王子様は甘いのがお好き(試し読み)
佃芽実(ツクダメイミ)、25歳。
――何でこんなことになっているんだろう…?
後ろは壁、目の前には美しい顔をした男の人がいた。
美しい顔の彼は、我が社の社長である藤宮理京(フジミヤリキョウ)さんだ。
どうしてこんな状況になってしまったのかと考えていたら、
「初めてなんだ」
形のいい唇を開いた社長が音を発した。
「は、はい…?」
私は訳がわからなくて、首を傾げた。
ここにいるのは、私と社長の2人だけである。
どうして私は彼に追い込まれてしまったのだろうか?
「君のような女性に出会ったのは初めてなんだ」
「えっ…」
聞き返すために唇を開いたら、その唇は彼の唇によってふさがれてしまった。
――何がどうして、こんなことになってしまったと言うのだろう…?