「〜っぽい」演奏を考えてみる

先日、ARTE TOKYOの演奏会に行ってきました。
https://www.arte-mandolin.com/concert/arte-tokyo

どの曲も良い演奏でしたが、今日は特に最後のベト7を聴いて思ったことを書きたいと思います。
全体の印象は軽やかな感じ。ベト7のリズミカルな感じが良く引き出されていたなと感じました。

あの速いテンポで軽やかに聴こえる演奏ができるのはすごい。ただ速いだけでなく、表現力も非常に豊かでした。個人的にツボだったのは3楽章。音色にすごい拘ってるんだろうなぁ、と聴いてて感じました。マンドリンは基本ハイポジsul.tastoで弾いてた(と思う)が良き。
この楽章のここが良かった、とつらつら書いてもいいのですが、細かくてキリがないのでもう少し大きな視点で偉そうに語ってみます。


聴き終わって感じたことは
「あぁーARTEっぽいなー」
でした。
ARTEっぽいは私の勝手な感覚でしかないですが、この演奏をARTEっぽくたらしめているのは何なのかが気になりました。

なので演奏を
① 演奏者の技術
② オケ編成
③ 編曲
④ 指揮者
の4つに分けて振り返ってみたいと思います。

① 演奏者の技術

私が偉そうにいうことではないですが、非常に個々人の技術は素晴らしいです。
あのテンポであの爆音を聴くと、ARTEっぽいなあ、すごいなあと思います。

② オケ編成

一番印象的なのはドラが多いこと。見間違えでなければ、1プルに4人ドラがいたような。。。ものすごい目立ってました。
管パートがフルートだけなのも特徴的だと思います。クラリネットが入っている編成と比べると、ドラ・チェロ・ギターの音が埋もれずにはっきり聞こえてきます。(いや、もちろんクラリネットが入るとそれはそれで良さがあるのですが。)

たしかに、ARTEの演奏は中低音が響いてる印象が前からありましたが、、、なるほど。そういうことか。

③ 編曲

ベト7は遠藤秀安さん編曲。この演奏会のためにARTE用に書き下ろしてるのかな。ARTEの編成にあった良い編曲だと感じました。
特に印象的だったのはドラに管のロングトーンをかなり割り当てていること。
ARTEのようなドラが分厚い団体にぴったりの編曲だと思いました。編曲者が団体に合わせて編曲する、ってすごい強みだと思います。

④ 指揮者

指揮はいつも通り井上泰信さん。そこまで知ってるわけではないですが、あの軽やかさとマンドリン属の表現力は井上さんの指揮から引き出される部分が大きいのかなと。音楽監督もされてるので、ARTEっぽさ、というのはこの人の音楽そのものなのかな、とも思います。
テンポ設定や指揮のダイナミックさも特徴的ですが、何より音色への拘りがすごいなと思います。マンドリン属がTuttiでトレモロした時の和音の響き、あれは井上さん指揮のARTEならでは。


んーーー、ということは

ドラの布陣が分厚い。そしてその構成が引き立つような編曲を使っている。そこに指揮者の表現が加わる。そしてそれに応える演奏技術の高い奏者が集まっている。
その結果、特有の響きを生み出されてる。

それが私の感じてる「ARTEっぽい」なんですかね。

「ARTEっぽい」演奏をこうやって要素に分解してみると、団体の特徴が見えてきて面白いですね。(勝手にすみません)

「この団体が弾いたら、こんな演奏になるんだろうなあ」
と思わせられるって、すごいことですよね。
でもオーケストラの価値ってそういうところにあると思うのです。初演でない限り、大抵の曲はすでにどこかで弾かれ尽くされているのですから。

もっと個性的な団体が増えて、「〜っぽいベト7」を色んなところで聴けるようになればいいな、と思います。
もちろん自分が出演する演奏会も、そう思ってもらえるように頑張りたいです。

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