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NO CONTEXT PATCHOULI SMELL

なんかの洋画で、男が、自分の好きな女を口説いてきた男に、こうブチギレる場面があったはずだ。

「おめえパチュリくせえんだよ! クソが!」

英語でのセリフだったけど、彼の話す英語では「パチュリ」のことを「パッチュゥ〜リ」って粘っこく発音していた。「パチュリの匂い」は「Patchouli smell」で、音を書くなら「パッチュゥ〜リ スメェッ!😠」だ。

なんの映画だったか思い出せない。昔の同居人が適当に流していたやつだったから。わたしは見ていない。パチュリの匂いも知らない。なんならどの同居人だったか思い出せない。シェアハウスやら恋やらで、いろんな人と同居してきた。一人一人は覚えてるけど、誰が見てたか思い出せない。ただ、映画の中でキレていた、彼の叫びが頭に響く。

「おめえのパッチュゥ〜リ スメェッ!😠」

英語圏のTwitterには「NO CONTEXT」という文化がある。

NO CONTEXT、つまり、文脈から切断して……日本語インターネットで例えるならば「殺伐としたスレに突然の○○が!」みたいな感じで、突然の何かを投下し、その意外性でウフフッてなる、みたいな文化だ。

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言語が変わっても人間のやることってあんま変わんねえな、っていうかインターネットそのものが完全に英語優勢の文化であり、しかも日本語、特に戦後の日本語は英語の影響をめちゃくちゃ受ける言語なので、もしかするとNO CONTEXT文化が先にあって「殺伐としたスレに突然の○○が」文化が生まれたという順番なのかな、と、色々と考えてみたりする。

なにはともあれ、ふとしたときに、しかも全然関係ないときに、「おめえのパッチュゥ〜リ スメェッ!😠」ってキレていた彼の声がわたしの頭に響く。まったくもってNO CONTEXT PATCHOULI SMELLである。

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