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OLIVE (映画マガジン)

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映画を観て感じた「!」をつらつらと書いていきます✏️ 映画メディア「OLIVE」(http://olive-movie.net) の公式サイトも是非のぞいてください!
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#映画感想

人とのつながりが、この世界をまた美しくするー「WAVES」

気づかぬうちに自分を責めていた、そう気づいたことが今までに何度もあります。嫌な思いをしている友達を助けかれなかったとか、正直な気持ちを言えなかったとか。そういった出来事がずっと心のどこかにあって、知らず知らずのうちに、いつまでも自分を苦しめている。それは誰しも経験のあることではないでしょうか。 映画「WAVES」では、自分の未熟さや他人を救えなかった後悔と向き合う過程を、兄タイラーとその妹エイミー2人の視点から描いています。 前編と後編でタイラーからエミリーへ視点がスイッチ

さよならのあとも、関係は続いていくー「ぼくとアールと彼女のさよなら」

映画のトビラvol.1 「ぼくとアールと彼女のさよなら」(Me and Earl and the Dying Girl) ひねくれ男子高校生と、少女の出会い主人公グレッグは、一歩引いて学園生活を眺めている、いわゆるひねくれ者の高校生。学校のすべての国のパスポートを手に入れ、みんなとそれなりに仲良くして卒業したいと願っていました。物語は彼のユニークな視点で語られ、テンポよく進んでいくのですが、彼の前に少女レイチェルが現れることで、生活リズムが変わっていきます。 心の中で成

10代の映画は、大人のための映画。ー「もう一度観たいティーン映画BEST5」

恥ずかしいほど周りが見えていなくて、自分勝手で、なんだってできると思っていた10代の頃。 思い返すと、10代ってみんなモンスターだったなと、思います。 ティーンを描いた映画には、すごく大きなメッセージがあるわけではないことが多いですが、たまに映画を通して10代の頃を思い出すことは必要だと思います。あの頃炸裂していた自分って、いまだに変えられない自分の根幹だったりするからです。 今日は、ティーンの少年少女が思い切りティーンしている映画を5つ紹介したいと思います。 音楽で世界

迷路に出口はないと、認めるまで ー「悲しみに、こんにちは」

大切な人を失った時、まるで心にぽっかりと穴が空いて、自分の一部がどこかに行ってしまったかのような感覚になります。 悲しみの受け入れ方は誰も教えてくれないし、身体中の水分がなくなるくらい泣いても、悲しみは去ってくれません。 反抗したり、無気力になったりを繰り返して、しばらく時間が経ったあと、やっとの事で受け入れられるものだと思います。 映画「悲しみに、こんにちは」では、母親を病気で失った少女・フリダの物語で、彼女が静かに、ひたむきに、「喪失」と向き合う姿が描かれています。

傷つきながら、輝いていた。ー 「君の名前で僕を呼んで」

このタイトルを初めて目にした時、すごく好きな人がいた時のことを思い出しました。「その人の一部になりたい」と思うことが、「好き」の最上級だと思っていたし、これはその心の叫びそのものだと思ったからです。 主人公エリオは、家族と北イタリア避暑地で17歳の夏を過ごしていました。 そこに、エリオの父の教え子がやってきます。それが、オリバーでした。彼はアメリカ人で、「Later (あとでね)」が口癖。はじめは、気に入らないと思いながらも、知らず知らずのうちにオリヴァーに惹きよせられて

声というメロディーがなくても。 ー 「エール!」

こんにちは。 先週みなとみらいで開催していたフランス映画祭、みなさんは参加されましたか? わたしは、オープニング作品の「セラヴィ!」と最終日の「CUSTODY」を鑑賞しました。 そちらの感想はまた後日書こうと思っているのですが、今日は私がフランス映画にハマったきっかけになった作品を紹介しようと思います。 フランスのとある家族を描いた、あたたかい物語「エール!( La famille Bélier )」 この家族は、仲良しで、よくいる普通の家族にみえるのですが、実はみん

コーヒーと、タバコと、微笑みを。 ー「LUCKY」

英語とスペイン語が飛び交う、アメリカ南西部の街で過ごすラッキー。90歳。毎朝起きたら欠かさないのが、ヨガとエクササイズ。行きつけのカフェでコーヒーを飲みながらクロスワードを解き、ドラックストアでタバコを買う。 家に帰ると、クロスワードの続きをやりながらクイズ番組を楽しむ。特に代わり映えのしない、ラッキーの毎日が淡々と描かれます。頑固で厄介なおじいさんですが、街のみんなから愛される人気者です。 ラッキーは多くを語りません。説明的なセリフはなく、彼と彼が出会った人々との会

行き場のない怒りと 、赦しの物語 ー「スリービルボード」

怒りの行く先はどこなのか。3つの看板をめぐった人間ドラマ 舞台は、アメリカ中西部・ミズーリ州。 娘を何者かに殺されてしまった母親が、犯人をみつけるために世間と果敢に闘う姿を描いた物語です。 娘を失ったことから、怒り、悲しみ、憂い、後悔… さまざまな感情が、母・ミルドレッドの中で渦巻きます。 後ろに見える、真っ赤な看板 (billbord)。ミルドレッドは、自腹でこの広告を掲出します。 どうして? ウィロビー署長。( HOW COME, CHIEF WILLOUGHBY?

小さな幸せを、幸せと感じられること。ー 「万引き家族」

こんにちは! 先月、カンヌ国際映画祭でパルムドールを受賞した是枝監督の「万引き家族」 。やっと時間をつくって観ることができました。 2004年に公開された同監督作品の「誰も知らない」でもそうでしたが、今作も同様で、希望を残すような物語ではなく、ドキュメンタリータッチで淡々と描かれていきます。なので、鑑賞後はいろんなことが頭の中をグルグルと回って消化するのに時間がかかりました。 一人一人が複雑なバックグラウンドを持っているため、身元が明確にはわからなかったりしたので、