金持ちジュリエット

「ねえ、ロレンス。馬鹿正直に私が毒を飲む必要はないんじゃない?」
 ジュリエットは頬杖しながら呟いた。
「どういう事です」
「失敗するのは目に見えてるのよ。だから、身代わりを立てましょう。きっとロミオには、本物の私じゃ無い事はすぐに分かるはずよ」
「身代わりなんてどうするのです」
「お金で雇えば済む話よ」
 恐ろしい計画に震えるロレンスだったが、弱みを握られていた為に頷くしか無かった。
 可哀想な身代わりのジュリエットは毒で死んだ。ロミオは身代わりだと気付かずに短剣で自殺した。
「なぜ、こんな事に」
 安宿に身を隠し、嘆き悲しむジュリエットに、ロレンスは無慈悲に言い放つ。
「お金を沢山使って、あなたそっくりの女性を探し出したのです。気づかなくて当然です」
 ロレンスは毒の小瓶を古ぼけた丸テーブルの上に乗せ、安宿を出て行った。ジュリエットは小瓶に手を伸ばす。微かに何かが割れた音を安宿の主人が聞いた。

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