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宇野昌磨はもっとゲームするべきだ⁉ 2つの視点から妄想しよう!(前編)

昌磨のゲーム番組が配信されました!

スマブラ界隈に多大な影響力を持つメディアSmashlogさんからの配信とあってか、当日は2万4千人もの同時接続者数にもなる大盛況ぶりとなったとか。

そこで昌磨はスマブラ「ガチ」勢ぶりをいかんなく発揮し、スマブラ界隈からの好感度もうなぎのぼり。いやぁよかったよかった。

と、世間のメジャーな反応はヤフーニュースにでも任せるとして

今回昌磨のゲームにまつわるあれこれについて、個人的な妄想をまとめておきたい。

今回の「ケプトの定時退社」に先駆けて昌磨は友人のゲームチャンネルからゲーム実況動画に本名で参加。ファンを大いにざわつかせてくれた。

宇野マダムの中にはお上品に昌磨のスケートが好きであると強調される方、一刻も早いスイス入りを望まれる方なども見受けられたが、

不良宇野マダム()である私はこの公式的ゲーム配信を飛び上がって喜んでおりました。

なぜならゲーム、とりわけスマブラやクラロワのようなゲームをして配信することが、スケート界と昌磨本人にとって、物凄いプラス効果をもたらすと考えていたからです。

スケート界にとって、という視点と

スケーター宇野昌磨個人にとってという視点から

それぞれゲーム、それもe-sportsと呼ばれるジャンルとの接触がどう影響するのか、私の妄想をまとめてみます。

まずはスケート界にとって、という視点から。


スケート界の苦境の原因

並みいる偉大な先輩方のおかげで日本フィギュアスケートは空前の大ブームのただなかにあり、大会中継はゴールデンで流れ、オフシーズンには各地でさまざまにアイスショーが開かれている。

しかしその一方で福岡、東京でアイスリンクの閉鎖が決まり、各地でのスケートリンク経営の苦しさも伺える状況だ。

つまりフィギュアスケート界はアイスショーの顧客獲得には成功したが、アイスリンクの顧客獲得には失敗し続けているって状況なわけだ。

え?競技を始める子は年々増えているって?

その通り。フィギュアスケートの競技人口推移は以下に非常に詳しくまとめられている。

日本のフィギュアスケート競技人口               http://flip-flop.world.coocan.jp/genneki.html

競技人口は増えているのにリンクは減少しているということはつまり

フィギュアスケート競技人口はリンク経営にそれほど寄与していないということではないだろうか。

実際、リンクの貸し切りが1時間当たり2万5000円だとして、朝9時から夜9時まで12時間営業させた場合、全部貸し切りだとしたら一日の売り上げは30万円。

これを例えば毎月25日営業、通年リンクなら年間9,000万円の売り上げです。

一方維持費については諸説ありますが,氷の維持だけで3千万円,管理スタッフや照明などを含めると1億ぐらいはかかりそう。

建設費が高額なことを考えると、営業日や時間を増やしたとしても、とても貸し切り営業だけではペイできないし、競技者の殆どが学校に通う年齢であることを考えると、営業時間全てが貸し切りで埋まるとも思えない。

最もアイスリンクにはリンク使用料の他に貸靴の売り上げだったり、広告費だったりもあるんだが、それだってリンクに人が集まらないことには売り上げは上がらないだろう。

アイスリンクに必要な一般客とは?

さて以上のような状況から、民間のアイスリンクはフィギュアスケートの練習場としてだけではやっていけない。特に土地代と電気代の高い日本では。

ということは一般のレジャー客、スマブラ界で言うところのエンジョイ勢をもっと獲得しないとスケートリンクに未来はない。

ところで一般のスケートレジャー客ってどんな客ですかね。

例えばスキーだったら?一般の人はゲレンデにやって来て持参するなり借りるなりした道具で普通に斜面を滑り降りるだけだ。別にジャンプ台で回転技決めたりなんかしないし、大半は出来るようになりたいとも思っていない。楽しく滑って山頂のロッジでうまいラーメンかカレーを食べるのが主な目的である。

スケートリンクに今必要な客層は上記のように、ただ遊びに来るタイプの客層だ。

こういうエンジョイ勢としてどのスポーツでもターゲットになるのが過去実際にその競技をやったことがある人だ。

だが、日本のスケート史を鑑みるに、「過去競技者だった人」で、現在スケートリンクに遊びに行く余力と体力があるという人はそもそも絶対数が少ない。

レジャー白書2017

しかしアイスリンクの苦境は待った無しだ。昨今増えたスケートキッズたちが引退してスケートを離れてその後再びリンクに戻って来てくれるようになる年齢に達するまで待つことはできない。

つまり日本スケート界は、可及的速やかにほぼスケートをしたことがない人々をリンクに呼び込む必要があるということだ。

ターゲットとするべき主な客層はどこか

さて今までのところ日本フィギュアスケート界は競技者を目指せるキッズたちの勧誘に関してはそれなりの成功を収めている。

しかし、競技外でスケートをエンジョイする客層の獲得には失敗している。

なぜか?それは、ターゲットとなる客層にリーチできていないためだと、私は考えている。

現在フィギュアスケート界の主だった顧客層は圧倒的に女性、それも40歳以上の女性に偏っている。

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しかし、レジャーとして「実行する」スポーツに積極的なのは10~30代、特に男性なのである。(健康維持や美容目的の運動はこの限りではない)

で、今までのところフィギュアスケートは10~30代男性にとって「母親が好き」なスポーツであり、知名度はあっても彼ら大多数の関心を得ていないスポーツとなっている。

それはなんでかっていうと、フィギュアスケートがとってきたメディア戦略に原因の一部があるのではないかと私は思っていてですね。

フィギュアスケートの競技シーンは主にテレビ(地上波および衛星放送)で取り上げられてきたが、若年男性というのは、まさにテレビを見ないと言われる年代そのものだ。

三年前のデータで既にこんな↓感じである。去年ついにテレビ広告とネット広告の市場規模が逆転したと言われているので今はさらにだろう。

視聴時間

歳若い彼らにとって、動画冒頭に流れる2秒の広告だってだるいというのに、ただでさえ見ないテレビで2分30秒にもわたって興味ない動画をみる機会なんてほぼないと思っていい。たとえ同じ部屋にいたとしても母親がテレビでフィギュアスケートを見る間、子供はスマホでYoutubeを見ているのだ。

特に男性の場合は、母親の趣味を共有することが女性と比べて少ない分、さらにスケートに関心を持つ機会は少ないだろう。

そんなわけで日本フィギュアスケート界はアイスリンクエンジョイ勢として期待される主なターゲット層に、なかなかリーチできなかった。

しかし、逆にこういった若年層に熱く支持されるジャンルがある。

それが「e-sports」のジャンルだ。

昌磨がフィギュアスケーター宇野昌磨として、ゲーム配信番組に出演するということは、日本フィギュアスケート界がe-sportsのファン層に接触する機会を得るということだ。

とりわけ今回昌磨が出演したケプトの定時退社で扱っている「スマブラ」は30代以下の男性ユーザーが多数を占める人気タイトルだ。

つまりスケート界は昌磨の存在によって今まで全くリーチできなかった(しかし喉から手が出るほど欲しかった)客層に対してチャンネルを開くことができるのだ。

ブームを文化にするために必要な顧客とは

もちろんただチャンネルが開いただけでは、フィギュアスケート界に男性客が急増することもないし、リンクにエンジョイ客が押し寄せるわけでもない。

そうなるまでにはさらなる偶然が必要になる。

例えばすっかり「俺たちの宇野昌磨」となったスケーターの競技シーンがテレビでバンバン流れる、とか。

スマブラのBIG大会で観客席の隣に偶然仮設リンクが設置される、とか。

スケートリンクでアイスクライマー(氷属性のキャラ)の使い手を集めたスマブラオフ会が開催される、とか。

特にスマブラなど対戦型のジャンルはどうしても一人ではできないジャンルだから、オフ会も盛んだ。

頂上にうまいカレーが用意されているゲレンデと違って、今のところスケートはリンクに行くモチベーションがスケートする以外にほぼない。

もしスケートにプラスして「仲間とゲームをする」という動機付けが叶うなら、もっとリンクに足を運ぶ人が増えるかもしれない。

そんな色々な偶然を重ねて行ければ、フィギュアスケートは競技という少数新鋭部隊以外にも、スケートの裾野を広げていけるだろう。

そしてこの裾野の広さこそが、スケートをブームから文化に変える重要なファクターになると思う。

BLM運動のニュースで、夫を失った女性が「彼はもう子供をプールに連れていくこともスケートに連れていくこともない」っていってた、と思うんだけど(うろ覚え)

ニュースの趣旨はともかく、このご婦人にはプールに行くのとスケート場に滑りに行くのが同列に並ぶくらい日常的なレジャーとして定着してるってことに、私は衝撃を受けたんですわ。

フィギュアスケート人気は日本の方が高いのに、スケートをする「文化」はアメリカの方が根付いているんだと、私にはそう思えた。

そして、そういう「文化」を支えるのは必ずしも元競技者やプロトコルをガツガツ読み込むスケオタだけではなく、非常に気軽にスケートを楽しむ数多くの人たちなんじゃないかとも思うんだ。

キャッチボールやバドミントンを楽しむのと同じくらい気軽にスケートを楽しむ文化が日本に定着したら、民間リンクも安心して経営していけることだろう。

e-Sports界隈からの欲求

さて今回昌磨がゲーム配信番組に出演することで、スケート界が得られるかもしれない利益について書いてきたが、もちろん利益を得るのはスケート界だけではない。

相手方にも利益を提供できないならWinWinで末永いお付き合いは不可能だ。

今回、スマブラ界隈は昌磨を大変丁重にもてなしてくれたけど、それにはもちろん、昌磨に、というかスポーツ界に対して期待することがあるからだ。

それを端的にまとめてくれたライターさんがいたので、以下に引用する。

 とにかく、eスポーツ選手にとってスポーツ選手と比べられることは厄介なことなんです。だって本来、同種のものとして並べて考えられるようなものではないから。共通するところは多々あれど、「野球選手」と「棋士」と「F-1レーサー」を全く同じ括りに入れて比べようとはしませんよね?「eスポーツ選手」だって、粒度はそれぐらいのものなんです。「スポーツ(運動競技)の中のeスポーツ」ではない。
 でも、どこか一方でeスポーツがすごいだのなんのともてはやされれば、もう一方ではあんなもんスポーツじゃねえだのなんのと諍いが起こる。競技シーンの中心にいる人たちからすれば、そんな期待も論争もまるで興味はなくて、ただこのゲームで一番になりたいだけ。勝手な外野にギャーギャー騒がれて、辟易してるんです。そんな時に、スポーツの畑の人、それも世界で一線級の活躍をしている人から、「向こうにもこんな熱い競争の世界があるらしいぞ」と世間に伝えてくれる、その頼もしさったらもうこの上ないと思うんです。「ゲームはスポーツか否か論争」みたいなのに加勢してもらう必要なんて全くなくて、世間のスポーツファンたちにむけてただ一言、「このゲーム、すげえ面白いぜ」と言ってくれるだけでいいんです。

なぜe-sportsのファンはこんな小さなことを切実に願わなければならないのだろうか。

それは、e-sports、というか「ゲーム」というものに呪いがかけられているからだ。

その呪いとはつまり「ゲーム=害悪」という刷り込み、言ってしまえば偏見である。

こういった偏見はアニメや漫画にも付きまとうが、とりわけゲームにはそれが激しい。

昌磨がオジゲーミングの動画に登場したときのザワツキも同じ呪いに端を発する。

「ゲームなんかしてないで競技に集中しろ」というのは、昌磨に限らずe-sportsも行うスポーツ選手全般に飛ばされるヤジだ。

しかしゲームすることと、パフォーマンスの良し悪しに因果関係は見られないし、なんなら相関関係も見られない。

某香川県の条例でも散々指摘されたことであるが、「ゲーム=悪」というのにはまったくもって科学的根拠がない。

私が小学生の時にアニメ・ワンピースの視聴を暴力的だからと禁止したのにサスペンスドラマの殺人シーンは問題なく視聴させた母の価値観と同じ、全くのくだらない偏見だ。

しかし、ゲームに多かれ少なかれ抵抗がある人が、偏見に満ちた最悪に性格の悪い人かというと、そうではない。

人間の生存本能は知らないもの、馴染みのないものに対しては抵抗感を持つようにできている。

この生存本能に従って何世代にもわたり呪いをかけられてきた人が、いきなり「ゲーム=害悪」の価値観を転換させるのは無理な話だ。

e-sports界隈の人の望みとは昌磨を通して「ゲーム」というものを知ってもらうこと。

知ることによって少しずつこの呪いを薄めることだろう。

実際ケプトさんの誠実さを見て、ゲーマーに対する価値観がちょっと変わったという人もいるんじゃないかな。

そういうふうに偏見を取り除いていくことは、e-sportsの発展を考えるうえでとても重要なことだ。

昌磨のとりわけ熱心なファンの中には、昌磨がこういった面倒ごとに足を踏み入れることを快く思わない人もいるかもしれない。

限りある「宇野昌磨」という資源を、フィギュアスケート以外のことに消費するなんて、と。フィギュアスケートの部分だけ露出させるのではだめなのか、と。

でも、私たちは21世紀の令和を生きているんだ。

なにかを得るために、何かを犠牲にする時代は、もう終わりにしなければならない。

e-sports界とスポーツ界は、顧客や才能ある若者を奪い合うライバルではなく

もっとお互いに利益を与え合える存在になれるんだって私は信じている。

そして一人の宇野昌磨ファンとして、昌磨がどちらの業界にとってもプラスになるように世界を変えてくれる未来を妄想して楽しむのだ。



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