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自営12年め、今の日々が愛しい。

 自分が個人事業主になったのはもう12年前のこと。

 その間、仕事の内容は何度か変えたが、一貫して自営を続けてきた。2009年から完全に在宅で、2016年からは好きな文章の仕事を主体にしている。

 自営の初年度はカフェの経営だった。わたしはもともと、10代の頃からずっと料理の仕事をしていて、20代前半でまあいろいろあって、自分の店を持ちたいと考えるようになった。そのうちにご縁に恵まれてカフェをやれることが決まり、しばらくの間は自分のカフェを営んでいたが、そこの場所が閉まることになり閉店。

 同じ頃、祖母が介護を必要とするようになって田舎へ戻り、家で介護しながらできる仕事を……とあれこれやった。もう時効だが、人にはあまり言わない方がいいのだろう仕事もしていた。その後、好きな文章で仕事をいただけるようになり今に至る。

 そんなこんなの12年。

 自営業やらフリーランスやらによくついて回る、起業とか独立とか、そんなような言葉はほとんど意識しないでやってきた。

 そもそも自分は不登校児のはしりで、進学して就職してとか、大学受験とか、そういったいわゆる「レールに乗った」選択ができる人生では全くなかったから、裸一貫で自営を試みる不安や怖さなんかともほぼ無縁だった。

 出だしの地点で選択肢は多くなく、その中で、与えられたものと掴みとれるものとをその都度選んできた。自営はその延長線上にあった。

 今は、家で自分のペースでできるこの仕事がとても好きだ。

 スケジュールは自由に決められるし、身ぎれいにして出勤する手間もないし、今もだけど夕食の煮物の鍋をかけながら仕事をしたり、こういうやってみたいと思った記事を打ったりすることもできる。

 それに、個人事業主になっていちばん気が楽になったのは、もう履歴書を書かなくていいのだということ。文章の仕事をする上でも、クライアント様は自分の文章のテイストや過去の文章内容など実力を見て依頼してくださり、学歴を聞かれたことはない。お納めしたものが良ければそれに対して評価と信用を寄せてくれる。

 とはいえもちろん、替えも保証もない個人事業主。文章を量産できなくなったら終わりなんだけども、「そうなったらどうしよう」なんて思ったことはない。

 んなこと考えたってわからんし、そうなったらそん時考えるしかないし、現に自分は、文章をつくれなくなったことは人生で一回もない。

 仕事で何千字何万字打ちこんで、そんで自分の好きな小説の原稿も打つ。その繰り返しがただ愉しい。

 「天職」が何たるものなのかはよくわからんし、料理の仕事をしていた頃はそれこそが自分の天職で、一生続けていきたいとも思っていたけど、今はこの日々も同じぐらい愛しいと感じている。

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