂のステージが違う相手に伝わることなんて、ほんの上澄み程度で基本無理だと思った方がいい。
誰かに気持ちをわかってもらうなど土台無理な話だから、絶望なんてしなくて良い。
そうであれば悲しくない筈なのに、そうもいかないわたしたちを傷付ける権利なんて無いのに、無神経の暴力で踏み躙られる毎日で。

血を流さないから傷付かないと思うか。
笑っているから応えていないと思うか。

見えている世界が違うのだから、もうこれは仕方がないのだ。高貴に生まれて愚かにならずに済んだ罰なのかもしれない。

あなたの人生の席に座る必要が無い奴に、悲しいことに傷付けられたとしても、あなたが素晴らしいことはどうか忘れないでほしい。
あなたの人生の時間をどうか、そんな奴らに奪わせないでほしい。

わたしたちは恵まれているからこそ、愚かな奴らがやっかみで牙を剥く。

わかりあえなくて当然だ。
個と個でこの世界に垂直に立つから、たまに奇跡みたいに交わるその一瞬が尊いのだ。
悲しむことなんて何もない。

身を守る処世術で、感謝を武器にしよう。ありがとうに悲しみとやるせなさと諦めを包んでとびきりの笑顔で差し出してあげよう。

ありがとう、愚かで今日も生きてくれて。
そう言って笑ってあげよう。