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イスラエル国防軍のベドウィン大隊の面々を独占公開: ギャドサー585部隊

The Time of Israel 2024年7月21日の記事の翻訳です。著者:GUY FATTAL 写真:フォトエッセイ「私達はこの土地と繋がっていて、それを守るために戦いう」より

写真家がガザ南部国境沿いのイスラム教徒が多数を占めるイスラエル国防軍部隊に加わり、戦死者を悼みながらこの献身的な戦闘員やトラッカー(追跡者)の痛みを分かち合う。

先月、私はイスラエル国防軍のベドウィン大隊ギャドサー585部隊に参加するため、ガザの南国境に向かった。イスラエル南部の砂漠地帯で活動するこのユニークな部隊は、何十年もの間、国の防衛において重要な役割を果たしてきた。ベドウィン系イスラム教徒が大部分を占めるこの大隊は、その多様な構成と、兵士達が守る土地との根深い結びつきで際立っている。

10月7日の朝、休暇中で別の部隊と交代していた彼らは、ハマスの壊滅的な攻撃が展開される中、突然出動要請を受けた。この攻撃により、最終的にイスラエル南部で1,200人(ほとんどが民間人)が殺害され、251人がガザ地区に拉致された。

混乱にもかかわらず、ギャドサー585部隊の地形に対する本質的な理解は、ケレム・シャローム地域の危機に対応する上で極めて重要であることが証明された。

イスラム教徒がイスラエル国防軍に入隊するという考えは、多くの先入観とは一致しないかもしれない。しかし、これがギャドサー585部隊の特徴のひとつである。ベドウィンが多数を占めるこの部隊には、ユダヤ人、アラブ系イスラエル人、キリスト教徒の兵士もいる。

イスラム教徒の兵士達との会話の中で、10月7日以降のハマスの恐ろしい行動は、彼らが大切にしているイスラムの価値観と相反するものであることが明らかになった。大隊長のナデル・イアダは、イスラム教やコーランには、ハマスが犯した殺人、強姦、誘拐の残虐行為を正当化するものは何もない、と熱心に力説した。

「彼ら(テロリスト)はイスラム教徒ではない」とイアダは断固として述べ、彼らの行動と真のイスラムの教えとの関連性を否定した。

ギャドサー585部隊のユダヤ人とイスラム教徒の兵士達が写真撮影に応じる。(Guy Fattal)

1948年のイスラエル建国以来、ベドウィン・イスラエル人は一貫してこの国のために戦ってきた。「ベドウィン」とは、アラビア語で土地と砂漠の民を意味する「バダウィ」に由来する。何世紀にもわたり、ベドウィンは砂漠に住み、砂漠と共に暮らしてきた。彼らに独自の視点と環境とのつながりを与える生き方である。


ガザ南部国境地帯で常に活動してきたギャドサー585部隊は、このつながりを体現している。この部隊の兵士達は単なる戦闘員ではなく、何世代にもわたって培われた知識を駆使して、この土地を巡り、守る土地の世話役なのだ。

イアダは、彼らの永続的なコミットメントを強調した: 「我々はこの土地とつながっている。ここは我々の国であり、故郷であり、我々はこの土地を守るために戦い続ける。」ベドウィンは、自分達が守る土地に対する義務感と尊敬の念をもって子供達を育て続けている。彼は、これらの価値観がいかに深く根付いているかを強調した。

軍務以外にも、兵隊達は、ヘブライ語の授業、運転のクラス、リーダーシップ・セミナー、高校教育修了の機会など、様々な形で支援を受けている。奨学金や指導プログラムは、兵役後に市民生活に移行するための更なる支援となっている。

アッタ

アッタはギャドサー585部隊に3年間在籍している (Guy Fattal)

アッタは部隊に3年間在籍し、キャリア軍人としての役割に移行する瀬戸際にいる。彼は将校になることを熱望しており、軍隊でのキャリアは体系化された規律ある生活への道だと考えている。アッタは、弟が彼の跡を継いで部隊に加わり、家族の奉仕の遺産を引き継いでくれることを願っている。

モハメッド

モハメッドは5月に名誉ある大統領優秀賞を受賞 (Guy Fattal)

ボスマット・ティボン出身のモハメッド(25歳)は、大隊の中でも目立っている。真面目な態度で知られる彼が、5月に名誉ある大統領優秀賞を受賞したのも当然だろう。

2022年にイスラエル国防軍に入隊する前、モハマッドは父親とマーケティングの仕事に携わり、海外を旅行し、獣医学を学んだ。当初は戦闘衛生兵として勤務していたが、現在は分隊長の右腕として活躍している。

彼の真剣な表情は、勤勉さとプロフェッショナリズムに対する彼の信念を反映している。10月7日、自宅から呼び出された彼と分隊長は、展開する危機に即座に対応するために動員された。兵役を終えた後、モハマッドは、奨学金制度を利用して更に教育を受け、プロの世界で身を立てるつもりだ。

マフディ、ラレブ、ヨセフ

左から右へ:マフディ、ラレブ、ヨセフは、義務感からギャドサー585部隊に入隊した (Guy Fattal)

シブリ出身のマフディ、ラレブ、ヨセフの3人は、深い義務感からベドウィン大隊に入隊した。彼らはイスラエル国民として、国を守り、国民を代表することが自分達の責任だと信じている。ハマスの無差別な暴力を目の当たりにして、彼らはハマスの行動が自分達が大切にしているイスラムの原則に反することを強調した。また、兵役は将来の勉学やキャリアに役立ち、誠実さや忍耐力といった価値観を植え付けるものであることも認識している。

ヨセフは、笑いながら私に赤毛のベドウィンを見たことがあるかと尋ね、その場の雰囲気を和ませた。

アユーブ

ザルジール出身のアユーブ(23歳)は、部隊の指揮官である。国と家族を守るという深い使命感に駆られ、アユーブは将校になることを決意した。自分が今兵役に就いているように、自分の子供達も将来は役に立ってくれると信じている。10月7日、彼は休暇で自宅にいたが、すぐにケレム・シャローム地域に出動し、戦闘に参加した。

アミ

アミは2度の戦闘による負傷に耐えながら、20年間をIDFに捧げてきた(Guy Fattal)

ザルジール出身のアミは、2度の戦闘による負傷に耐えながら、20年間をIDF(イスラエル国防軍)に捧げてきた。現在、部隊の規律、教育、兵站を担当するアミは、10月7日に戦死した南部旅団司令官アサフ・ハマミの親友だった。戦前、ハマミはアミにベドウィン部隊への復帰を要請していた。アミの目標は、基地内の全ての兵士を歓迎する環境を作り、尊敬と平等が優先される「勝利の家族」の精神を育むことだ。

エロン

ギャドサー585部隊のユダヤ人司令官であるエロンは、ベドウィンの兵士達との一体感を感じている(Guy Fattal)

ベエルシェバ出身のユダヤ人将校エロンは、ベドウィン大隊の分隊長を2年間務めている。この間、彼はベドウィンのコミュニティーと深い兄弟愛を育み、完全に溶け込み、受け入れられていると感じている。この絆は10月7日以降、更に強まった。私が彼の兵士達に「よそ者」を指揮官に迎えることについて尋ねると、彼らは皆笑い、彼が今や仲間の一人であると認めた。

ジード

ジードはベドウィン大隊の追跡者として17年間勤務した (Guy Fattal)

日が沈み、カメラをしまおうとした時、私はジード・マザリブに出会った。彼の目には、彼と話して写真を撮らなければと思わせる何かがあった。ベイト・ザルジール出身(34歳)のジードは、ベドウィン大隊で17年間、トラッカー(追跡者)として働いていた。夕暮れが迫るなか、彼はトラッカーの重要な役割について説明した。トラッカーは土地との深いつながりを頼りに脅威を特定し、部隊の安全を確保する。

彼は、羊飼いとして育ったベドウィンがトラッカーの役割に適していることを強調した。

ジードは17年間ベドウィン大隊のトラッカーとして勤務した。彼は最近、ケレム・シャロームのフェンスでハマスの待ち伏せ攻撃を受けて死亡した (Guy Fattal)

10月7日、ハマスの攻撃を受けた時、ジードはケレム・シャローム基地にいた。彼は勇敢に戦い、その過程で友人を失った。その日の記憶は彼に重くのしかかった。二人の幼い子供の父親であるジードは、家族が彼の安全を心配していることを話してくれた。

別れ際に、私はジードに、次に会った時に彼のいとこによろしく伝えてほしいと頼んた。(彼のいとことは、私が軍隊で一緒に働いた事があるジードの隣人だった。)

その翌朝6月6日の午前4時、3人のテロリストが攻撃用のトンネルを通ってケレム・シャロームのフェンスに近づいた。ジードは最初の対応者の一人で、妻と2人の子供を残して、その後の戦闘で死亡した。

Guy Fattal はイスラエルの写真家であり、イスラエル社会の豊かで多様な文化を世界の聴衆に伝えることに尽力する講演家でもある。

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