頭の中の治安は悪いのに


昔から、見知らぬ人に話しかけられることが多い。
道を聞かれるのはしょっちゅうで、最近は「今何時ですか?」って聞かれることが増えた。
旅行に行けば写真撮影を頼まれたり。
友人と一緒にいても、話しかけられるのはいつもわたし。
「話しかけやすいオーラが出てるんだよ」と友人には言われたけれど。


仕事中、出版社の営業さんと話す機会がある。
某社のひとは、店に入ってくるなりわたしに近づいてきて、開口一番「以前どこかでお会いしましたよね?」。
首にIDを下げているから関係者なのは間違いない。が、当時のわたしはまだ入社して1ヶ月。営業さんの顔も名前も分からないし、そもそも初対面だ。
「まだ入社したばかりの新人ですし、初めましてですね」
得意の営業スマイルで躱そうとしたけれど、「いーや、絶対どこかでお会いしてますよ!」
押しと思い込みが強すぎる。
名刺をくれたけど、やっぱり名前に覚えはなかった。今でも訪店のたびに「どこかで会ってる」と言う。そろそろ諦めてほしい。

先日、買い物がてらショッピングモールを徘徊していたら、肩を叩かれた。「久しぶり!」
お前 is 誰?
「えーと、どちらさまですか?」
「え?覚えてない?俺だよ」
貴様のようなチャラい知り合いはいない。
「寂しいこと言わないでよー」
まずい、本当に知り合いなのかも。
小学校以降の記憶を引っ張り出して、同級生、バイト先の同僚、客、あらゆる接点のあった人物を総当たりしてみる。その中に、目の前の人物の顔は、ない。
変な勧誘だったら嫌だな。
「ごめんなさい、思い出せないので、お名前教えてください」
「え?本当に思い出せない?つれないなあ」
この辺りで、彼の視線が泳ぎ始めた。
なんだ、人違いで声かけたけど引っ込みつかなくなったパターンか。ひとこと「勘違いでした」って言えば済むのに、なんでそのひとことが言えないんだろう。
面倒臭くなって、「急いでるので失礼しますね」と逃げた。せっかくの楽しい休日が台無し。おかげでドーナツ爆食いしてしまった。


声をかけづらいオーラというものを出せるようになりたい。


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