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鯉はやがて竜になる

「登竜門」の由来はご存知ですか。

中国の故事からきています。黄河に「竜門」と呼ばれている激しい急流があると言われていました。急流のふもとに集まっている鯉は、決して「竜門」を登ることができないとされていましたが、登ることができた鯉は竜になれる、という言い伝えからきています。

「後漢書」の「李膺伝」には、漢の時代に、李膺と呼ばれている偉い官僚がいて、彼に認められた若い人は皆出世をすると言われていました。李膺に認められることを、竜門を登る言い伝えに例えて「登竜門」と呼んでいたという記述が「後漢書」に残されています。

総じて、登竜門は立身出世のシンボルとされています。この故事から「鯉の滝登り」という言葉も生まれました。鯉のぼりを5月の節句に飾る由来も、男の子が大成する願いを込めています。

これは誰かに聞いて知っていたり、調べたりすれば分かることではありますが、何故、今日がこの話題なのかは、私が大切に大切に推している方が、その身体に鯉を彫られたからです。帰化を申請している彼らしい、とても日本らしい、美しい作品がその腕に宿りました。

急流を遡上することは、とても勇気と、努力を必要とすると思いますし、限られた者しか許されない世界です。また、選ばれた故に、選んだ故に、苦しい道のときもあると思います。きっとあったと思うのです。しかし、それを見せずに、私が記憶に多く残っているのは、ただひたすらに真摯にプレーをしている姿と、勝利の際に向けてくれた笑顔です。

これからも貪欲に、強い意志で夢を追い、その瑞々しい、生命力に溢れた心と身体を大切に使って、どこまでも駆け登って欲しい。その輝きを、私にはその竜の鱗の反射の、ほんのひと欠片だけでいいので見せて欲しい、と願っています。


2020.05.30.