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耀う森

個展のお知らせです。

今年の春は、疫病の流行というおそらく人生の中でも珍しい時間の中、それぞれの人にとって忘れられない日々になったのではないかと思います。

活動を最低限に抑えたことで、色々と生活の変化があったと思うのですが、私の場合は、近所の森に出かけることが増えました。

そしてそれが、今回の個展の「土の部分」になったと思います。


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今の場所に住み始めて4年目。今年は、初めて出会う植物の多い年でした。

私の暮らす逗子市は、海のイメージが強い場所だと思うのですが、それと同じくらい森も豊かな土地です。

ここに引っ越してきてからというものの、私はあいかわらずガラスばかりに向き合っていて、たくさんのものを見落としていたようで。一つのものだけに集中していると、限られたものしか見えなくなって、それに気づく事も難しいのですよね。

春先に緊急事態宣言が出され、なるべく人がいない場所を散歩しようと思った私は、地図を見ながら、まだ行ったことの無い場所、特に緑の多いところを探しては、夫と歩いたり、または自転車に乗って、近くの様々な森に出かけました。

春の森は命があふれていて、目が覚めるようで。

今まで私はここで何を見ていたんだろう、そう思いました。

森の中で、様々な植物や生き物たちが、共生しながら生きている。
先週咲いていた花が、もう枯れている。大きな葉っぱが広がって、自由に影を作る。
無数の綿毛が飛んでいる。美しい鳥の声がする。
この白い花は、なんという名前なんだろう・・・。

次々と出会う美しい瞬間を夢中で追いかける。
一瞬一瞬が、今しかない輝きに満ちていて。


この、生命力溢れる森の様子を描いてみたい、と強く思いました。


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時を同じくして、春には庭にたくさんの種を蒔きました。これもやはり、外出自粛の影響が大きかったと思います。

きゅうりと茄子は今までも育てていたのですが、今年は庭の一部を整備して、というか雑草だらけだった場所を綺麗に整え、初めて種から夏野菜を育ててみました。

きゅうり、なす、トマト、ピーマン、大葉、バジル、菊芋。そして色々な花の種も。

朝、寝起きに庭に出て、ぐんぐん伸びていく野菜たちを見るのも嬉しいし、食べたらとっても美味しくて。成長過程をスケッチしながら、庭で過ごすのも、かけがえのない時間でした。

そして庭に突然現れた、紫色の花。どこかから風に乗って種が運ばれてきたのか、鳥の落し物か。調べてみると、「トレニア、別名を夏スミレ」と。

こんな風に、庭から突然、贈り物のようなモチーフが現れることもあって。
今、それらを描いている最中です。(めちゃくちゃ追い込み中です)

庭も森も、目の前の美しい一瞬をすぐに描かないと、どんどん取り逃がしてしまうということも学びました。現れたものを受け取り、それを一番フレッシュな状態でガラスに表現していくこと。そして、目の前に現れたものを、受け取れる状態に自分がいるということの大切さ。

今回の個展は、そんな日々の中で出会った美しい瞬間を、お届けします。


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さて、個展のタイトルは「耀う森」です。
耀う=かがよう、と読みます。

耀うという字には「翟」という部首があります。
「翟 テキ」とは、羽根が美しい鳥という意味があります。鳥が美しい羽根を、パタパタと動かしているようなイメージ。ここから「耀」は、きらきらと光り輝く、とか、きらめき揺れるという意味になったそうです。 

ガラスに銀線で描き出す世界が、鳥の羽根のように軽やかにキラキラと輝くことを願って。毎日毎日、コツコツと制作しました。

そんな耀う一瞬を、どうぞご覧ください。


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「耀う森」 藤井 友梨香 ガラス展

場所:SAVOIR VIVRE (東京・六本木)
    www.savoir-vivre.co.jp
日時:2020.9.5 (土) 〜9.13(日)
時間:11:00〜19:00 *会期中9/9(水)は定休日

*在廊予定日、9/5、9/13
状況次第では色々と変更があるかもしれません。Instagramのほうで、スケジュールなど、こまめにアップする予定です。








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