駄文 IF世界への憧憬

私は島だとか田舎だとか、人里離れた、都会と隔絶されたような土地に時折思いを馳せる。
それは何故か、田舎独特の匂いが好きとかレトロな風景が好きとか、そういうものでは無い。
片田舎生まれの私にはそんなもの見飽きてるし、緑もそこらじゅうにあった。
じゃあ何がそんなに私の心を動かすのか。
ある島を想像してみるとする。
小さな湊があり、小舟がいくつも停泊している。
村には駐在や郵便局がある。小さな商店がある。
片田舎にそんなものはなかった。だだっ広い緩やかな斜面に家が生えるだけ、商店もなければ交番すらない。車に乗らないとどこへも行けない、まさに何も無い場所だった。
でも島は違う、小さな空間の中に全てがある。たとえ車がなくても島ならば完結できる、いや、完結する。
時々旅に出て思うことがある、「もし私がこの村に生まれていたら、どんな人生を送っていたのだろうか」と。そんなことわかるはずもないが毎日海を見て夕日を見て湊の横を歩き学校へ行って、帰りは通りに一軒だけある小さな商店で家のお使いをして帰る。
非日常を頭の中で日常にして思いを馳せる。とても楽しくてとても虚しい、寂しい、感傷に浸るような思いに濡れる。

私は島だとか田舎だとか、人里離れた、都会と隔絶されたような土地に時折思いを馳せる。
それは、あったかもしれない、いやあるはずがない「私」を創出し、思いに浸る体験が好きだからだろうと思う。

そんな考えだから群馬県出身、新潟県の大学卒の大阪府民などというとんでもない移り住みをしているのだろうか。それでも私は色々な景色を見て、感じて、同化したい。あったかもしれない私を重ねたいと思うのだ。

大都会(あくまでも個人的に感じる)の地下鉄に揺られながら。そう思う。

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