ジャニーズの報道問題
ジャニーズの報道問題について、ずっと考えていたことをここに記す。
要点
・ジャニーズの事件が報道されなかった理由は4つ考えられる
・1,報道したらヤクザに〇されるなら報道できない
・2,報道機関、特にテレビ局は資本的に弱い
・3,告発者、報道者は保護されない
・4,記者クラブなどの既得権益は現状を守り、厄介ごとを嫌う動機がある
嘘をつくな
ジャニー氏の性加害は、芸能に疎い僕でも知っていたし、数年前からしばしば指摘してきた。噂レベルでは10年以上前から、かなりの醜聞として真偽が議論されていたのは5年位前と記憶(認識)しているので、日本の報道とジャニーズ事務所の副社長が事態を全く認識していなかったなどというのは通らない。特にテレビ局は常に問題の渦中にあり、加害に加担していた可能性すらあるのだ。
しかしもう遅い。ジャニー喜多川氏は亡くなっており、物証も乏しい。追及するには遅すぎたのだ。
とはいえ、この問題に対してその問題の本質を見極め、再発防止策を考えることは有意義と考えるので、僕の考えを書いておこうと思う。こいつは一般論なので、一部もしかしたらジャニーズ事務所には当てはまらないかもしれないが、”仮にそうなら”という議論である。
第一の問題:報道する危険性
芸能とヤクザの関係は昔から指摘されてきた。不都合な報道をする者に反社会組織の構成員を使って攻撃できるとするなら、記者もディレクターも委縮するだろう。報道する内容によっては殺されて埋められる可能性があるというなら、いわゆる「ジャーナリスト」を名乗るもの以外は告発は難しいだろう。
第二の問題:報道することの利害関係
大手芸能事務所であれば、テレビ局よりも資金力があってもおかしくない。テレビという媒体の収益は、日本においては”スポンサー企業”に収益のほとんどを依存するという脆弱性がある。この収益が近年減っている一方で芸能事務所の方はコンサートなど自力集金も充実しているのだから資金力的にはテレビ局の方が弱い場合も多かろう。加えて、芸能事務所はタレントを出さないことで間接的に圧力をかけられ、かつスポンサーに手を引かせるという搦め手も使える。資金面でいえば、大手芸能事務所のスキャンダルは黙っておけば少なくとも損はしない。
加えて、告発しようにも一社だけでは相対的な損害が増えるという計算もあるだろう。あるAテレビ局が告発したとして、報復的にA社以外にはタレントを優先的に安く提供し、A社には提供しないか高額設定をすれば、他社は儲かりA社だけ儲からない。となれば競争において告発したA社は断然不利である。告発報道はなるべく足並みをそろえたいがそろえにくいというのがテレビ局の本音ではないだろうか。
第三の問題:告発者は保護されない
報道の自由に関して言えば、日本は政府に対する悪口雑言は自由である。そもそも日本の政治家はあまり反撃してこない。しかし、上記理由で報道を躊躇するとき、日本においては実務的どころか予防的にすら告発者の保護はなされない。上記案件で安全を確保するなら、少なくとも以下のシステムが必要である。
・反社会勢力が絡む可能性がある報道における、警察による告発者保護
・反社会勢力が絡む可能性がある報道における、警察による報道者保護
・告発に対して報復的な対処を行った場合には厳罰
・告発を嘘であると主張し攻撃したとき、既存法+αの追徴罰(告発妨害罪的な)
・厳然たる事実を審査登録し法的根拠とできる仕組み(特許システムのように「事実」を登録できるシステム、例えば「情報審査登録庁」)
・告発自体をある程度テレビ局横断的に要請し、断る自由はあっても後で損害賠償などのペナルティがあるシステム
加えて、これら「報道の自由を守るシステム」はメディアに絶大な権力を与えてしまうことから、バランサーとしてのシステムと義務も必要である。
・虚偽報道には罰則
・報道自体を要請し、その事実を残すシステム
・報道する、しない判断を個人に課す一方で責任も課す(テレビ局が曖昧に謝って終わりにしない)
・相反する情報がある場合には両方をバランスよく報道する義務
第四の問題:記者クラブなどの既得権益
一番わかりやすいので記者クラブをやり玉に挙げる。日本の記者クラブは本来は強権的な政府に対抗する手段であったが、政府がある程度民主化した現代ではむしろ独裁権力側である。
フリーのジャーナリストでも記者クラブに排斥されれば、日本において「報道」の仕事は極めてやりにくくなる。つまり、日本の記者クラブはれっきとした情報独占組織であり、この記者クラブにさえ圧力をかけられればメディア関係者に絶大な圧力を生み出せる。この状態は独占禁止法違反であり、実際、記者クラブにお金を払って厄介な人物を排斥することもできる状態である。
日本は戦争によって多くの利権組織が力を失ったが、その焼け野原から復興するときにまた別の利権組織が育ってしまったのだ。
記者クラブの意図による情報や人の取捨選択はは報道関連機関としての汚職であり、将来的には報道機関の信頼を損ねる行為なのだ。しかし、その既得権益にしがみついている人間はいざとなれば十分な退職金をもらって逃げることができるという、責任者として責任を全うする動機には欠ける人たちなのだから、外部から圧力をかけなければ自浄作用は期待できないだろう。
報道の自由度
日本のメディアは報道の自由度が低いだのなんだのと騒いでいるが、本来は反社会勢力にビビッて報道できない、そういう報道途上国であることを認識し、義務を負う代わりに安全を担保する、そういう気骨をこそみせてほしい。
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