【随筆】脱出ゲーム要素とは。

 脱出ゲーム要素、という言い方を最近よくする。

 これは「CRIMSON ROOM」に端を発する(もっと前から?)いわゆる脱出ゲームがSCRAP…というか千石一郎によって再発見され、今や海外でも楽しまれている。そして海外のものは出来が悪い。日本が誇る文化なのに、全く公的補助がなさそうだ。はっきりいって、能や講談や歌舞伎の時代じゃねーんだよ、もっと儲かる文化、つまり謎解き…いやライブゲームを支援しろ!!麻生、てめーだよ!

 まぁそれはともかく。
「リアル脱出ゲーム」がひとたび確立してからは(あえてそういうのは確立するまでには結構な時間がありました)その方程式というか、独特のゲームの形式?ふるまい?はなかなか便利だなという気持ちになってきました。

 それが「脱出ゲーム要素」で、端的に言えば
ゲーム内で明示的に説明されないゲーム内のインタラクションを使う必要がある」要素とまとめることができると思う。

 最近だとサイバーシャドウなんかがその要素を持つ。
・パリィの行動は示される(敵弾に向かって前レバー)が、「その後攻撃で打ち返せる」
・サイバーダッシュ(レバー二回)は「実はRボタンでも代用できる」「ダッシュ中に攻撃で出るサイバーダッシュ切りを当てた場合、レバーをいれっぱなら再度サイバーダッシュ切りが出来る」「二段ジャンプの回数もリセットされる」
 この辺りは多分わざと説明がなく、ツイッターで検索しているとその部分を指して「嫌な仕様・不親切」とはっきり書いている人もいた。
 俺は楽しんだところなんだが、まぁわからなくもない。

 この脱出ゲーム要素は現在洗練を極めており、もはや「どういう形で導入するか」というレベルから話し始める程度には浸透していると思う。
 つまり、それ以前の「なんとなくそういう感じを受ける実装になった」ではなく、「脱出ゲーム要素という視点で評価する」ことができるようになったというか。あって当たり前の時代だ。

 具体的には「導線はわかりやすいか」「導線はどこまで指図するか」「解答に要する時間はどのくらいか」という物差しがあると思う。

 特に導線…明示しないのに導線とは、という感じを受けるかもしれないが導線がなにより大事だ。ここが本題だ。特に、優れた脱出ゲーム的解法のひとつは「他に可能性がないというところに追い込む」ことを指す。
 沢山あるが、他には「ひとつのオブジェクトに複数の機能…特に余計なものをつける」などがある。余計なものとは、例えば「鍵だが先っぽがどう見てもフォーク」というアイテムが、鍵として使った後に「別のイベントでスパゲッティを食べるのにも使えた」みたいな感じ?アイテムと書いたが、三つの等間隔に空いた穴がマップ上にあってフォーク側が刺さるとか、なんでもいい。大事なのは結局「他の可能性がない」と一緒になるが余計な情報は付けないことだ。情報量を絞ることで散漫な考えではなく、それ一個に絞らせることで確実に解答させる。
 もし、プレイテスト時に時間を計測したときに存外時間がかかったならそれは「他の可能性を考える要素があったかもしれない」という視点で見直す。逆に、簡単すぎたなら散漫にさせる。「鍵だがどうみてもスプーン型」を作れば、散漫になるかもしれない。そういう感じ。

 これが今はアクション、RPG、ボードゲーム、様々なジャンルで取り入れられてきている。また、「創意工夫」とは似て非なるところがある。工夫は必要とするが、創意ではなく、レールに乗っていると自然と導かれる工夫で、これは情報をあえて欠如させて生み出すものと思っていいだろう。
 レールが途中で切れているが、先に繋がる部分が見えていて、それを繋ぐ……そういう感じ。

 とくにオチはないので、最近のよくできた脱出ゲーム要素のあるゲームを羅列します。

・Untitled Goose Game
・Outer Wilds
・Portal(最近か?)
・Gorogoa
・Carto

 あと漫画で「BOX」という作品があります。書いたのは諸星大二郎。
えっ!諸星大二郎ってもう70くらいやろ?でもこれの脱出ゲーム要素の描写がとてもすばらしいんです。多分実際に経験しないと書けないところまで踏み込んでるので、たぶん実際にいったんだろうな。そう考えるとなおすごすぎる。そこまで研究して書く、ということなんだろう。

 僕が好きなのはThe Witnessで、でもこれは脱出ゲーム要素はあんまりよく出来ていません。(過去の僕のツイートが賢くて偉い!)

でも、それがわざとなのでそれでいいんです。終わり。

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