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OLIVE (映画マガジン)

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映画を観て感じた「!」をつらつらと書いていきます✏️ 映画メディア「OLIVE」(http://olive-movie.net) の公式サイトも是非のぞいてください!
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#movie

人とのつながりが、この世界をまた美しくするー「WAVES」

気づかぬうちに自分を責めていた、そう気づいたことが今までに何度もあります。嫌な思いをしている友達を助けかれなかったとか、正直な気持ちを言えなかったとか。そういった出来事がずっと心のどこかにあって、知らず知らずのうちに、いつまでも自分を苦しめている。それは誰しも経験のあることではないでしょうか。 映画「WAVES」では、自分の未熟さや他人を救えなかった後悔と向き合う過程を、兄タイラーとその妹エイミー2人の視点から描いています。 前編と後編でタイラーからエミリーへ視点がスイッチ

「子どもが教えてくれたこと」 誰もの命が期限付き。それを物心ついた時から理解して、病気と向き合う子どもたち。不幸に見えるかもしれないけれど、彼らは誰よりも幸せのみつけ方が上手だと思いました。上手く行かなかったとしても「どう生きるか」が別れ道なのだと、子どもたちに教わりました。

ひとりの少年を悼む、救いのラブストーリー /「シシリアン・ゴースト・ストーリー」

1993年、シチリア島のパレルモで実際に起こった誘拐事件をもとに製作された「シシリアン・ゴースト・ストーリー」。 当時パレルモに住んでいた2人の監督がメガホンを取り、誘拐された少年・ジュゼッペへの追悼の意が込められた作品となっています。 この痛ましい事件は、監督2人の心に深く残り続けていて、当事者ではなくとも悲しみと無力感は何年経っても拭われなかったそうです。 いなくなってしまったジュゼッペをいま救うことはできませんが、せめて物語の中で彼を救いたいという作り手の思いが作品を

さよならのあとも、関係は続いていくー「ぼくとアールと彼女のさよなら」

映画のトビラvol.1 「ぼくとアールと彼女のさよなら」(Me and Earl and the Dying Girl) ひねくれ男子高校生と、少女の出会い主人公グレッグは、一歩引いて学園生活を眺めている、いわゆるひねくれ者の高校生。学校のすべての国のパスポートを手に入れ、みんなとそれなりに仲良くして卒業したいと願っていました。物語は彼のユニークな視点で語られ、テンポよく進んでいくのですが、彼の前に少女レイチェルが現れることで、生活リズムが変わっていきます。 心の中で成

楽器のように声を操る、レジーナ・スペクターの魅力。ー「映画音楽のすすめ②」

突然ですが、アメリカのシンガーソングライター、レジーナ・スペクターさんを知っていますか?主題歌や挿入歌として度々映画に登場していて、それから彼女の音楽を聴くようになりました。 音楽はクラシックで、ファッションはモダン。 チャーミングかと思えば、次の瞬間には大人びた表情をする。そんな彼女の二面性に魅了されました。今日は彼女の楽曲を、映画と一緒にいくつかご紹介しようと思います。 The Call-「ナルニア国物語 第2章: カスピアン王子の角笛」私が彼女の歌声初めて聴いたのは

迷路に出口はないと、認めるまで ー「悲しみに、こんにちは」

大切な人を失った時、まるで心にぽっかりと穴が空いて、自分の一部がどこかに行ってしまったかのような感覚になります。 悲しみの受け入れ方は誰も教えてくれないし、身体中の水分がなくなるくらい泣いても、悲しみは去ってくれません。 反抗したり、無気力になったりを繰り返して、しばらく時間が経ったあと、やっとの事で受け入れられるものだと思います。 映画「悲しみに、こんにちは」では、母親を病気で失った少女・フリダの物語で、彼女が静かに、ひたむきに、「喪失」と向き合う姿が描かれています。

マイノリティに光をあてる。ー「フランス映画のすすめ VOL.1」

先月みなとみらいで開催された、フランス映画祭。日本へフランス映画を普及するために、1993年から毎年開催されています。オープニングイベントに参加する機会をいただき、行ってまいりました。 今年の映画祭の団長を務めたナタリー・バイさん。 「最強のふたり」でおなじみの監督エリック・トレダノ、オリヴィエ・ナカシュさんも来日しました。 映画祭では、彼らの新作「セラヴィ!」と、グザヴィエ・ルグラン監督の「カストディ」を鑑賞してきました。 **「セラヴィ!」 フランス映画祭2018

永遠なんてないことを、夏が教えてくれた。ー「夏にみたい映画BEST5」

こんにちは!7月になり夏本番の気候になってきましたね。夏日にちょっと疲れたら、ゆっくり家で映画を楽しむのもオススメです。 今日は、夏にぜひ観てもらいたい映画を5本、紹介します。 ①グッバイサマー** (2016: Microbe et Gasoil )**ログハウスの車で、たった1人の友達と旅にでる。 ミシェル・ゴンドリー監督の最新作。内容がメルヘンでついていくのが難しい作品が多いものの、これは違いました。夢とリアルがしっかり融合していて、最後まで楽しむことができました

コーヒーと、タバコと、微笑みを。 ー「LUCKY」

英語とスペイン語が飛び交う、アメリカ南西部の街で過ごすラッキー。90歳。毎朝起きたら欠かさないのが、ヨガとエクササイズ。行きつけのカフェでコーヒーを飲みながらクロスワードを解き、ドラックストアでタバコを買う。 家に帰ると、クロスワードの続きをやりながらクイズ番組を楽しむ。特に代わり映えのしない、ラッキーの毎日が淡々と描かれます。頑固で厄介なおじいさんですが、街のみんなから愛される人気者です。 ラッキーは多くを語りません。説明的なセリフはなく、彼と彼が出会った人々との会

行き場のない怒りと 、赦しの物語 ー「スリービルボード」

怒りの行く先はどこなのか。3つの看板をめぐった人間ドラマ 舞台は、アメリカ中西部・ミズーリ州。 娘を何者かに殺されてしまった母親が、犯人をみつけるために世間と果敢に闘う姿を描いた物語です。 娘を失ったことから、怒り、悲しみ、憂い、後悔… さまざまな感情が、母・ミルドレッドの中で渦巻きます。 後ろに見える、真っ赤な看板 (billbord)。ミルドレッドは、自腹でこの広告を掲出します。 どうして? ウィロビー署長。( HOW COME, CHIEF WILLOUGHBY?

小さな幸せを、幸せと感じられること。ー 「万引き家族」

こんにちは! 先月、カンヌ国際映画祭でパルムドールを受賞した是枝監督の「万引き家族」 。やっと時間をつくって観ることができました。 2004年に公開された同監督作品の「誰も知らない」でもそうでしたが、今作も同様で、希望を残すような物語ではなく、ドキュメンタリータッチで淡々と描かれていきます。なので、鑑賞後はいろんなことが頭の中をグルグルと回って消化するのに時間がかかりました。 一人一人が複雑なバックグラウンドを持っているため、身元が明確にはわからなかったりしたので、