ロスタイムのマッチング

「まりかさんが都合のつけやすい曜日や時間帯、ありますか?」
「直近では明日、土曜の夜は空いています」
「明日は昼間、学生時代の友だちと昼飲みが入っているんです。
時間が読めないと、厳しいですか?」

金曜の夜、院卒のリョウタさんとお顔合わせの日程調整の段になったとき、あえてまりかは直近の土曜の夜と伝えてみた。
彼の住むまちで、インドカレー屋さんを探そう、という計画だ。
「ルールズ」では、3日より近いデートのお誘いは断る約束だが、いまは1週間しないうちにアプリ退会を決めたいわばロスタイムのようなもの。
とにかく巻いて、巻いて、である。

リョウタさんは、明日の夜は都合が悪い、とは言わなかった。
ただ、何時になるかわからないけどいいかな? というわけ。
この週末は、父をショートステイに、ワンコはペットホテルに出したから、まりかを時間的に束縛するものは何もない。
いつ来るとも来ないともわからないまだ見ぬ殿方を、知らないまちで軽く引っかけながら待つのも、オツではないか。
駅前のお店を見繕って、適当な時間までお待ちして、待ちきれなくなったら帰ります、と返信しようかと思って、でもふと立ち止まった。

彼が会おうとしているのが、どのくらいのなかよしなのかも知らないし、どこで何時から会うのかも知らない。
そもそも、殿方なのかもわからない。
でも、数日前にアプリで知り合ったひと回り上の女性を待たせていたら、ゆっくり飲めないのではないか。
したい話もできないのではないか。
せっかくの昼飲み、気の置けない仲間と時間を忘れて酔いたいのではないか。

「後ろに私との予定を入れてしまったら、お友だちとゆっくり飲めなくなってしまいませんか」

金曜の夜8時前に、そう送っておいた。
返信はなかった。
これまでかな、とも思ったら、起きると日付が変わってからメッセージが届いていた。

「お気遣いありがとうございます。
そうですね。別の日にゆっくりカレーを楽しみましょう!」

短い一文で、私が伝えようとしていたことを探り当ててくれたらしい。
いい人だな、と思った。
私と遠くない感覚を持った人なのかも、とも思った。
彼は、楽しい土曜の午後をすごしただろうか。
ロスタイムのマッチング、ご縁に感謝しながら流れに身をまかせよう。

こうして手に入れた自由な土曜日、まりかは気ままにすごした。
お昼の冷麦は、ねぎ、みょうが、オクラに白ナス、唐辛子を並べ、ふつうのつけつゆに加えてネギだれも用意した。
自分が食べたいものを、食べたいだけ用意し、食べたいときに食べる。
何と自由なのだろう。
いま、年寄り4人に振り回される毎日がどれだけストレスになっているのかを、改めて痛感する。

ひとりとひとり。
相手の生活を気遣いながら、自分の生活も大切にする。
ひとりが充実しているから、ふたりが充実する。
そんな殿方に出会えますように。


*2023年7月22日の活動状況
・もらった足あと:6人
・もらったいいね:0人
・やりとりした人:1人
いまやりとり欄にいる殿方は4人。
3日後の退会を控え、だれにどうやって伝えよう。
私がもう少し連絡を取りたい殿方は、だれ?

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