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子育てと経営

私は現在米国ロサンゼルスを拠点に、日本法人を親会社に持つ米国法人(子会社)を経営している。社員数は4名と小規模だが、2019年設立当初は私ひとりだったスタート地点と比べれば、今はビジョンを共有する仲間が増え、目の前に広がる道なき道も、仲間と手を取り合って楽しむ余裕を少しは持てている感覚がある。

2017年。結婚を機に米国に移住して、翌年(2018年)には娘が生まれ、昨年(2022年)に息子が生まれ、今は狭いアパートに4人家族で身を寄せ合って暮らしている。東京で一人暮らしをしながら会社員として働いていた数年前と比べると、私を取り巻く環境は大きく変化した。

環境が大きく変わったとはいえ、子育ては始めてまだ数年足らず、会社もまだ出来立てほやほやで、正直日々分からないことだらけだし、反省することばかりで、自分の無力さ・未熟さを痛感する毎日。環境の変化に適応しきれていない自分に失望してしまうことだってある。それでも、今自分が持てる全てを懸けて、子育てと会社経営を並行して取り組めている環境に身を置けることは本当に幸せだ。自分自身の限界を突き付けられる局面に何度も向き合う過程で、自分の「弱さ」を受け入れ、人に頼る「強さ」や人を許す「寛容さ」を養い、人としての器が少しずつ、本当に少しずつだけれど広がっていく感覚が得られているからかもしれない。そして、子育てと経営の経験は相互に影響し合い、一方の体験から得た学びをもう一方に活かすことができる。それぞれがトレードオフの関係ではなく相互にシナジーを生み出す関係性だからこそ、両方大変だけれど何とか両立できているのかもしれない。

子育てと経営に共通する要素


子育てと経営に共通する大事な要素をいくつか挙げてみたい。
 

|知識と実践
子育ても経営もスポーツと同じで、いくら教科書を読んだり子育てのプロや百戦錬磨の経営者に教えを乞うても、自らの実践無くして、それを習得したり、自分自身のスタイルを構築することは難しい。常に新しい情報や知識に触れる努力は必要だけれど、目の前にある課題に自分の頭と身体を使って真剣に取り組むことでしか、自分の身になる気づきや学びは得られない。

|日々の体調管理
子育ても経営もとにかく体力が必要だ。身体と心は繋がっている。体調が悪いと目の前の課題に集中できないし、なかなか考えも纏まらなかったり、気持ちも弱気になったりする。身体を整えることで、気持ちも前向きになり、いいアイディアや解決策がふっと湧いてくるものだ。子育てにおいても、寝不足の状態では心もすぐキャパオーバーを起こしてしまう。子供が小さい内は特に自分のことは二の次になりがちだけれど、身体の状態をなるべくいい状態に整えておくために自分にとって何が必要かを理解しておくことはとっても大事。私の場合、身体を動かすと全身の血の巡りが良くなって、視界もクリアになり、少々の寝不足でも内からエネルギーが湧いてくる。毎日30分は身体を動かす時間を確保するようにしている。

|問いを立て自分なりの意見を持つ
子育ても経営も大小様々な問いを立てることの連続だ。子育てであれば、どんな子に育って欲しいか?そのために親としてできるサポートは何か?経営であれば、自社の存在意義は、社会にどのようなインパクトをもたらしたいか?誰を幸せにしたいか?そのためにどのような組織であるべきか?問いは尽きない。そして自分なりにそれに対する意見を持ち、前進する必要がある。自分の判断を信じて行動あるのみ。違うと思ったらすぐに軌道修正し、また新たな問いに直面する繰り返しだと思っている。

|利他の追求
子育ても経営も、原動力は「愛」だと確信している。ここでいう愛とは、利他心のことで、人を思いやる気持ち、人の成功を自分のことのように喜び、人の悲しみを自分のことのように悲しむことのできる素直な心と定義したい。子供の成長・自立を願う心、社員の成長を願い後押しする姿勢、お客様の笑顔のために最善を尽くす姿勢。これらはすべて利他心から自然と生じるものだと思う。子供の笑顔は親を幸せな気持ちにさせてくれるし、従業員やお客様の笑顔が、高みを目指す原動力になる。子供をもって無条件の愛を知り、会社が短期的な利益を追求したり損得勘定で物事を判断することの虚しさに気づいた。働く(はたらく)とは、傍(はた)を楽(らく)にする、が語源だと祖父が言っていた。周囲の仲間を心から大事に思い、その先に居るお客様を思う気持ちこそが、回りまわって自分自身に喜びをもたらしてくれることではないか。

子育てと経営は、自己を探求する旅


子育ても経営も、自己を探求する旅と言えると思う。何故なら、今まさに子育てと経営という実践を通じて、自分という輪郭が、以前よりも少しだけはっきり見えてきた気がするからだ。自分の弱さや欲望に向き合い、それを受け入れ折り合いをつけながら、同時に人の痛みや葛藤に共感する優しさを身につけていく。まだ道半ばだけど、今よりもっと好きな自分に出会うために、日々戸惑いながらも前を向いて、歩んでいきたい。そして何よりも、予測不可能な旅の過程を思い切り楽しんでいこうと思っている。

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