エームビ MANKAI MOVIE「A3!」~SPRING&SUMMER~ 感想

一度記事の公開をしていましたが、思う所があり大幅に加筆修正を行った上での再公開になります。
A3! 及びエーステに関する私のスペックは以下の通りです。

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ゲームの『A3!』メンスト最新章までプレイ済み。
MANKAI STAGE『A3!』シリーズ視聴済み。
基本的にゲームもエーステも春組推しの至推し。
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エームビを見ての感想になりますが、ゲームのことだったり、エーステのことも踏まえた感想になります。
純粋な映画のみの感想ではありません。また、どちらかと言えば辛口な感想もあります
時系列がごちゃごちゃしているので、記憶違いがあったらすみません。
あくまで個人の感想です。
ネタバレ含みますので未鑑賞の方はご注意ください。

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はじめに



 パンフレットやインタビューを読んだり、SNS上に投稿された監督の話に触れるにつけて、エームビのメインターゲット層はこれまでにA3!やエーステに触れてこなかった人たちなのではないだろうかと思うようになった。
 エーステとエームビの関係性を考えた時に、エーステへの入門編という位置づけになるのではないだろうか?
 つまり、ゲームを日々プレイしていて、エーステも見ている私は今回のエームビにおけるメインターゲットではない。
 と、考えると私がエームビに対して抱いた物足りなさはあながち間違いではなかったのではないかと思い始めた。
 (メインターゲットではない人間が感想をまとめていくので、辛口感想を読みたくない人は、ここで読むのを終わってください)


物足りなさの理由


 私が初めてエームビを見たのは、1番はじめの舞台挨拶中継回だった。
 登壇したキャスト達のわちゃわちゃしたやり取りが楽しくて、本当に舞台挨拶中継は最高だった。キャストそれぞれが作品や自身が演じる役柄に対する大きな愛を持って話してくれる姿がとても好ましかったし、劇中のお芝居も相変わらず素晴らしかった。
 3年間エーステでそれぞれの役柄を演じ続けてきた彼らの演技への信頼は厚いし、キャラクターそれぞれへの愛やそれぞれの組への愛が溢れていることを知っているからこそ、映画館の大画面に映し出された姿に胸が熱くなった。
 なったのだが、見終わった時に真っ先に浮かんだ感想は「なんでだろう…」という不完全燃焼した感情を持て余したものだった。
 何故だろう?
 ずっと悶々と考えて、物語の展開及び構成に不満が残るせいだと気が付いた。
2時間弱で春夏2組の話を展開しないといけない中で、入門編としてはまとめられている方なのだろう。
 しかし、エーステ履修者からすると、全体的に雑な印象が否めない。
 
 例えば、一番はじめの春組の劇団員集めのシーン。
 咲也→綴→真澄ときて、次はシトロンと至さん! と期待していたら、まさかの街中シーン無し。いきなり寮のリビングに春組が集合していて「は?」ってなった監督は私だけはないはずだ。
 これは完全に私の推測だが、該当のロケ日は立石くんと大和くんがスケジュール的にアウトだったのではないだろうかと邪推してしまった。(撮影時期がいつかは分からないけど、今年の前半だったらチョコ戦と生執事が続いていたなぁ…とか)
 リビングで春組が集合して支配人が至さんの紹介をしている時に、「エリート商社マンで平日昼の稽古は難しいようです」と紹介していたのは、色んなフラグに思えた。
 なるほど、つまり至さんがいない場面は、仕事で不在設定か。(生執事終わったらそのままロミジュリのお稽古始まったものね…とか、本当にいらん邪推をしてしまうのがなんとも言えなかった)
 
 加えて、エーステでは全員のソロシーンが用意されていたのに対して、エームビではまさかのソロシーン無しの人がいる異常事態に、それはエーステとして無しではないだろうかと思ってしまった。
 劇団員それぞれにファンがついている状態で、誰かのソロシーンを入れるとするならば全員分入れて欲しかった。
 一成ファンの人に怒られそうだが、私には一成のソロシーンが流れ的に唐突すぎて、それだったら、初代夏組の映像を観ながらの三角のシーンがあった方が自然ではなかっただろうかと思わずにはいられない。
 至推しの私としては、たるち発覚後の壁ドンシーンがない状態からのソロシーンにちょっと期待していた部分があったけど、まさかの対話無しの独白オンリー…。申し訳ないが、私はあのシーンをソロ見せ場とは認められない。
 あと、家族エチュードの後の「もう一度誰かを信じてみてもいいのかもな」が、割と重要なセリフだと思うんだけど、入っていなかったことに対する衝撃が強かった。
 春組の皆を見つめている至さんの胸の中で、文字通りモノローグで思っていたのかもしれないけど、だとしたらちゃんとモノローグを音声化してほしかった。
 と、言う風に悉く映画で見ることが出来たらいいなと思っていたシーンが雑に過ぎていき、どんどん私の中でフラストレーションがたまっていく。
 
 そして始まった劇中劇を見て、ようやくエームビがどういうものなのかと合点がいった。
 なるほど、本当にエーステの映画化だったんだ。
私は、エームビの情報公開があった時に、キャストはそのままに映画独自のA3!が展開されるのだと思っていた。
 先行して舞台版キャストを多く起用して映画化した刀剣乱舞があった為、無意識にそう思っていたのかもしれない。
 だからこそ、旗揚げ公演の話をするにしても劇中劇は映画独自の物を見ることが出来るのかもしれないと期待していたのだが…劇中劇が始まり冒頭の音楽が流れたことで、エームビとはどういうものなのか私の頭の中でパッチリとピースがハマった。
 そうか…そうなのか…。
 衝撃と同時に、残念だなと思ってしまったのは許してほしい。
 あくまでエーステへ興味を持ってもらうための入門編。
 だから、見終わった後に私がエーステの円盤を観たいと思ってしまったのはきっと正解なのだろう…。
 だけど、そこは…せめて劇中劇は頑張って欲しかった。
 ただエーステの劇中劇をなぞるのでは無く、劇中劇自体を全く別の演出構成で見せてもらいたかった。
 カメラワークだけではなく、ステージとは違う環境だからこそ出来る劇中劇の演出があったと思うのだ。
 エーステと同じ構成の劇中劇ならば、もうそれはエーステを観たらいい話になってしまう。
 もしくは、もういっそ旗揚げ公演ではなく、完全オリジナルストーリーの話でも良かったのではないだろうか…。

良かった点



 もちろん、良かったと思う面もある。
 真澄役の高橋怜也くんにとっては、エームビはとてもいいタイミングだったのではないかと個人的には思っている。
舞台に限らず、長く続く作品には、どうしてもキャスト変更がついて回る。見ている側に比べられることも有るだろうし、既に出来上がっている場所へ飛び込む時に、共通の経験があるかどうかというのは、大なり小なりはじめは距離感が生まれたりするものではないだろうかと思うわけだ。
 例えば、エームビがなくてそのまま春単2からの参加だった場合とエームビを経ての春単2では、スタート時点でのキャストの関係性も役へのアプローチも全く違うものになると思うのだ。

 エームビでやった旗揚げ公演は、新生春組が0から1に変わっていく物語だ。
 0から芝居を始めて舞台に立つ。
 それまで全然知らなかった人同士が0から関係性を築いていく。
 この0から1の過程を経てこそ春組は家族になっていく。
 その0から1の時間を新しく高橋くんを迎えて過ごすことが出来たことで、キャストの中での旗揚げ公演の記憶が同じ景色で蘇るのは、本当に得難い財産の様に私は思う。

 そして、それは観客サイドの私たちにも言えることだ。
 エームビの情報公開があった時、「冬に映画…でも、それに輝くんの真澄くんは出ない…」だったと記憶している。
8月のトルライ春で碓氷真澄役の牧島輝くんの卒業が発表されていたので、喜ばしいけど複雑な心境もあって、自分の感情をどうやって持っていったらいいのか分からなかったことを覚えている。

 けれど、フィルコレの時のキャストの皆の話や、トルライ春に向けてのインタビューで語っていた「2代目真澄役の高橋怜也くん含めて自分たちは家族なんだ」という話に触れて、何かこう…複雑な気持ちを抱えたままだった私の気持ちが一つストンと腑に落ちた。

 キャストの皆が家族と言っているんだから、じゃあ、その家族を丸っと推すのが春組推しの私がやるべきことなのでは???

 そう思ってやることが定まったら、もうあとは全力で推していくだけなので、トルライ春は状況的に現地に行くことは出来なかっただけど、配信を買いまくって全力で楽しんだし見守った。
 輝くんが最後まで真澄くんを演じきってくれたことで、「ありがとう」の言葉しか出てこなかったし、自分が納得いく形で最後まで応援することが出来たので、事前に卒業を教えてくれていた公式には感謝しかなかった。

 この悔いなく全力で応援出来たというのは、実は私にはとても大きな意味があって、やり切ったからこそ、次に目を向けていくことが出来たのだ。
 映画公開前に発表があったエーステ春単2の上演決定にどれだけ歓喜したか分からない。
 千景さんを迎えて始まる新生春組2年目の物語をエーステで見ることができることが本当に楽しみで仕方がない。
 この情報解禁の時に組まれていた配信番組が私にとっても新しい春組との初めましての場だったわけなのだが、なんの心配もなく春組として5人が千景さん役の染谷くんを迎えていて、「あぁ…春組がいる」って思ったし、エームビを見て「この春組の皆が紡ぐ物語が楽しみで仕方ない」と思うようになっている。 

 また、キャストの好演が光った。
 劇中劇でのマキューシオの「これはこれはキャピュレット家の~」の歌い方が好きだ。
 キャピュレットが嫌いなの全面的に押し出して、慇懃無礼な感じが凄くいい。

 そして、それに返す「気安く話かけるな~」の至さんの音が高くてビックリしたのだが、「そうか、初演だからそうなるのか」ってちょっと私の中で新たな発見があった。
 トルライ春の再演パートの時、ティボルトの歌声にすごい凄みがあったが、あれはあくまで再演で色んな役を経験してきた至さんだからこそでた凄みであって、エームビの至さんは0から1にしようとしている最中の至さんだから、まだそこまで凄みが出ていないから高めで初々しい雰囲気にしているのでは???立石くんすごくない???(個人の妄想です)

 あと、ロミオとジュリアスの尽力によって両家が和解した後のロレンス神父の満面の笑みがズルい。
 そして、モノローグがリアルにモノローグになることによって、舞台上の緊張感が増したように思う。
 また、客席が映し出されることのインパクトが大きかった。
 あんなに舞台から客席って見えるものなのだ。
 舞台を見終わった時のこちら側の満面の笑みがエームビみたいにキャストの皆に届いていたらいいなと思ってしまうくらいエームビの中で客席にいた人たちは皆いい顔をしていた。

 背景を作りこむことにより場面の説得力が格段に上がるのは映画ならではの様に思う。
 劇場、寮内、屋内と背景があるだけで、立体感が随分変わってくる。
 室内での映像が多かった春組に対して、夏組は屋外での映像が多かった。
 夏組の皆の距離が近づくにつれ、砂浜での距離感が変化していくのが見ていて面白かった。
 最初は点でバラバラだったのに、一回天馬がやらかして悪い空気になってからの仲直りに向かっていく姿が砂浜を走るシーンに集約されているように思う。
 余談だが、ビーチバレーのシーンでブロックで飛んでいるすみーが頭の上で△作って飛んでいのに笑ってしまった。あれでは一生勝てない(笑)

 あと、5人が一斉にペットボトルを煽るシーンは、スポーツ飲料のCMかな? と思ったので、「飲料メーカーの偉い方、エームビとコラボはいかがですか???」ってなった監督は私だけではないはずだ。

 あと、この時皆が着ていたオリジナルTシャツを是非とも売って欲しい。
 見終わった後で「あれは絶対カズナリミヨシのデザインだ!」「テンテンというパトロンがいるので、作り放題」「なんだったら、幸ちゃんが全員分カスタムしてくれるんじゃね???」と友人と大盛り上がりの話題提供をしてくれたTシャツ。
 他の組だったらどうなる???っていう所まで妄想を広げてくれた神アイテムなので、是非キャストと同じサイズのレプリカで販売をお願いしたい。
 副音声で夏組の皆が陳さんにお願いしてたから、キャストの皆はゲットする未来があるのかもしれない(笑)

 私は春組の女だけど、春夏公演を初めて見た時から号泣したのは夏組だった。
 それはたぶん春組が高校生、大学生、社会人と年齢に幅があることに対して、夏組は中高大と多感な年齢の子たちが集まって本音をぶつけ合ったからだと思う。

 旗揚げ公演は、春夏秋冬各組リーダーの成長譚の側面も有しているわけで、各組リーダーの中で最年少の天馬くんは2段階の成長が見られたように思う。
 まずは、ド新人の夏組メンバー達への演技指導。
 出来ない所にばかり目が行き、「どうして出来ないんだ!!」とだんだんイライラが爆発していく。
 そんな時に寮のバルコニーで咲也くんに話かけるシーンの天馬くんを演じる陳内将さんのお芝居をみて、公開時のインタビュー記事で見かけた倉田監督と史也さんの対談インタビューを思い出した。

 「咲也や椋は映画ならではのアプローチが向いている」というお話だったのだが、内面的な部分を表現するという点においては、天馬くんが見事にハマったなと思った。

 不協和音渦巻く夏組の空気をどうにかしないといけないと思う悩める夏組リーダー。
 他の夏組の皆の前では絶対にそんな表情を見せたくはないけど、咲也くんの前ではほんの少し見せる年下感と言いにくいことなのでどこかもごもごとした感じになってしまう天馬くん。

 このもごもご感が、舞台とは全く違うもごもご感で映像ならではの繊細さが光った。
 いくらマイクを仕込んでいるとはいえ、舞台上であのお芝居をしてしまうと後方席や上階席には届きにくい。
 しかし、映像であれば皆が等しく同じ距離感で見ることができる。
 いやマジであのちょっともごもごしながら「春組はどうしてたんだ」って聞いてるテンテンが可愛すぎて、「陳さんすごいな…」ってなったし、やはりそれは映像作品のご経験があるからこそなのかなと思わずにはいられなかった。

 夏組として一致団結した後で、もう一段階天馬くんには試練が襲ってくる。
 それはトラウマの克服。

 MANAKIカンパニーに入ったのは、子供の頃にできた舞台へのトラウマを克服するためだという話を夏組全員に話すシーン。
 これは完全に夏組内での信頼関係が出来上がっていないと話せない内容だ。
 その”人には見せたくない知られたくない部分”をさらけ出したことによって、もう一段階夏組の結束度合いがましたし、ゲネプロ後への会話に繋がっていく。
 散々だったゲネの失敗に対して「俺のせいで…」っていって頭を下げる天馬くんの涙がポタリと落ちるカメラアングル神だった。
 あそこのシーン、本当に天馬くんが成長したなって思うシーンで、そこを経てからの本番はただの胸アツ。


終わりに


 私は春組の女なのでどうしても春組に対する期待や気持ちが強いので、感想が辛口になってしまいがちだ。
 なので、自分がエームビの夏組に対して感じた感想がもしかしたらエームビ全体の一般的な感想になるのかもしれない。
 なのでA3!もエーステも知らない人向けの入門編としては、本当によくできた映画なのだと思う。
 ただ、何度でも観たいかと聞かれると正直私は答えに窮してしまう。
 キャストやスタッフ陣に作品に対する愛があって、作品を観る私たち観客にも愛がある。
 むしろ、作品に対する愛ゆえのすれ違いが起こっているようにも感じられるので、手放しで喜べないことが歯がゆい所でもある。
 
 3月に控えている秋冬も見に行こうとは思っている。
 推し組ではないので、春夏よりも比較的冷静に見られたらいいなと思いつつ、春単2に備えてエーステ自体も見直していこうと思う。

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