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博物館ではなく”美術館” 相田みつを美術館館長・相田一人さんが語る。想いとこだわり

ニッポン放送で40年近くラジオに携わってきた上柳昌彦アナウンサーが、東京・有楽町に関わる様々な人をゲストに迎え、有楽町の魅力やそこで生きる人の思いを聞くポッドキャスト番組「有楽町ひとさんぽ」。

今回のゲストは、東京国際フォーラム地下一階にあります「相田みつを美術館」の館長を務めていらっしゃる相田一人さん。お父様、相田みつをさんの作品に秘められたメッセージとその背景についてお伺いします。

有楽町の中にある、こだわりの憩い空間

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有楽町の中でも人気スポットである「相田みつを美術館」あらためて良い空間ですよね

ありがとうございます。うちの美術館は他の美術館とは作りが違って、展示室以外には父の作品はほとんど置いてなくて、広い休憩スペースを取っているんです。作品を見た後にゆっくりくつろいでいただく。それも含めて美術館と考えて設計しております。

コロナ禍などでストレスを感じる方に、ぜひ行っていただきたいですね。

そうですね。来館者の方にお話伺うと「肩の力が抜けてほっとしました」と言っていただけます。あとはいろんな悩みを抱えてくる方も多いので、そういう方も心が落ちつくと言ってくださいますね。
そして当館の壁は珪藻土で全面覆われています。珪藻土は消臭効果がすごいみたいで、開館当初も新築の匂いが一切しなくて、昔からあるような自然な香りしかしなかったですね。それも落ち着く理由の一つかもしれません。

コロナの影響と求められた相田みつをさんの言葉

新型コロナウィルスの影響で休館されたそうですね。

東京国際フォーラム自体が全面休館になってしまいまして、東京国際フォーラムは東京都のものでありますので都の意向で閉まってしまうのは仕方ないですね。当館は来年で開館25年で、東日本大震災の翌日しか休まなかったんですが、コロナの影響は止むを得ず、5月と6月の2ヶ月は休館いたしました。

このコロナの影響を受けて「相田みつをさんならどんな言葉を紡ぎ出しただろう」という声が相当聞かれたみたいですね

そうですね。特に休館中はテレビやラジオの取材が非常に多かったんですけども、皆さん共通して「みつをさんがコロナの状況を見たら、どんな作品を書いたのでしょうか」と聞かれますね。
もちろん父は亡くなっているので分かりませんが、残された作品の中から選ぶのであれば『道』という父の代表作がありまして、今の時代にぴったりなのかなと思いますね。
東日本大震災の時もこの『道』という作品が話題になりました。

相田みつをさんの作品は色んな悩みに対して「一回受け入れてみよう」というメッセージを感じますね

それは父の考え方の根底にあると思います。今起きている状況、それを一回受け入れてみてからじゃないと本格的な行動ってできないんじゃないかと思いますね。
父の作品で「途中にいる限り宙ぶらりん、底まで落ちて足が地につけば本当に落ち着く」というものがあるんですが、コロナに関して色んな噂も飛び交っていますし、今後どうなっていくのかもわからない状況です。
私たちは今大変な状況にいるんだというところに足を乗っけるというか、腰を据えるというか、そこから発想していくしかないんじゃないかなと思いますね。

相田みつを作品を支えた、奥様の存在

お母様が亡くなられたばかりということですが、お母様はどのような方だったのですか。

母は先日92歳で亡くなりまして、年相応に目が弱ったり耳が聴こえなくなったりはしたんですが、悪口はちゃんと聞こえるという母でした(笑)
母は父のデータベースのような存在で、母の記憶力がなかったら今の美術館は成り立たなかったなと思います。

作品にお母様はかなり関わっていたみたいですね。

父は一晩で物凄い数の作品を書いて、同じ言葉を2点ずつ並べてたのですが、その並べる作業を母がやっておりましたね。
父は立ったり座ったりして偉そうに「右!」とか「左!」とか言うんですよ。それで右の作品を外したら、違う作品を母が並べて、二者択一をずっと続けていくことでですね。最後は2枚だけ残るんですよね。父も最後の二枚を選ぶとなった時は意外と母に「どっちがいい?」なんて聞くらしいんですよね。
母も歯に衣着せぬ性格ですので「こっちはキザっぽくてダメだ」とか「この線は浅い」とか痛いとこつくらしいんですよ(笑)
でも最終的には母の意見に従ったらしいんですよね。なので母が一番父の作品のことをわかっていたと思うんですよね。

お母様はあまり表には出てこられなかったみたいですね。

父が亡くなってから段々作品が知られるようになって、取材とか増えてきたんですが、母は一切出なかったんです。その理由ははっきりしていて「相田みつをの女房って言うと、世間が興味持って見るだろう。その時にこんな田舎のばあちゃんが出て行ったんじゃイメージダウンになってしまう」と話しておりました。
それが去年どういう風の吹き回しかテレビ番組で少し声だけの出演をしました。今となってはその音声が残ってよかったなと思います。

博物館ではなく「美術館」のワケ

博物館ではなくて「美術館」にしている理由はあるんですか。

そうですね。ネーミングもずいぶん考えました。父が60歳の時に出した『人間だもの』という作品で多くの人に知られるようになったので「相田みつを人間館」はどうだろうとか色んなご意見あったんですが、私としては「美術館」というのにこだわりました。
理由は父の作品の中に「美しいものを美しいと思えるあなたの心が美しい」という短い作品があって、そういう作品を残した人間の作品が展示されている空間ですから、「美術館」以外には考えられないなと私の中では決まってました。

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全編はポッドキャスト「有楽町ひとさんぽ」で公開中。相田みつを美術館 館長・相田一人さんが出演。「有楽町ひとさんぽ」はポッドキャストで聴くことができます。全編無料です。​

「有楽町ひとさんぽ」は、有楽町の街の新しいテーマソングを公募するプロジェクト「有楽町うたつくり計画」と連動した超ローカルポッドキャスト番組です。有楽町で働く方、生きる方をゲストに迎え、街の魅力や歴史、展望などを伺っていきます。

<有楽町ひとさんぽ>
毎週月曜日、最新エピソード配信予定。
「有楽町うたつくり計画」公式サイトほかポッドキャストで聴取できます。

<有楽町うたつくり計画>
有楽町の街の新しいテーマソングを創り上げる楽曲募集企画。
一次審査通過者は、音楽プロデューサー・本間昭光さんとのワークショップを通して、楽曲をブラッシュアップし、有楽町の”まちうた”をつくりあげていきます。詳細は公式サイトをご覧ください。
公式サイト:https://www.1242.com/project/yurakucho

「相田みつを美術館」information
住所:東京都千代田区丸の内3-5-1 東京国際フォーラム 地下1階
電話:03ー6212ー3200



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