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Unpacking:物語に言葉はいらない

Steamサマーセールいかがだったでしょうか。自分は今回4本のゲームを購入しました。その1つがこの「Unpacking」。その名の通り、ただひたすら荷ほどきをするゲームです。

発売してからインディゲー界隈では何かと話題のこのゲームですが、プレイしたところかなり独特でした。今回はその感想記事になります。

引っ越しは人生

Unpackingのゲームシステムはかなり独特です。部屋にはダンボール箱がいくつか置いてあり、その中から物を取り出して部屋に配置していくだけです。ステージは何種類かあり、最初は主人公が1人部屋を手に入れたとき、次は大学で1人暮らしを始めたとき、となっていて主人公の成長を見守るような構成になっています。

そんな中で荷ほどきをしていると、前の部屋から持ってきた物、そして持ってこなかった物があることに気が付くんですよね。すごく大切な物、自分のアイデンティティに関わるような物は持っていって、それ以外は置いていく。主人公の人となりや人生が荷ほどきを通じてわかるゲームデザインが素敵です。

紆余曲折のあるストーリー

途中のステージで主人公はルームシェアを始めます。リビングに作りかけのコスプレ衣装、ダイニングにアニメのフィギュアがあるあたり主人公とは相性が良さそうです。主人公がイラストやサブカル好きなことは最初の部屋でわかってますからね。

しかし、シェア相手の物を動かすことはできません。それ故に主人公の物を配置するのに手間取ります。うーん、元々営みがあるところに新たに入っていくのは難しいのでしょうか。部屋は確かに広くなったのに1人部屋のときよりも不自由さを感じました。

次の時代ではついに主人公に彼氏が。彼氏の部屋へ同棲をするための荷ほどきになります。彼氏は音楽が趣味のようで、リビングにはでかいコンポやギターやバンドのポスターが貼ってあります。主人公も音楽が好きなきらいがあるので、それで仲良くなったんでしょうか。

ここでは彼氏の物を動かすことができます。なので、お互いに信頼関係があるように感じました。が、どう配置しても主人公が大学時代にとったであろう賞状を飾ることができません。しょうがないのでベッドの下に置くことに。うーん不穏だ。ルームシェアと合わせて共同生活の難しさを感じました。すごいリアリティです。

予想は的中し、次のステージでは彼氏と別れたことがわかります。そして一度実家に戻った後、主人公はついに自分だけの部屋を手に入れます。このステージの部屋は殺風景。物はなくそこそこ広いので自由に配置することができます。自分も初めて一人暮らしをしたときのことを少し思い出しました。あと、一回実家に戻ったことで「大切だったけど置いてきてしまった物」をもう一度持っていくことができたのもよかったです。後になってから実家から持ってこればよかったと思う物って案外いっぱいありますからね。

テキストを使わない表現の極地

ここまでストーリーの感想を書いていきました。が、このゲームの核はストーリーの内容ではなくその表現方法。言葉をほとんど使っていないところだと思います。テキストはステージクリアの主人公の一言コメントだけです。部屋の様子、ダンボールの中身、どこに配置するのか、この3点の情報だけで奥行きのあるストーリーを表現しているのはすごい。プレイヤーの観察力にすべてを任せているゲームデザインは中々攻めています。

思えば、最近のゲームは説明しすぎなきらいがあります。1~10まで説明することは一見ユーザーフレンドリーに見えますが、裏を返せばプレイヤーの観察力や想像力を軽視していることでもあります。まあ、プレイヤーはプレイヤーで1~10まで説明してほしい人が増えているのも事実ですが。あえて説明しないことの大切さをもう少し考えてもいいんじゃないかなと思います。そんな昨今の説明しすぎな流れに結果として一石を投じているゲームです。

話は逸れましたが、言葉に依らない表現を突き詰めたUnpackingはそれだけでプレイする価値があるゲームです。

一方、価格に対してボリュームがかなり少ないです。実績全解除まで4時間ほどで2000円は低価格の良ゲーが跳梁跋扈する昨今ではちょっとウィークポイント。積極的にセールを狙っていくゲームだと思います。あと、ポリティカルな内容を若干、本当に若干含むのでストーリーは人によってはNot for meかも。

しかし何回も書きますが、荷ほどきだけでストーリーを表現するというチルなゲームデザインを味わうためにプレイする価値は大いにあります。気になった方はぜひプレイしてみてください。価格以外では後悔しないと思いますよ。では、また。

ゲーム代やお供のお菓子やドリンク代にかわります