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彫刻刀はみんな同じものを買わせてください。 自分の子どもを叱れない保護者より

ある日突然隣のクラスの子の保護者から連絡帳半ページにびっしりと書かれた長文が届いた。細かい字で書かれていたのは、新任の担任に対する文句ではなかった。大方の内容はこうだった。

いじめにつながるので、彫刻刀は学年全員同じものを購入するように学校から指導してください。

彫刻刀に限らず、絵の具セットや裁縫道具セット、リコーダーなどは学校で注文できることがある。もちろん学校側は業者などからリベートをもらうなんてことは一切ない。業者が購入用の封筒を持ってくるので、それをそのまま子供に配布するのみ。この業者は配るけどこの業者のものは配らないなんてことをしようものなら大変なことになるので、配るとなったら全部配る。子どもは保護者と相談して、学校で買うならその封筒にお金を入れて厳重に封をして学校に持ってくる。学校は一度も中身を開けることなくそのまま業者に渡す。彫刻刀の封筒の種類は7種類ぐらいあった。配るだけでも時間はかかるが、配るしかない。選ぶ方も大変だろう。もちろん地元のスーパーマーケットなどで購入しても良い。

今の彫刻刀はとってもカラフル。昔の、持つところが木の5本セットのものではない。ケースもカラフル。キラキラしたものやナイキやアディダス、FCバルセロナなど多岐にわたる。中身は同じ彫刻刀なのだが……。

いじめにつながるので、彫刻刀は学年全員同じものを購入するように学校から指導してください。

無理だ。

一つの業者を贔屓するような形になってはならないし、そんなことをしようものならクレームの嵐だ。それに、その業者(メーカー)に勤めている保護者もいる。選ばれれば悪い気はしないだろうが、外されようものなら訴えられてもおかしくない。そんなことは少し考えればわかりそうなものだが、では、なぜこのようなことを書いてしまう保護者が現れるのだろうか。

自分の子どもを叱れない保護者が年々増えている。

持つところが木のものに比べてカラフルな今時の彫刻刀はお値段も少々高い。何十種類とあるので選ぶのにも相当時間がかかるのであろう。子どもが目を引くような商品はその中でもトップクラスのお値段に設定されている。いや、業者だって慈善事業ではないので、そういうものであるのは納得できる。保護者は子どもよく相談をして、いるものは買うし不必要なものは買わない。各家庭の経済状況も異なるので、それも加味しながら一つの結論を出さねばならない。その結論が出せないから、学校で結論を出してくれと言っている。子どもと円満な関係を保っていたいから……。

どうして学校にスマホを持っていってはいけないんですか?うちの子が写真を撮りたいって言ってるんです。許可してください。

嘘のような本当の話である。卒業式ならまだしも、普通の日に。

保護者は100%子どもの味方であれば良い。だから、責任は保護者にある。育てたようにしか子は育たない。時には代弁者になっても良いだろう。しかし、善悪の判断は教えてあげて。たしかに、おかしな校則ってあると思うけど、「人を殺してはいけません」と校則には書いてない。なぜか?いや、書くわけないでしょ。

人と違う彫刻刀を使っていても、人が豪華な彫刻刀(豪華って何さ)を使っていても、それを羨んだり妬んだりするのではない心を、家でも育ててあげて。

もうすぐ学校では誰も叱れない日が来そう。確固たる意志をもって叱れる先生はどんどん減っている。減らしているのは誰?(何?)


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