拝啓 つきのばんにん さま




エミール、こんばんは。

今日のおつきさまはまんまるですか?
こちらは雨が降っていて、
今夜は見ることができそうにありません。
明日は晴れるって。

久しぶりに絵本にお手紙を書きます。
なんで久しぶりかというと、
私の心の中で絵本が小さくなっていったから。
お月さまとおんなじかな。
おんなじにしちゃいけないかな。

とりさんが言っていたこと。
私はすとんと心の中に落ちたんだよ。

私の中で月と絵本はおんなじなのかもしれないって。
見えなくなって悲しくなっていたら、
急に現れたんだよ。本当に。
絵本との距離感が均等になった気がするんだよ。

また絵本のことが見えなくなる時がくるかもしれない。でも、バイオリズムってあるもんね。
見えなくなっても、ふと見える時がくるかもしれない。
その繰り返しかもしれない。


おかえりって、エミールのように言うよ。


急に冬がやってきて、何を着ていいかわからないや。
そういえば、こー坊がしろくまの毛は透明っておしえてくれたんだけど本当?

素敵な夜をお過ごしください。


かしこ
水上祐佳

つきのばんにん
ゾシエンカ 作
あべ弘士 訳
小学館


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