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自分を変える 自分で変える

先日、とても幸運な出来事があった。
縁あって自分が教えているところに、その種目の日本チャンピオンがゲストとして指導しにきてくれた。彼は、中学・高校から各世代で日本一に輝いており、この世界では有名な現役選手である。
感染症を予防する観点からも、教えてもらえる方も今回は人数を絞って参加してもらった。本来なら、もっともっと数多くの子どもたちに声をかけて、現役チャンプのプレーを目の当たりにしてもらいたかった。しかし、密になってはいけないし、何より短いお盆の休みを利用してきてもらったからには決して迷惑をかけてはいけないと思い、県内でもトップクラスの子どもたちに絞っての参加とさせてもらった。
私としては、その分濃密な時間になると予想したし、少しでも彼の技術を吸収してほしいと思っていた。

今回参加した子どもたちは、それなりに技術は兼ね備えている。なかなか良いプレーを随所に見せてくれた。しかし、さすが日本チャンピオンは、造作もなく跳ね返す。
ときおりアドバイスをしてくれながら、一緒に練習をしてくれた。
最後には試合もしてくれて、本当に贅沢な時間を過ごすことができた。

後日、練習のお礼を兼ねてご飯を食べながら久しぶりにゆっくり話す機会ができた。お礼をしながらも、昔話に花を咲かせながら楽しい時間を過ごせた。
そこで、聞くともなくかの日の練習の感想を聞くことができた。

「正直、迷いました。」

彼の本音だったと思う。彼は、現役選手でありながら、時間があるときには講習会などで数多くの子どもたちに教えている。会社の方針でもあるし、何より競技の裾野を広げるために熱心に活動している彼には本当に頭が下がる。本来なら企業にも了解をとり謝礼も用意しなければならないはずの選手だろう。今回は夏の休暇を利用した、あくまでもボランティアの活動。
彼が所属しているチームは日本国内では間違いなく強豪である。チーム内でも競争は激しい。また、立場的に上の彼は、多くの後輩選手を指導する立場にもある。
そこでレギュラーとして活躍する彼の目には、私が教えている子どもたちの本気が伝わらなかったのだ。

日本一になりたいです。
子どもたちは、確かにその目標に向かって努力を続けている。
日本一になるということは途方もない目標に聞こえるかもしれない。でも、日本一になったことがある選手は、必ず日本一になるんだと思って練習をしているはずである。僕は(私は)日本一になりたくない、なんて思っている選手が日本一になることなんて間違いなくないだろう。
だからこそ、子どもたちには本気で日本一になると思って、自分を信じて練習をしてほしいと考えている。

彼は何を迷ったのか。
どこまで教えて良いのか。
どこまで本気を出して相手をして良いのか。
きっとそこだと思う。

彼は、あくまでも休日を利用し、言うなればボランティアで一緒に練習をしてくれた。彼の言葉がけにはものすごく嬉しそうな表情をしていた子どもたち。確かに緊張もしていただろう。
しかし、彼には伝わらなかったのだ。

伝わるということはとても重要なことだ。
今回参加した子どもの技術は、世代ではトップのものを持っていると思う。しかし、今回のことで、きっと勝ちきれないことがあると容易に想像できた。
なめているわけでもない、サボっているわけでもない。
でも、伝わらなかった。

今回のことに関して、子どもたちには細かいことを言うつもりはない。ただ、彼の言葉をそのまま伝えてみようと思う。
迷ったと言っていたと。
そして、もしもう一度こんなチャンスがあったら、その時には、伝わる自分であれと言おう。

がんばれ。
私は背中を押すことしかできない。
自分を変えるんだ。自分で変えるんだ。

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