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【読了】遮光を読み、自分とリンクした話


「遮光」中村文則著


あなたは今まで誰かのフリをして生きたことがあるか。

恋人を亡くした事実を周囲に隠し、「虚言」を吐き続け悲しみに抵抗する主人公。黒いビニール袋に包まれた謎の瓶を常に持ち歩く。



教団Xが話題になっていた頃から中村文則氏の本が気になっていたが流行り物を遠ざける傾向にある厄介な性格の為、いまさら遮光を購入した。

この本を読んでいて、一番刺さった文章があった。
「あの日私は、太陽を睨みつけていた。」
「私はそれを、これ以上ないほど憎み、睨みつけていた。その美しい圧倒的な光は、私を惨めに感じさせた。」

物語を全て読み終え、最後のページの解説を読むと、中村氏がこのシーンを、僕の文学の中核をなすシーンだと語っていた。
自分が一番刺さったシーンがそこだったので純粋に嬉しかった。今まで人と共感できることが少ない人生だったから。

高校時代、学祭準備を仲の良かったクラスメイトと数人でサボった事がある。
クラス一丸となり学校祭を成功させようとしていた。みんな仲が良かった。
私も当然うまく行って欲しかったし、みんなが楽しければいいと心底思っていたが準備をサボった。
サボろうというノリでサボったわけではなく、当たり前のように放課後残らずに下校した。
翌日、同じクラスのリーダー格の女子に「みんなに頭を下げろ」と教壇に立たされた。
なぜ怒っているのかわからなかったし、何を喚き散らしているのかわからなかった。一緒に立たされた友人は恐怖からなのか惨めだったからなのかわからないが泣いていた。
教師でもない、ただ年齢が同じの人間に、なぜここまで怒られるのかと不思議でならなかったが、ここは反省しているフリをしなければいけないと思い、すみませんでしたと頭を下げた。
机に戻ると隣の席の子に心配された。どうして心配されていたのかわからなかったが悲しい顔をし、ごめんねと謝罪した。
その日はよく晴れた日で、心底くだらないと思ってクラス全員をバカにしていたのを覚えている。
こんな出来事、クラスにいた99%の人が茶番だと思ってるだろうに、よってたかって悪者扱いしてきた事が腹立だしかった。長い物に巻かれてるなと思ったし、この人たちも結局私と同類だと思い同族嫌悪した。

一応言っておくが学祭は好きだ。というより、あらゆる行事が好きだ。
みんなが楽しそうに笑っているしお祭り騒ぎで非日常を味わえる。

みんなが怒っていたら反省している顔をしなければいけない。
私がリーダー的ポジションだから、いないと学祭準備が回らない等の理由で怒られるなら納得するが、いてもいなくても変わらない、むしろミスばかりするのになぜいなかっただけで怒られたのか。
さすがに怒ってはないが、卒業して10年以上経つ今でも不明である。

この作品に出てくる主人公のところどころが自分に似ていると思った。
こんなことを書いたらまた友人を失う可能性があるがここは私の庭だから好きにする。

私は仲良くなれそうな人には心を開くのは早いと思う。
よく周りからは、お前の態度はわかりやすいと言われていた。
だが学校という括りの中や社会人になり、どうでもいい人間と付き合っていくのは至難の業だった。

行きづらい世の中で、どうでもいい人に対し、怒っているから反省する素振りをする、笑っているから楽しそうなフリをするという、それだけの演技は簡単。

7章でシンジさんが主人公に対し、
「大体、お前を初めて見た時さ、気持ち悪い奴だなっておもったよ。」
「お前と話してても変な感じになるんだよなあ。お前の言葉は何か全部、中身がないっていうか、うわべっていうかさ、そういうふうに聞こえるんだよ。」
と指摘するシーンがある。
主人公が言われてるのに、なぜか自分に言われてるような感覚になってしまった。
昔仲の良かった人に
「お前の言葉は全部棒読みだから感情がわからない、どこまでが本気で思ってるのかわからない」
と言われたことがあるからだ。

仲のよくない人を敵に回したくないので当たり障りなくその人に感情を合わせて振る舞っているが、シンジさんのような「見抜く人」に出会うのが人生で一番恐ろしい事だなと思った。


話は変わるが、先日とあるYouTuberのオフ会に参加させて頂いた。
そこで出会った方やYouTuberの方はとても親しみやすく、こんな私でも肯定してくれるのかと感動したと同時に、似た者同士が集まるんだな、と良い意味で感じた。

私は長年の経験から、誰とも価値観が合わず、どこにも馴染めずに変わり者扱いされ、すぐに人から嫌われる人間だと思っていた。
だがお二方には自分と近いものを感じ、打ち解けることができたと思う(私に似ているだなんておこがましいにもほどがあるが正直な感想として書く)
初対面でこんなにも居心地の良い場所があるのか、私は変わり者でいてもいいんだ、と心の底から思えるいわゆる神回だった。

やはりこの本は拗らせ陰キャにはうってつけの本だった。
ページ数が149ページしかなく読みやすかった。
日頃、知らない誰かを纏って生きてるような人におすすめしたい。




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