【こぼレビュー】TUNIC

作った人:Andrew Shouldice
遊んだ:Xbox ゲームパス

 「要はダッジロールと攻撃手段が二つもあればゲームは作れる」
そう書いたのは誰だったか…あっ俺だ!

 TUNICは言ってしまえばその点ではDeath's Doorとほとんど同じゲームである。ダッジロールをし、三つの攻撃手段を持つゲームだ。
 大きく違うのは、Death's Doorの最大の特徴はいわゆる「道中」が途中での回復や抜け道が許されない非常にストイックなゲームであり、ほとんど謎解きがおまけとなっているのが、本作では道中に関してはほぼおまけでエスト瓶の採用や敵に視界を持たせステルスを採用する等、どうにでもなるようになっている代わりに謎解き要素が大きい。

 また、この考えの違いは特にカメラ周りに大きく作用していて、Death's Doorはボス戦を含め固定カメラへのこだわりがある。戦闘中はキャラがオブジェクトの影にいかないように配慮されているが、TUNICは謎がある場面でカメラが周り込み、全ての場面に謎解きがある可能性を喚起するために主人公や敵が見づらい戦闘が多い。ここが大きくプレイ感の違う部分となっている。
 戦闘に関するゲーム難易度はほぼ同じくらいだが、この戦闘ベースでゼルダをやりたいか謎解きベースでゼルダをやりたいかの音楽性の違いにより、TUNICはいささかストレスが高い場面が多い。

 ボス戦闘に関してもそうで、本作でのボスはすべて幾つかの行動からランダムに選択するのを繰り返す戦いとなるが、敵にとって完全なノーリスク攻撃が多く存在し、それらを引き続けることもある。二回同時に同じ行動をしない…等のルールもなく、難易度の高さよりも理不尽さが際立ちかなりストレスが高い。それらをこなすために、謎解きによっての強化度合いが高めに設定されている。これは、ゲーム上の救済というよりも謎解きへの誘導の意味合いが強い。この誘導はかなり強固にされているので、一本道感をなくし飽きさせないといえばそうだが、逆に言えばクリアルートが少々面倒な回り道に固定されているとも言えるだろう。

 「クリアルートが少々面倒な回り道に固定されている」というのがこのゲームの根本的な弱点である。何故そうなるのかは簡単で、目的がないからだ。
 ゲームはなんとなく進めるようになっている。ゲーム開始後すぐに恐らくトライフォース的な奴を集めるんだろうというのはわかる。そもそも、本ゲームは「Secret legend」というタイトルで「三角形的なのを探す古典的ゲーム」というテーマだった。それは目的なのだろうが、一切のストーリーがないまま始まる。主人公が喋らない系のゲームではなく、主人公以外も何も語らないわけだ。フレーバーから読み取れるものはうっすらあるが、だから?という部分には一切答えない。主人公は死の危険を顧みず、何かわからないままにでもこの島をすべて明かさなければならない。それ以外にやることはない。

 そう、本作は「プレイヤーはゲームがあればクリアしたいに決まっている」という点について、完全にノーダウト、信仰にも近い無謬の信頼を元に作られている。

 これが良いのか悪いのかは明白で、僕は最後の最後でプレイをやめてしまった。本ゲームは二章立てになっていて、SFC天地創造のような構造を取っている。前半は先ほどもいったようにDeath's Doorで、後半は脱出ゲームである。リアル脱出ゲームも事前に目的は明かされているものがほとんどだが、本ゲームはこの脱出ゲームにも一切の目的がなく、ただ謎が横たわる。脱出したから何が得られるか、脱出しなかったら何が得られないかは提示されていない。
 ここまで目的が不在のゲームも珍しい。
 スタート時点ではDeath's Doorもほとんど同じで、自分が死神である鴉だということ以外は明かされないが、トライフォースを集める理由については明示されるし、それを持ち込むことでどうなるのかというヒキはある。これまでバラバラだった鴉たちが集うラストシークエンスにはやや独特のノリなものの盛り上げもある。
 道中にも何度かどんでん返しがあり、会話のシーン自体は最小限でも先を見たくなる要素がある。なにより、ロケーションは常に新しくなっていくのでそれが大きな動機となる。
 そういったものが本作の後半にはほとんどない。恐らく、謎を解いた結果、栄光たるゲームクリアが待っているのだろう。だが、謎解きの為に何度も見たロケーションは既に擦り切れており、この謎解きの後に何かが続く予感は一切ない。もしかしたら…これまで見たこともないボスが待ち構えている可能性はあるが、それと戦う理由はやはりなく、戦いたくもない。一切の動機もなしに、何故空虚な謎解きを続けないといけないのか。
 また、この謎解きがリアル脱出ゲームでいうところの「小問」なのもよくないだろう。難易度の違いは少々あれど、解き方に違いはほとんどない。
 リアル脱出ゲームはクライマックスにこれまで見てきたヒントや使った解法を総動員する場面があるが、そういったダイナミックさがないためただただ規定問題数を埋めて次のステージに行くためにパズルを解いているのと変わらないような感覚になる。
 しかも最後の謎は先に解き方だけわかってしまう。
 せめて最後の謎が何かがわからないならプレイしたかもしれない。
 しかし、解法はわかっているがただ解くのに足りないパーツを集めるためだけにそれとは関係ない謎解きをするとなると…。
 では謎解きゲームとしては面白いかというと、それは面白いとは思う。
 いわゆるリアル脱出ゲームとしてよく出来ている。
 だが、謎解きを純粋に楽しむにしては序盤のダクソライクな面白さがちらつく。それらは当然同じゲームなのだが、その実あの冒険はもはや過去の存在たちでしかなく、この島に残っているのはただあまりにもダルすぎる移動である。
 このゲームは謎解きのために作られているのに、謎解きのためのUIを持っていないことに目がいかざるを得ない。

 それもこれも脱出ゲーム先進国である日本だからこその悲劇かもしれない。脱出ゲーム経験が少なければこういった謎解きに、ただ謎を解くインセンティブを見つけられるかもしれないが、さすがに、ソロゲームでこれは付き合いきれないね。どうしてリアル脱出ゲームがチーム戦なのかもよくわかると思う。

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