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アナログバイリンガル

 友人が父親から生前贈与した遺産で建てたという家に遊びに来た。住宅街の中で異彩を放つ茅葺き屋根が目印だ。
 友人がパリッとした白シャツで出迎えた。
「親父さんの遺産を食い潰す気かよ」
 茅葺き屋根の維持にどれほどかかるか調べてしまった。
「まあ、入れよ」
 無粋な質問をした俺に、にこやかに笑みを返す。
「流石に天井は高いな」
 黒光りする梁から色とりどりの照明が下がっている。
「照明は学生達がデザインしたんだ」
 友人の妻が何かを床に置いた。
「これテレビで見たことある!」
「茶運び人形な。これは友人が修復したものなんだ」
 他にもからくり時計や獅子頭などが飾られていた。
「色んな人達と一緒に作ったんだ。作業場も後で案内するよ」
「面白いな」
「お前の銀塩カメラで撮ってくれよ。Webサイトに載せるから。これ名刺」
「アナログバイリンガル?」
 ヘンテコな社名の社長はにやりと笑った。

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