金八になりたい。でもなれない。
あなたは、「3年B組金八先生」をご存知だろうか。まあ、ご存知だろう。では、そんなきんぱっつぁんがPS2のゲームになっていることはご存知だろうか。
2004年に発売されたこのゲームは「病気になった金八の代わりに教壇に立ち、生徒たちが引き起こす問題を解決していく。きちんと問題を解決できた生徒のみが、卒業式で『仰げば尊し』を歌ってくれる」という魅力的かつ斬新すぎる設定をひっさげてゲーム界に殴り込み、その出来のよさでもって見事右ストレートをかました大傑作(売り上げはそこまでだったみたいだけれど)である、らしい。
歯切れが悪いのは、ぼくがこのゲームをプレイしたことがないからだ。作品のことを知ったのがつい最近で、我が家にはもうPS2どころかPS3もない。さすがにハードを買うのは躊躇するので、飲み会でゲームや金八先生の話になっては「こんなおもしろそうなゲームがあってね!」と知ったか論法でこの作品の(聞きかじった)魅力を語ってきた。
先日、とある飲み会で「ずっとやってみたゲーム」という話題になり、待ってましたとばかりにこの話を披露したところ、はじめて「ぼく、やったことあります!」という人に出会った。並大抵のゲーム好きではないその人の目からみても、やはりめちゃくちゃおもしろいらしく、これはやはりやっとくべきかと、AmazonでPS2本体の値段を調べた。
どうやら5,000円も出せば、ソフトもハードも揃いそうだ。安くはないが出せない額じゃあない。我が家のテレビにはまだ3色のAV入力端子もある。でもそういう問題じゃないのだ。
最先端のゲームの快適さに慣れたぼくは、ローディングの長さにイライラし、セーブできるタイミングの少なさに憤り、ケーブルでつながったコントローラーに不便を感じるだろう。マシンといっしょに感覚の方もアップデートされてしまっているので、旧世代の使い心地がストレスになってしまう。ゲームをやらない人には、「5年前のスマホでInstagramをやるようなもの」と言えば多少は伝わるだろうか。中身が楽しくても、いろいろかったるく感じてしまうのが目に見えている。がんばればプレイできるだろうが、がんばってしまうと夢中にはなれない。夢中になれなきゃゲームじゃない。
それがわかっているからこそ、リアルタイムでそのときの「最先端」としてこのゲームをプレイした彼のことがうらやましいし、やらなかった自分を恨む。そして、15年後の自分に恨まれないよう「最先端」をできるだけ追う。
ちなみに、同じ飲み会で聞いた話をひとつ。
大人気スマホゲーム「Fate/Grand Order」の一部のファンの間では「ガチャのみ」というのが流行っているそうだ。新しいキャラが追加された日にみんなで飲み屋に集まって、それぞれのスマホで一斉にガチャを回し、その結果に一喜一憂するんだとか。なんて粋な遊び方だろうか。
そうやって「いまのもの」を全力でたのしむのが、いちばんたのしいんだと思うんですよね。