ゆんやぁ

書き物の練習も兼ねて青空怪談「禍話」の自分の好きな話のリライトなどをしています。

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最近の記事

禍話リライト 死んでも

大学を卒業した後、介護士になった友人がいるんです。 その友人と飲みに行って仕事の苦労話なんかを互いにしていて。 友人が職場で手を焼いている認知症の高齢者の話をしていた時に「そういえばさ、」と語り始めた話です。 *** 小学生の頃の話なんだけど。 その頃、地元にあったサッカーのクラブチームに入っててさ。 別の小学校の子もクラブにいたから校区外の友達もいたんだよね。 その校区外の友達のうちの一人が、とある子の家に泊まりに行くから一緒に来ないかって誘ってくれて。 要は友達の

    • 禍話リライト ガラケーの動画

      『いえーーーい!俺たちは今、とある有名な廃墟に来ていまーーーす!』 画質の粗い、薄暗い動画でも派手な髪色をしていることが分かる青年が、 音割れをするくらいの声量でカメラに向かって叫んでいる。 バタン! 青年がドアを蹴破る勢いで乱暴に開く。 ガラケーで撮影されたと思われるその動画は、画質も音質も粗く、 撮影場所が暗いこともあり、人や物の輪郭を辛うじて捉えている程度だ。 そのため、青年が言う「有名な廃墟」が具体的に何処なのかは分からない。 『この窓開くんじゃね?』 ガ

      • 禍話リライト 転び坂

        かの有名な京都の清水寺の参道から北へ伸びる坂道のことを産寧坂という。 産寧坂の語源は諸説あるが、文字通り「お産が寧らか(やすらか)でありますように」と祈願する人が通い詰めたことから、そう呼ばれるようになったと言われている。 産寧坂は別名「三年坂」と呼ばれている。 産寧坂で転ぶと三年以内に死ぬと言われており、これが別名の語源になっているそうだ。 転ぶと数年以内に死ぬという三年坂に似た「転び坂」の伝説は、京都以外にも全国各地にある。 どころか、海を越え韓国にも「三年峠」という

        • 禍話リライト 備品/遺品

          以前、警備員のアルバイトをしていたAさんの話だ。 当時、新しいアルバイトを探していたAさんはとある寂れたビルの警備員として採用された。 業務内容は夜間の見回りだったが、勤務中に何か事件が起こるようなこともなく楽なアルバイトだった。 しかし、一つだけ不満があった。 休憩時間を過ごす場所がなかったことだ。 警備員用の休憩室はあった。 しかし、勤務初日に先輩からあそこは使わない方が良い、と言われたのだ。 代わりに近くのコンビニにでも行けば良い、先輩達は皆そうしている、とのこと

        禍話リライト 死んでも

          禍話リライト 隣の部屋のカップル

          Aさんが以前住んでいたアパートの隣の部屋のカップルの話だ。 当時大学生だったAさんは壁の薄いアパートに住んでいた。 そのため、隣の部屋の声や物音がよく聞こえた。 隣人がつけたテレビで、その日のトップニュースを知ることもあったという。 そんなアパートに、ある時期からAさんの隣人の男が女を連れ込むようになった。 男性のみ入居可能な安アパートだったため、Aさんは心の中で 「ここは女人禁制だぞ」 などと茶化しながらも、隣人と女、カップルの会話に聞き耳を立ててしまうこともあった。

          禍話リライト 隣の部屋のカップル

          禍話リライト 6、7、8、9、10

          それがどんなにくだらない内容でも、 降霊術じみた心霊ゲームなんてものはしない方が良い。 友人に動画投稿者がいたんです。 その友人は、ホラージャンルの動画を投稿していて、 恥ずかしいから、って動画自体を見せてくれたことはないんですけど、 どんな動画を撮るとか、そういう話はよく聞かされていました。 小学校の図書館の片隅に、 子ども向けの怖い話を集めた本がありませんでしたか。 なんとかレストラン、みたいな。 なんとかレストランの本ではなかったと思うんですけど、 でもそういう類の

          禍話リライト 6、7、8、9、10

          禍話リライト スクールゾーン

          地元企業でOLをしている私は、 普段はバスで通勤している道を、 運動不足の解消のために歩いて帰ることがある。 毎日続けなければ意味がないとも思うが、 全くやらないよりはいくらか効果があるはずだ。 ある日、珍しく事務作業が溜まってしまい、 金曜日だというのに2時間ほど残業をしてしまった。 19時頃に作業がひと段落したため、 まだ作業に追われている同僚に声をかけ、 ようやく退勤した。 退勤して、まっすぐ家に帰るのは何となく勿体ない気分だったが、 街に出かけて買い物をするほどの

          禍話リライト スクールゾーン

          禍話リライト 公衆トイレの落書き

          「この前、夜中に先輩から電話きて、 出たら『助けてくれ』って言われて。 話聞くと、たまたま近くにいるっぽかったんで、 出向いたら、 先輩、公園のトイレの個室で腰抜かしてたんですよ」 その日、先輩は友達と飲み会をしていたらしいです。 飲み会は、日付変わる頃に解散したそうで。 その時に気づいたらしいですけど、 その日集まったのがたまたま全員、 先輩とは違う方面に帰る人たちばかりだったらしいんですよね。 だから、先輩は一人で帰ることになったそうです。 居酒屋から先輩の家まで、一

          禍話リライト 公衆トイレの落書き

          禍話リライト 塵(ごみ)の知らせ

           人の不幸の兆しを、虫の知らせ、と表現することがある。これは、私が虫の知らせならぬ、塵の知らせを受け取ったのかもしれない、という話である。   その日、20時過ぎに友人から急に飲みに行こうと誘われた。二つ返事で了承した私が、駅までの道を歩いていると、道中にあるマンションの道路に面したゴミ捨て場に、老婆がうずくまっているのを見た。  一瞬、ギョッとして立ち止まる。しばし思案して、体調不良の可能性も考え、駆け寄る。  近寄ると、ガサガサと音が聞こえてきた。どうやら、ゴミ捨て

          禍話リライト 塵(ごみ)の知らせ

          禍話リライト マフラーの理由

           xx年xx月xx日にこの場所であった事故で、高校生のウチの子であるマコトが亡くなりました。この場所であったウチのマコトのできごとは、事故です。自殺ではありません。そのため、マコトを自殺と言うのはやめるようにお願いします。母:○○ ○○ 連絡先:xxx-xxxx-xxxx  私が所属する大学の新聞サークルで、夏という季節柄、オカルト特集を組むことになった。大学には新聞部もあったが、そちらが本物の新聞のように堅苦しい記事を掲載しているのに対し、新聞サークルが作る新聞はどちらか

          禍話リライト マフラーの理由

          「シン・禍話 第五十三夜」で私のリライトに触れられていた件について

           はじめまして、ゆんやぁといいます。先月から、禍話のリライトをさせていただいている新参者です。  タイトルにもある通り「シン・禍話 第五十三夜」にて、禍話の語り手であるかぁなっきさん達が私のリライトに触れておられました。正確には、リライト自体ではなく、リライトに寄せられたTwitter上のご意見について、です。これに関して、かぁなっきさん達に非があるかのような説明をされていたので、それだけは訂正させていただきたくこの場で申し上げます。  当該リライトは以下の話です。  

          「シン・禍話 第五十三夜」で私のリライトに触れられていた件について

          禍話リライト エレベーターで異世界に行く方法

           自分の住むマンションは、事故物件が多い。事故物件を検索できるウェブサイトがあるが、自分のマンションの名前をキーワードに検索すると、複数件ヒットする。  自殺、火事、孤独死。検索サイトで判明した、自分のマンションにおける事故の内容だ。他殺がないのが救いだろうか。しかし、他殺以外の案件を概ね取り揃えてしまっているのが、自分の住むマンションだった。  ある日、仲間内で、エレベーターで異世界に行く方法、というのが話題になった。エレベーターを駆使して、複雑な手順を踏むと、最後にエ

          禍話リライト エレベーターで異世界に行く方法

          禍話リライト オーライ、オーライ

           車を駐車する時さ。前と後ろ、どっち向きにする?偶に向きが決められているところもあるけど、そうじゃなきゃ普通は後ろ向きに駐車にするよな。  え?バック駐車苦手だから前向きの方が多い?そうなんだ。・・バックで車出す方が駐車よりハードル高くない?まあ、いいや。  地元のツレから聞いた話なんだけどさ。あるコンビニの駐車場が、妙なんだって。お前は違うかもしれないけど、普通、特に指定がなきゃバック駐車すると思うんだよな。その方が、車出す時は前に出るだけで、楽だから。  でもさ、そ

          禍話リライト オーライ、オーライ

          禍話リライト お揃いの遺影

           休日、本屋で資格試験の参考書を探していた。良さげな本に手を伸ばす。一つひとつ中身を確認しながら本棚の前を横移動していると、突如異臭がした。管理されていない公衆便所のような不快な臭いが鼻をつく。  えずくのをこらえて周囲を見渡すと、黄ばんだロングスリーブのTシャツを着た男が目に入った。においの発生源らしい。  男は隣の棚、大学受験の参考書が取り揃えられた本棚の前にいた。今しがた自分がしていたのと同じように、男も本を吟味しているようだ。  普段ならそそくさとその場を離れる

          禍話リライト お揃いの遺影

          禍話リライト ロットリエスピン

           大学生の頃、友達と何人かで集まり、宅飲みをした。まだ酒を覚えたばかりだった我々は、ペース配分もわからず、気が付けば一人、また一人と寝落ちていった。  明朝、目を覚ますと、私より先に起きていたらしい友達の一人が、何やら紙を握りしめていた。「何それ」と眠たい目をこすりながら聞くと、その友達は夢の内容をたまに書き留めるのだという。印象的な言葉が出てきた夢だったから、それを床に落ちていたレシートに書き残したらしい。  友達は、夢の中で授業を受けていた。中学か高校か、もしくは塾か

          禍話リライト ロットリエスピン

          禍話リライト 片足の人形

           私が住んでいるボロアパートの取り壊しが決まった。春先に通知があり、退去は年内までにと言われたが、台風が来る季節の頃には、私以外の住人は全員いなくなってしまった。  私は1階の角部屋に住んでいて、玄関の目の前には2階への階段がある。階段は、歩けば足音が響き、駆け上がれば建物が揺れるくらい老朽化しており、アパートの取り壊しもやむなしだと思われた。このアパートの入居者には学生が多かったが、飲み帰りの学生が友人を連れて深夜に帰宅した時などは、寝入っていても目が覚めた。  そんな

          禍話リライト 片足の人形