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第2話 ビビッとキタ!
第1話はこちらから!
「なるほど、それでボクの所に」
消えたサツマイモの捜索を始めて、まず向かったのは同じ美術部に所属する喜多響斗のところだった。
「昨日は部室に来てなかったし、響斗が犯人じゃないとは思うんだけど一応確認を。それにしても、まだやってのかそれ」
僕は彼が描いているキャンバスを覗く。そこには、見慣れた街並みの上に濃淡をつけた赤色が塗りたくられていた。
「なんというか、異様な火災ポスターだな」
「異様とは失礼ですね。これは歴とした芸術ですよ。ほら『芸術は爆発だ』なんて言葉もあるくらいだし」
「そういう意味ではないと思うけど。それにもったいなくないか、せっかく綺麗に街並みを描いたのに、そんな赤色で塗って」
「あまいですね、これは一種のアンチテーゼですよ。いつまでもあると思っていたものは一瞬にして消えることもある、というね。そういう意味ではサツマイモだけが消えたのも同じような意図があるかもしれません」
そう自信満々に語ったかと思えば、響斗は筆を止める。それを不思議に思っていると、突然立ち上がりこちらに体を向けて一言。
「ビビッとキタ!」
左手の人差し指だけをピンと伸ばし、笑顔を向けてくる響斗。彼の言動を見て僕は頭の奥が痛くなる。
「ボクの勘にビビッと来てしまいましたよ」
「あー、うん。わかったから、落ち着け」
「つまりですよ、サツマイモが消えたのはボクら美術部に向けてのメッセージ。これは解き明かさずにはいられませんよ」
興奮しているのか、捲し立てるように言葉を紡ぎ、美術道具を片付け始める響斗。彼の悪い癖の一つで興味が湧くと意識がそちらに向いてしまうのだ。こうなってしまうと手がつけられない。
「さぁ、早く行きましょう神城先輩。サツマイモのメッセージはボクが解いてみせますよ」
こうして、当てにならないサツマイモ探しの仲間が一人増えたのだった。
続く
担当:志央生
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