ただの人間の叛逆

私たちはただの人間だから、調子に乗ったって必死に生きたって遊んで過ごしたっていいと言いたいんだ。

私たちは自分がやりたいことをやっていいし、人生を全部賭けて何かを得ようとしてもいいし、守りたいものだけを守ってもいい。
仕事をする上では、手の届く範囲の責任を果たすことだけが責務であればいい。
決して誰かの都合の良い人間である必要はないし、人生の使い方を指図される謂れもないし、職責以上の責任を負わされるブラック企業に殉じてはいけない。

それを否定するようなツイートを見つけたから、ただの人間として抵抗の爪痕をnoteに残しておきたいと思った。
このツイート主のような、都合の良い駒にならない他人を罵倒する人に対して、私は抗いたいと思う。

ツイート主は、グローバルダイニング社長の長谷川氏による東京都への訴訟提起と彼の主張に対して、コロナ軽視だと怒っている。
そう言っている人は他にも多いし、まあ分からなくもないのだが、一連のツイートにあまりに人を人と思わない文言が並んでいて、率直に驚いた。

「おまえ何様?」
「ただの飲食店店長だろ。調子のんな」
「じじいに行政が構ってる暇ある訳ねぇだろ。甘えんな」
「蓋を開けてみたらただの老害で、『老害vsミドリムシ』というどうでもいい問題でした」

社長の長谷川氏が100%正しいことを言っているとは私も思っていない。
彼の考え方が偏っているかそうでないかと聞かれれば、反自粛派の私から見てもまあ偏っている方だと思う。
ただ、長谷川氏を「ただの飲食店店長」だと笑うならばこそ、
そんなただの飲食店店長に過重な責任を問うのは筋が通らないとも思う。

長谷川氏は紛うことなきただの飲食店店長だ。
自分の事業が第一だろうし、自分のところの従業員と関係先と顧客以外は知ったこっちゃなく、言いたいことは堂々と主張する人なんだろう。

でも、ただの飲食店店長だからこそ持論を展開する自由くらいあるし、
ただの飲食店の店長だからこそ飲食店の営業制限に怒るのは正当な権利だ。
何様も何も訴えの利益がある当事者だから東京都へ訴訟を提起したのに、
被害を受けているのでも訴えられているのでもない赤の他人におまえ何様?と咎められる筋合いがあるだろうか。
頭の悪いただの飲食店店長がコロナを拡大させる、それはコロナを憂える自分や社会への加害だと言いたいのかもしれないけれど、
「ただの飲食店店長」にコロナの感染の拡大縮小の鍵を握らせたり、責任を負わせたりするのは普通にナンセンスなんじゃないだろうか。
その責任は政府と感染症専門家と医者にあるのであって、ただの飲食店店長に求めるのは間違っている。そんな認識では正しい対策などできやしないだろう。

大体、「社会で経済活動する公共的存在として相応しい振る舞いをしろ」「ただの飲食店店長が調子乗るな黙れ」を同時に言うのは矛盾が過ぎる。

店長や社長の責任は、
①従業員への給料の支払い
②仕入や家賃の支払い
③顧客からの対価に対する成果物の提供
の3点に尽きると私は思う。

社長はいかに自分の事業が第一でも労働者にはちゃんと給料を払わなきゃいけないし、仕入代金も家賃も払わなければならない。
正社員は売上が減っても簡単には解雇できないし、大量仕入前提の契約を結んでいれば、材料の仕入量もおいそれと減らせない。
社会問題なんか知ったこっちゃなくてもブラックは咎められるし、衛生管理のやばさがバレると船場吉兆みたいに詰む。
金を支払われた以上は顧客にちゃんと料理を提供する義務がある。

あの社長は社長だから、東京都の営業制限や明らかに規模に対して足りない補償では、
①従業員に給料が払えない
②仕入代金や家賃が払えない
③営業を望む顧客がいるのに料理を提供できない
がゆえに東京都を提訴したわけで、正しく「ただの飲食店店長」の責任を果たそうとしているだけではないかと思う。

グローバルダイニングは曲がりなりにも上場企業で従業員も多い。
それだけの責任を抱える社長にすら「ただの飲食店店長が調子乗んな」と言うramos氏のような人間が、
コロナ禍で雇用を切られた人、大学を中退した学生、経済的・精神的に追い詰められた方々の声をどれだけ塞いできたのだろうと思うと、
「専門家でもないただの人が調子乗んな」という人たちには徹底的に抗わなければならないと思う。

日本は民主主義国家だから、専門家でなくても持論を展開していいし、権利が侵害されていると感じたら訴訟を起こしていい。
何より、調子に乗りまくって、やりたいことをやって、正しく自分の手の届く範囲の責任だけを果たして、何様だてめえと言われても俺様だと胸を張って生きてもいいと、私は何度でも言うんだ。

ただの人間代表としてどうしても叛逆したくなって、長文を書いてしまった。

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