(2/2) VCは本当にバリューアップに貢献しているのか?

先日の続きで、アントレプレナーで現在はVCのPartnerを務めるCarl Fritjofssonのブログよりお届けいたします。

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Operational Support

このパートでは、VCが投資先に対して行うオペレーション支援や投資先が利用するサービスに対して考えていることについて理解したいと思います。
この点においても、先ほどと同じように投資家と起業家グループ間で違いがみられました。

VCの60%以上が投資先に対し、採用関連や営業/事業開発支援を行っていると回答していましたが、VCのそういったサービスのいずれかを活用していると答えたのは投資先企業の半分以下でした。

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このスタディでは詳細が明らかではなく、この両者の食い違いがそういったVCの提供するサービスのクオリティが低いからなのか、そもそも投資先企業にそういったニーズがないのか、これを理解するには追加調査が必要かもしれません。
ファイナンス、リーガル、アドミンやマーケ/グロースの観点からは両者の回答は近しいものでした。
しかしながら、スタートアップ企業がVCのオペレーション支援に感じている価値は、VCは一般的に自身を過大評価していると言えるでしょう。

VCファームは、自身の提供するバリューアップサービスがどのようなものなのか説明するために多くの時間を使っていることは事実です。
しかし結局のところ、これらを実際に活用しているスタートアップ少ないのです。もしかするとこれは、VCのこういったサービスは競争の激しいVC市場において、他ファームとの違うを説明するためのマーケティング戦術にすぎず、投資先にゲームチェンジとなるような影響を与えるものだとは思っていないのではないでしょうか。

US vs Europe

また地域によっても視点は異なります。
ヨーロッパとUSの創業者は共に、VCを選ぶ際、個人的な関係性やケミストリーを1番目に、スピードを3番目に重要な要素だと回答しています。
ヨーロッパの創業者はUSよりもディール条件がより重要だと考えています。もしかするとこれは、ヨーロッパのスタートアップはアーリーステージであっても自走できており、キャッシュフローがプラスであることが多いことが要因かもしれません。

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私たちの調査の結果、ヨーロッパにおいては、ディール条件に力を入れているVCは、競合VCを出し抜くことができてる可能性があることがわかりました。
USのVCはブランドによってディールにたどり着くことはできていても、創業者へのインセンティブに力を入れるほうが効果的であるということかもしれません。

対照的に、アメリカの創業者はVCの経験、オペレーション支援、ブランドを、ヨーロッパの創業者よりも重要していると回答しています。
アメリカとヨーロッパの創業者間で優先順位に違いがあったにも関わらず、USとヨーロッパのVCは創業者を同じようにとらえていました。
5つ中4つの項目が同じようにTOP4に入っており、個人的な関係性とケミストリー、ブランド、経験が共にTOP3に、ほかは細かな違いしかありませんでした。

Early vs late stage

異なるステージでは、創業者は全く違った優先順位を挙げていました。
アーリーステージの創業者は、スピードと業界内のネットワークが最も重要だと回答しています。
これらにフォーカスすることで投資家は競合より有利にたつことができるかもしれません。

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レイターステージにいくにつれ、スピードやネットワーキングは経験、トラックレコードが要求されるようになり、これは強い交渉力が必要と言い換えることができるかもしれません。
レイターステージのビッグディールに入り込みたければ、トラックレコードを積んでから、というVCのプラクティスをサポートしているようにも見えます。

VC側が考える創業者のプライオリティに地域差はありませんでしたが、レイターステージVCとアーリーステージVCが考える創業者のプライオリティには大きな違いがありました。
レイターステージの投資家は依然として、関係性と相性、パートナーのブランドが創業者にとって最も重要な要素だと考えています。
Pre-seed、Seed、SeriesAの投資家に限ってみてみると、ディール条件、業界内ネットワーク、パートナーの経験が創業者は重要だと考えていると思っています。
条件面の優先順位の高さは、ビジネスサイクルにおけるオプションバリューの考え方に似ています。
しかしながら、運用資産の規模によるVCの回答はあまり差がありませんでした。これは、ファンドの規模が大きくなればオペレーション支援によりコストをかけるられることから考えると意外でした。

VCと創業者の間で優先順位に違いがあることが明らかになりました。
この違いは、両者に誤解があるということがわかっただけでなく、このギャップ解消するよい機会でもあります。

終わりに、VCと投資先の創業者は一般的に、素晴らしい会社を作る、という同じ想いを持っています。
個人的な相性が両者にとって最も重要であり、VCが提供していると思っているバリューアップ支援策は、創業者からはディスカウントされて考えられています。
それとは関係なく、VCとして私たちは創業者をあらゆる方法で支援し、VC業界全体のサポートが発展しくよう尽力していきます。

バリューアップ論

この記事のサーベイ結果は肌感と非常に合致していました。
国内VCのバリューアップ論に関してはこれまでも度々コメントしてきましたが、やはり独立系VCが提供しているバリューアップ策は気休めに過ぎないと思っています。
よく言われる支援方法は3R(つまりHR、PR、IR)ですが、IRはやって当たり前、HRは人材会社を使って軽く支援(誰でもマネできる)、PRもHR同様で大してインパクトがないのです。
(グローバルで見てみると、a16zは格別で本気でバリューアップを提供しようとしている/できていると思います)
海外資本も入ってくる中、国内ファームができる一番のバリューアップ施策はCVCによる事業そのものをブーストする支援だと個人的には思っています。

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