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ミュージカル「GIRLFRIEND」観劇記録

観劇回:2024年6月25日(火)マチネ
出演者:マイク/吉高志音 ウィル/井澤巧麻 (敬称略)

公演詳細は下記公式サイト参照のこと


仕事の都合で当初は観劇を見送ることにしていた西日本在住の筆者が、公演が近づくにつれてやっぱりどうしても志音くんの歌が聞きたくなって飛行機での日帰り弾丸観劇に行った時の備忘録。
基本的に志音くん目当てで見に行っているので、志音くんの感想多めです。
ネタバレ踏まずに、あらすじだけ頭に入れて観劇したので、ところどころ間違っているところもあるかもしれませんが、その点はご了承ください。
この感想に出てくるマイクとウィルは、私が観劇した志音くんと巧麻くんから得た印象です。


電話の様子で分かる親密度

マイクがウィルを見出したきっかけはなんだったのだろう?
初めはマイクがウィルに対してアプローチを始めていた。
カセットテープをプレゼントした時に教えてもらったのか電話番号のメモを見ながら一個一個確実にボタンを押して電話をするマイク。
けれど、なかなかウィルが出ないから「この番号であってる?」って思いながらメモを見返している姿で、初めて相手に電話をしているというのがよくわかる冒頭のシーン。
それが後半、父親と喧嘩をしてむしゃくしゃした勢いで電話をした時にはメモを見ないでダイヤルをしていたマイクの姿に、あの初めての電話の後、何度も何度もダイヤルを押して覚えた様子が垣間見えて、二人の電話時間がギュッと表現されていて、なんでもない場面のはずなのに、私は見ていてハッとしたし胸が苦しくなってきた。


マイクの彼女の存在について

果たしてマイクの彼女はいるのだろうか?という疑問が、マイクの口から彼女の話が出るたびに気になっていた。
プロムキングでおそらく学園カースト上位にいるマイクに彼女がいないというのは確かに不自然であるとは思う。在学中はもしかしたらチアの彼女とかいたかもしれないとも思ったのだが、ウィルを誘ってドライブインシアターに出かけた時点では、彼女はいなかったのではないだろうかと思っている。
何故かというと、マイクが彼女の説明をする度に、どうしても彼女=ウィルのことを話しているのではないだろうか?と思ってしまったからだ。
腕の細さとかそういう彼女の話をしている時に、マイクが思い描いている人は、遠恋になる恋人ではなく目の前にいるウィルであり、ウィルが恋人であったならというマイクの願望が見え隠れしているのではないだろうかと思えてならなかったのだ。
このシーンはすごく難しいというか…。
私が彼女はいない。彼女という架空の存在=ウィルであり、これから始まる二人の純愛の物語のプロローグシーンだと思いたいのは、仮に彼女がいた場合、マイクがとんでもなく不誠実な奴に見えてしまうからということが理由に上げられる。だって、彼女がいるのに浮気する奴になってしまうのだ…。もちろん、この時点では友達として仲良くなろうというスタンスだったのだから、いいのかも知れないが…。でもなぁ…あれはどう考えてもウィルのこと気になってて、いもしない彼女にウィルのことを投影しているように見えるんだよなぁなどとグルグル考えながらパンフレットを読んだら、このシーンは役者によっても解釈が違うというのを対談で知り、なるほどそれなら観客側も受ける印象は人それぞれになるんだなとようやく落ち着くことができた。


友情が愛情に変わるまで

初めはマイクからウィルにアプローチをしたけれど、ドライブインシアターで高校時代につるんでいた仲間にウィルと二人でいるところを知られたくなかったマイクは、伏せてとウィルに声をかける。素直に従ったウィルの様子を見て、「あぁ…違う。お前はそんなことをしなくていい」とすぐにやめさせるが、このシーンは見ていて胸が痛くなった。
時代背景から考えるに、マイクの行動は周囲から同性愛者だと言って迫害されないための自衛とも考えられるのだが、それとは別に、スクールカースト上位者と底辺者の組み合わせを知られることが嫌ったのではないだろうか?という印象も受けた。
この時の巧麻ウィルが志音マイクの対応に対して「人気者のマイクと冴えない自分が一緒にいるのは知られたくないよね」といった雰囲気が出ていたので、余計にそう感じたのかもしれないが、この時点での二人は恋を自覚する前だったので、卒業した学校での関係性にまだ囚われているように思った。マイクの対応に苦いものを感じたが、その行動はマイクなりにウィルのことを必死に守ろうとしている気配もあって、十代の学生にとって学校という存在がいかに人生の中心にあったのかを実感する場面でもあった。この時の二人はあくまで友人という体だったように思う。

では、いつ二人に恋心が芽生えたのだろう。

マイクについて、初めからウィルのことが気になっていた時点で、気持ちが芽生え始めていたように思うが、ウィルの方は、初めは学校の人気者からカセットテープをもらって舞い上がっていたが、それはあくまで友達の可能性の一歩だったはずだ。

劇中で何度か歌っているマイクの様子を撮影しているウィルの姿を観ることができる。
そして、ウィルが撮影している映像がそのままバックにリアルタイムで映し出されるのだが、そのマイクはウィルだけが知っているマイクの姿で、それはなんて尊いものなのだろう。
何故なら、こっち向いているマイクの目線の先にはウィルがいて、マイクのあんな嬉しそうな顔を独り占めしているのは、他でもないウィルなのだ。
座席位置の問題で、私が座っていた席からはウィルの部屋の様子がベッド以外ほとんど分からなかったので、これは私の勝手な推測だが、ウィルはビデオを撮るのが好きだったのではないだろうか。
そして、楽しそうに歌っているマイクの姿をレンズ越しに見つめていく中で、マイクのことを好きになっている自分に気づいたりしたのかなと思ったりしている(これは完全に私の妄想)


マイクとウィルのデートの主導権

ウィルにデートの誘いを断られるなんてことはない!って自信満々に電話しているのに「どうしようかなぁ」という雰囲気出されて「え…いくよな? え? 行かないの?」って不安になっているマイクが本当に可愛かった。そして、マイクのそんな気配を察して、本当は乗り気じゃなかったけど、「いいよ、行こう」って言ってあげるウィル。

この時点でマイクとウィルの関係性が二人の間では逆転したようにも思えるのだが、マイクのウィルに対する依存度が上がったようにも思えて、危ういものも感じられるようになった。



幸せの絶頂からの別れ

星空の下でようやく心が通った二人。

父親が不在の自宅にウィルを連れてきて一緒のベッドで眠った時が二人にとって幸せの絶頂だった。けれど、夢のような時間から覚めれば、非情な現実が待っている。
想いが通じてこれからも二人の関係は続いていくと信じていたマイクに対して、この閉鎖的な街に一人取り残されることに気づいたウィルとの感情の対比。
聡いウィルが気づいてしまった現実に通じ合った二人の心はすれ違ってしまう。
別れを告げなお、胸に溢れる気持ちを抑えきれず、口に出していは言えないけれど、せめてもの想いでそっとウィルが手紙に託した「愛してる」の言葉は、心ないマイクの友人たちによって暴露されてしまう。

それは世間には許されない恋を育んでいた二人にはあまりに辛い現実だった。

ウィルからの手紙がバレて、友達からウィルとのことを揶揄われることが我慢できなくて、「黙れ!」と激昂するマイク。
ウィルが離れていくことを感じとったマイクは言葉を封じるようにキスをして、その体をきつく抱きしめた。それまでずっとウィルとの関係を周囲に知られないようにしていたマイクがなりふり構わずにウィルを失わないために出た行動だったが、「振り返るもんか」と言うのはマイクの弱さの表れだった。
何故なら、決してマイクが見ようとしなかった友人たちの反応をウィルはしっかり見てしまっている。
ウィルにだけその辛い現実を見せつけて、自分は見ないというのはマイク自身が最悪の現実を受け止めることから逃げていることに他ならない。
受け止める覚悟もない、だけど、ウィルを手放すことも出来ないというマイクとマイクの友人たちの様子にウィルは傷ついたのだと思う。
周囲の反応に傷ついて、自分勝手なマイクにも傷ついて、だけどそれ以上に好きな人にこんなに悲しい気持ちを味わわせたくなくて、ウィルは別れの選択をしたのではないだろうか。

巧麻ウィルが志音マイクよりも精神的に大人びていたのか、現実というものをよりちゃんと受け止めていたように思う。

だからこそ、別れを決意させたあの最後のキスが悲しすぎたし、自分と同じだと思っていたマイクが、全然同じではなく自分を一人置いていくと言うことが、どうにもならない現実として重くのしかかっていたのかもしれない。

苦しんだ先の再会は音楽とともに

その後の二人の様子がただただ切ない。

どうしてもウィルのことを忘れられなかったマイクは、大学の勉強をしていても気がつけば、ウィルのことを考えてしまう。

一方のウィルもずっと心をマイクに心を残したまま過ごしていた。そんな傷付いたウィルの心を癒してくれたのは音楽だった。

ライブに行くためだけにバスに飛び乗った時、リンカーンという地名はどれくらいウィルの中で響いていたのだろうか。あるいは、リンカーンであったからこそウィルは行くことを選択したのだろうか。
多分、マイクに会えるなんて思ってなかったんだと思う。
そして、やはりこの二人の中で、より相手に情を残していたのはマイクだろう。拒絶されるかもしれない…と一瞬のためらいを見せながら、おずおずとウィルの左手を握りに行くマイクには未練が、悲しかったことを全部受け入れて、その手を握り返しマイクが隣に立つことを許したウィルには未来があるように見えた。

二人を結び付けた音楽が、もう一度離れた二人を結び付けた。

きっとあのあと二人は長い夜を過ごすのだろう。別れてしまったあの夏から今までのことを話すために…。


作品について

マシュー・スウィートのCDアルバム「GIRL FRIEND」をベースに作られた今作は、自分の心情を歌い上げる本来のミュージカルとは異なり、曲に自分の気持ちを託す形で構成されている点が大変面白い。

私たち観客も日常生活において、好きなアーティーストの音楽を聴いて歌詞に共感し、時に自分の気持ちを代弁してくれたと思うことがある。カラオケ以外でも口ずさむことだってあるだろう。このミュージカル「GIRL FRIEND」は、そういう音楽との関わり方がとても自然で、バックの生バンドと出演者二人の歌が絶妙にマッチして、本当にストレスなく世界観に浸ることができた。
たった二人しか舞台の上にいないミュージカル。
1時間50分の間、主演の二人は出っぱなしで、お芝居だけでなく場面転換も担っているし、思っていた以上に衣装チェンジがあるし、歌は歌うしダンスは踊るしで、比較的コンパクトな劇場であるシアタークリエであってもその運動量はものすごい量であるにも関わらず、二人とも全く息が切れずに軽やかに肉体が躍動し、繊細に歌を歌い上げる様子にただただ脱帽だった。

シアタークリエは初めての劇場だったのだが、とてもコンパクトで客席と舞台の距離が近い劇場だった。
ただ、その近さ故に座席が上下それぞれに寄ってしまうと反対側が少し見えにくくなるのと、今回演出に用いられていた映像投影が前方であればあるほど、近すぎて全体を把握するのが難しかった点が少しだけ残念だった。
あの投影された映像込で完成された舞台を観るためには中頃から後方にかけてのセンターが一番最適であったように思われる。
映像収録されて円盤で全景が見られれば良かったのかもしれないが、残念ながら今回はその予定は無いようなので、これについては席の近さゆえのことなので、なんとも贅沢なジレンマだった。


巧麻くんのウィル

巧麻くんは、ミュージカル「テニスの王子様」3rdシーズンで存じ上げていた役者さんだったので、ガルフレの発表の時にお名前を見つけて、ご活躍を嬉しく思っていたのだけれども、ウィルが本当に素敵だった。パンフレットを読んで、ペアの木原くんが巧麻ウィルは「ピュア」だと言っているのを見つけて、ものすっごく納得した。
そうなのだ。巧麻ウィルは本当に「ピュア」だった。

素直にまっすぐにマイクと向き合って、そのまっすぐさ故に他人から向けられる感情を上手く交わすことができずに、自分が傷つくと分かっているのに受け止めてしまう面があって、言葉には出さない気づかいとかやさしさに溢れている。ちょっと不器用な10代の少年の一生懸命さが伝わってきたし、どれほど思いを通わせてもマイクはこの町を去っていくという現実に気づいてから、泣く泣く別れを告げるまでの絶望と葛藤が痛々しいほどに伝わってきて、気が付いたら涙が溢れてしまっていた。


志音くんのマイク

志音くんが演じるマイクはウィルの存在が気になる人から大事な人に変わっていく過程をとても丁寧に演じている。
好きが溢れている時の相手を見ている眼差しが全力で好きだって言ってるし、好きな人が大事な人に変わった瞬間にそれまでとは違う触れ方をしてて「好き」から「大事で愛おしい」それでいて壊してしまいそうで怖いみたいな感情が手の動きで伝わってきて、こっちは何度萌え殺されそうになったことか…!
好きな人に触れようとするドキドキ感、大切な人になってからの慈しむような空気感、それは大体伸ばした指先の繊細さによって表現されているのだが、その表現が秀逸だった。

好きな人との初めてのキス
幸せ絶頂の中のキス
悲しい別れのキス

と、同じキスでも状況によって見えてくる感情はまるで違う。
相手のことが大事だと語るその間が絶妙で目が離せなかった。

私は他のキャストの公演を観ていないので、観劇回のキャストの感想になるが、吉高マイクは愛しいものに触れることが本当に上手だと思う。

パンフレットの写真を観ても思ったが、寄り添い合う空気感が絶妙で、視線と指先に込められる愛おしさに胸を締め付けられる思いだった。


終わりに

今回、日帰り弾丸遠征を決めた一番の理由は、志音くんの歌を聴きたかったということがある。

シアタークリエでしかも出演者が二人しかいなくて、その上ミュージカルで…それはもう絶対にめっちゃ歌いますやん? ずっと志音くんの歌声に浸れるなんてそんな幸せな時間逃す手なくない?と思って、観に行くようにして本当に良かった。もうね。本当に志音くんの歌が最高だった!!
伸びやかなハイトーンボイスが本当に耳心地が良かった。歌が上手いの知っていたけど、さらに上手くなってて感動したし、お稽古期間中に志音くんが「自分の声が好きになってきた」とSNSに投稿しているのを見かけて、本当にいい経験をされているんだろうなと思っていたので、実感できたのが何より嬉しかった。
それに「今、これ聞こえてるのマイク越しじゃなくて地声ですよね?」って思う瞬間が何度もあって、本当にその声量に驚かされたし、これからのご活躍がますます楽しみで仕方がない。

私が見たのはシャッフル公演だったけれども、志音マイクと巧麻ウィルが魅せてくれた純愛が本当に愛おしくて、観に来てよかったと心から思う素晴らしい公演だった。

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