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ギンモクセイとあの子を探して

知らない場所のはずなのに、どこか懐かしい気がして立ち止まる。
目の先見えるのは、たくさんの白い花を咲かせたギンモクセイ。
風にのっていい香りが漂ってくる。
「ふふっ、珍しいなこんな所に。誰かが植えて育てたのか…あれは?」
よく見ると木の根元の方に名前らしきものが彫ってあった。
“フレア”
「まさか…」
その時、こちらの方へ一人の老人が歩いてくるのが見えた。
「すみません。あの木に彫ってある名前の人を知っていますか?」
老人「おやおや、女の騎士なんて会うのは初めてじゃ。けどあの子が話してたのはお前さんのことかのぉ」
「フレアを知ってるんですね」
そう言うと老人は静かに頷きポロポロと涙を流し始めた。
老人「あの子はずっとお前さんの帰りを待っておった。あのギンモクセイは私達の思い出の木じゃから、花の香りがお前さんまで届いて必ずまた会えると言っておったな」
「フ、フレアは今どこに?」
老人「あの子は…あの木と共に…」
フレア「ちょっとお婆ちゃん、何勝手に死んだことになってるのよ!」
老人「フォッフォッフォ。あんまりにも騎士さんが不安そうな顔をしてたもんでな、お前さんたちの愛は本物じゃ。騎士さんや、もうフレアのそばを離れるでないぞ?」
「は、はぁ…」
何か言いたかったけれど、言葉がうまく出なかった。

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