私はノートを開いた。そこにはみたくもない数式の羅列が永遠に続いていた。論理的な考え方、計算力、またそのような言葉でまとめられたものたちは私にとって目の敵でしかなかった。親や先生は将来の為と言うが本当にそうだろうか、未来なんて誰にもわかるはずないのにそのように言うのは嫌いだ。いらない苦労をするのはごめんなんだ。
ふと窓から外を見た。そこには文系に進んだ子達が部活前で暇だからと言って馬鹿騒ぎをしている。私だって遊びたい。バイトだってしたい。お金を自分で稼いでたくさん使いたい事があった。新作のコスメにスタバ、洋服だって。一緒に受けている子達もそう思わないのだろうか、隣の彼を見たらちょうど目があった。
「なに?」
「文系の子羨ましくない?」
「ああ」
そう言って彼は先生の顔を伺いながら話した。
「確かに羨ましいけど、理系に来た方が就職とかにうまく効くよ。」
「まだ苦労するの?」

私は恐る恐る聞いた。
「するかもね、でもしょうがない、やりたいこととできることは違うんだ。俺はできる事を優先させる道を選んだと思ってる。」
「それでいいの?、多分就職してからも大変だよ?」
「やるしかないよ。やっぱり俺も遊びたいしお金欲しいしやりたい事もある。でもね、生きていくためにはやりたいことだけじゃだめなんだ。」
「やりたい事じゃ生きていけない?」
「そう言う事じゃない。生きてはいけるよ。でもやりたい事をしてギリギリの生活より、できることをして余裕を持って周りも幸せにしたいんだ。」
「なんかくさい。」
「こう言う話はそうなるよ。」
彼は照れ臭そうに言った。
「私、私がわからない。」
「そりゃそうだ、俺だってわからない。」
「どうやって生きていけばいい」
「それは君が考えることさ。」
私は窓の外を見てからノートに再び呪文を書き記し始めた。
#小説

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