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「手に職」の現在

労働経験の少ない人が言いがちな言葉で、「手に職」というものがあります。
資格合格を目指すカリキュラムの業者(学校・通信教育等)の広告からきていて
実際には、それだけで安定して暮らすことは難しい物がほとんど。
学校で得られる資格によって就く職業は、人員単価が下落傾向にあります。
歯科医が増えすぎたというのですから、
士業さえも50年後に安全とは言えません。
コールセンターなど人に寄り添う職の方が安全とも言われる未来
医師や弁護士も、人に寄り添う働き方の場合は、機械化不可能の部類に入ります。

では、手に職とは何でしょうか。
元々は職人技を極める道から来ています。
伝統工芸でなくとも、板前、大工など現在も珍しくない職業。
しかし実は技術そのものより、
営業先や仕入れ先との付き合い方を学んでいる部分があり、
その先には、後継ぎやのれん分けといった形で経営者になります。
美味しい魚の仕入れ方を知らない寿司屋は伝統的には居ませんが、
回転寿司店には居ます。
シャリを握る機械のことはさておき、
仕入れノウハウを持っているのは会社です。
勿論、会社に調達部門があるので、そこに人が居るのだけれど
彼等が「手に職」と思っているでしょうか。
あまり寿司職人志望者は居なさそうに思います。
しかしイタリアンレストランチェーンへの転職は可能かもしれません。

これが「手に職」の本当のところだと思います。
産業革命以前の「手に職」は複合的な経営知識を指していた。
分業が進んだ現代には、それは会社が保有している。
職人は、あらゆる分野で「日本で数えるほど」しか不用になっていく。

机上の勉強で手に入るスキルは、
実務ではメインと思われた部分は機械化されており、
周辺作業や例外対応だけを人手で行われています。
周辺知識が大事だから、机上の勉強ではなく実務経験をもってしか転職はできない。
そのうえ周辺知識の多くは社内依存で、他社では価値がないかもしれません。
雇用側から見れば、周辺知識のマニュアル化が、最も後の経営効率に影響する資産形成業務となります。

そして理不尽なことに、日本では、「就職」ではなく「就社」が通常であるため
就職時に職を細かくは選択できず、
本人が理想とするような実務経験を得られる人は少なくなっています。
置かれた場所で咲きなさい、を守っていれば、
周辺知識を知るという意味で「手に職」はつくのかもしれません。


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