ミュージカル「刀剣乱舞」にっかり青江単騎出陣 高知公演観劇記録

ミュージカル「刀剣乱舞」にっかり青江単騎出陣  高知公演(以降、「青江単騎」)の観劇感想です。
あくまで個人の感想です。
ネタバレも含みますので、舞台をご覧になっていない方は閲覧お気をつけください。

ミュージカル「刀剣乱舞」シリーズ履修済み。
ゲーム履修済み。
青江単騎は初観劇。

公演日: 2021年10月24日(日)
開演時間:18:30
会場:  須崎市立市民文化会館

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私にとってミュージカル「刀剣乱舞」(以降「刀ミュ」)は、県外に遠征して観に行くコンテンツだ。
実際、これまで大阪や東京に出向いたし、出かけていけない時は、地元の映画館で上映されるライブビューイングを観に行っていた。
刀ミュに限らず、2.5次元の舞台を観たいと思ったら自分が遠征するか、配信を見るかしか選択肢がない(ライビュすらされない場合もある)地方都市高知県で刀ミュが上演される。
それはまさにとんでもない大事件である。

青江単騎が高知に来る…。
高知に来る?
この時点で、どういう事だろうと一回戸惑いが来た。
刀ミュが高知にくるという字面が既に高知の審神者にはパワーワードなのだ。

しかも、2021年秋公演のスケジュールで発表された会場は須崎市立市民会館。
怒られるのを覚悟して書くが、「なんで須崎?」と思った人は多かったのではないだろうか。
県庁所在地の高知市とは異なりいささか交通の便が悪い。
同じ規模のホールが高知市にないわけでは無いのに、なぜ須崎が会場に選ばれたのかと思っていたが、実際に観劇してみると会場になった須崎市立市民文化会館のキャパシティと舞台サイズが青江単騎にはちょうどよいサイズだったのかなと個人的な見解を持った。

途中休憩なしの上演時間75分。
たった一人で【にっかり青江】が魅せる舞台は、大きすぎても小さすぎてもその魅力は十二分には発揮されない。
まさしく、あの会場でなくてはならなかったと思わずにはいられない会場選びだった。

今回、事前に配信などは観ずにまっさらな状態で観劇に臨んだ。
席は2階席1列目。
舞台全体が良く見渡せ、ステージ面まで演者がきても見切れない絶妙なポジション。
持参したオペラグラスで十二分に表情も捉えることが出来る。
個人的に舞台全体を俯瞰してみることが出来る上階席が好きなので個人的になかなかの良席だ。
舞台に近い方が、テンションが上がるのは間違いないが、演者・音響・照明が三位一体となって作り上げる舞台を余すことなく観るという点では、個人的には上階を良いと思っているので、2階席が当たってしょんぼりしている人も自分なりに楽しめる何かを見つけてもらいたい。

さて、舞台の感想については
「ものすごいものを魅せられた(見せられた)」
の一言に尽きる。
落語あり、狂言あり、歌あり、手遊びあり、芝居ありと、これだけ多くの要素を取り込めるものなのかと思わずにはいられない。
日本の伝統芸能の要素を取り入れながら、それはあくまでエッセンスとして取り入れられて、刀ミュの世界観にブラッシュアップされている。
その洗練された舞台には隙がなく、【にっかり青江】を演じる荒木くんの細やかな演技が一人芝居であることをきちんと成立させていることに拍手しかない。

物語は極修行の道中だ。
これまで出陣した戦いの思い出や本丸を出立する時に見送りの仲間達とのやり取り、旅の途中で出会った人々とのふれあいなど、微笑ましい場面が続く。
特に赤子を抱いて子守をしていた様子が徐々に大きくなり、繋いだ手を離して走りだしていく様子がありありと伝わってきて、とてもいい場面だなと思いながら鑑賞していた。
物語の終盤は自分の名前の由来となった女幽霊との邂逅だ。
この場面は観ていて鳥肌が立った。
荒木くんが【にっかり青江】と女幽霊を一人二役で演じ分けていたのが本当に凄まじかった。
上手を向けば女幽霊。下手を向けば【にっかり青江】
瞬時に入れ替わり、二人が相対している様がありありとこちらに伝わってくる。
怯えた表情と妖艶な表情。
どうやったらあんなに瞬時に切り替えることが出来るのだろう。
片時も目が離せないというのはこういう事かとただただ舞台にくぎ付けだった。

このシーンにおける衣装とウィッグの早変わりも素晴らしかった。
徐々に乱れていく髪と服。
特に髪の毛はあそこまで乱れていたのに、最後にはきっちりと結い上げた姿で戻ってきたことが信じられない。
いや、ウィッグを被り直しているのだと思うのだが、それにしてもあんな短時間で綺麗にかぶれますか???
歌舞伎の早替えですか???って思うくらいで、めちゃめちゃ早替えの様子を見てみたいと思うくらいプロの技が凄かった。
一都市一公演が普通に組まれている中で公演回数は重ねているにしても、早替えの場所だったり、舞台までの距離は各会場によって微調整が必要だ。
リハーサルはもちろんされているだろう。
演者さんがプロフェッショナルなのは間違いないが、支えるスタッフさん達も本当にプロフェッショナルばかりで、今、目の前で繰り広げられているクオリティを当たり前に出せるプロの仕事は本当に凄いなと脱帽だった。

そう…ある一定の高いレベルが常に要求されているなかで見事にそれを体現している青江単騎のカンパニーの皆さんが本当に凄いと思う。


【にっかり青江】はたった一人で会場にいる1000人近い観客を魅了した。
最後の彼の優雅なお辞儀に対して観客は割れんばかりの拍手で応えた。
私は高知でも舞台作品を観たことはあるが、あれほど熱量のこもった惜しみない拍手の音を地元で聞いたことがない。
賞賛の拍手は終わることなく最後の終演を伝える影ナレに対しても送られた。
こんなことが高知で起こるのだ。
そのことが純粋に嬉しかった。
素晴らしい舞台は、どこであっても必ず観客の心に届く。
普段、直に演劇に触れる機会が少ない地方民に、素晴らしい機会を与えてくれた青江単騎に本当に賞賛の拍手を送りたい。


登場した瞬間から一貫して【にっかり青江】であり続けた荒木くん。
あの内容をひたすら演じ続けるのは、本当に大変なことだと思う。
移動に移動を重ねるのは、メンタルだけでなく肉体的にも負担は大きいはずだ。
けれど、インスタグラムなどのSNSで地方公演に臨むにあたっての心構えや考え方を発信していて、その考えに触れ、本当に人として尊敬ができる役者さんだと改めて思う。


【にっかり青江】が旅をするように青江単騎のカンパニーも旅をする。
そして、審神者たちもまた旅をする。
この旅が終わる時、一体どんな【にっかり青江】を見ることが出来るのだろう。
全ての地を巡り、真の意味で極となった姿は一体どんな風だろうかと考えるが、今の私ではとてもじゃないが想像がつかない。
ただ言えるのは、本当にとんでもない偉業のただ中にあって、その一片の時間を共有することができたということだ。

2021年秋の公演は今日で一端幕が降りる。
充電期間を経て新たに挑む来年の公演が今から待ち遠しい。

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