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美徳

沈黙は金なりという言葉がある。黙っていた方がいい時もある。ということだ。

そう、たぶん黙っている方がいい。

黙っている方が賢そうに見えるときもある。言い表さないのだから失言もするわけがない。

黙っていた方がやり過ごせるときがある。喧々轟々の言い争いには加わることなく鎮火するまで待てる。

黙っていた方があけすけではない。なんでもかんでも言うことは一般的に露悪感が高いのかもしれない。

言うことは確かに選んだ方がいい。言わなくていいときもたぶんある。こう書くのは黙っていることなんてほとんど出来ないからだけれども。

胸から喉がむずむずするような感覚を味わったことはないか。大切なことになにかあったとき、おかしいと思ったとき、感嘆したとき、総毛立つような出来事があったとき、どこからか溢れてくる言葉が出てこようとする、あの感覚。

もちろん言葉は選んだ方がいい。その程度は中途半端な期間生きてきて覚えたから、これでもたくさん呑み込んだ。

それでも、わかる、わからない、好き、苦手、嬉しい、さみしい、感動する、悲しい、美味しい、そうでもない、愛している、苦しい、、


黙っていることが美徳とされるならば、私はそんなものは要らない。


2020.06.24.