不思議なお話集【ミロワール線形非対称】 1⃣亜希菜の記録
1⃣今朝私、亜希菜はまだ夜が明けきらないうちに起床した。東雲の頃街は辺りは薄暗い。星もきっと西の空にはまだあるだろう。暗がりで読む時計が伝える時刻は七つ寅、つまり午前4時、とおに10代はすぎ、無邪気さや未来への過剰なほどの期待も現実世界との折衷を果たしているものの、明け方に目が覚めるのはうん十年は先のはずだ。話題ときたらもっぱら健康ばなし、平安の頃ならばご来光が訪れるのを読経しながら熱心に願うような歳の人のように、こんな明け方に起きるようになったのは昨日今日のことではなく、実