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ISTQB ALTA v3.1.1をちょっと紹介

過去にこのnoteでISTQB CTFLのアップデートについて紹介する記事を書きました。

今回はISTQB ALTAのアップデート内容を紹介したいと思います。

ALTAは、アドバンスレベル テストアナリストの略です。

ISTQBではアドバンスレベルについて以下の紹介動画を公開しています。(ちょっと古いです)

アドバンスレベルにはテストマネージャー、テストアナリスト、テクニカルテストアナリストという3つの資格があります。それぞれの役割は異なるため、それぞれのシラバスでは、それらの役割に特化して必要になる知識をまとめており、試験ではその知識の理解を確認するようになっています。

テストアナリストシラバスは、ソフトウェアテストの活動の中で、ビジネスドメインのリスクに対するテスト内容の決定、設計、実装、実行に関する知識をまとめたものです。

誤解を恐れずゆもつよがざっくりいってしまうと、「業務知識をベースにした機能テストの設計に特化した人材のためのシラバス」です。

テストアナリスト資格認定の試験のベースとなるISTQB ALTAシラバスは、今は2012年に発行されたバージョンを使っていますが、2019年にメジャーバージョンアップとなる2019年度版シラバス(v3.0)がリリースされました。そして2011年にマイナーバージョンアップがあり、現在ではv3.1.1が最新バージョンになっています。

私はJSTQBにて技術委員をしていますが、今回、このv3.1.1シラバスの翻訳リーダーをしていて、絶賛翻訳中です。

日本語版を1日でも早くリリースするつもりで頑張っていますが、まずはちょっと一言で言うと何が変わっているか書いちゃいます。

試験のボリュームが変更になった

・トレーニングコースの期間が4日から3日へ変更になりました(ただし、日本では公認のトレーニングコースがないのであまり気にしなくて良いかもしれません)。大事なのはそれに合わせて以下の二つが変わったことかもしれません。

・試験問題数が60問から40問へ変更。
・試験時間が180分から120分へ変更。

ちなみに合格ラインについてはこれまでと変わってません。

以降、各章での変更内容を章単位で記載していきます。

テストプロセスにおけるテストアナリストのタスク(第1章)

まず、タイトルが「テストプロセス」から「テストプロセスにおけるテストアナリストのタスク」に変わりました。CTFLの最新版との間で対象範囲の整合性および一貫性を維持するためにテストプロセスのそれぞれの活動の名前や内容が見直されています。また、CTFLと重複する内容や他の役割の人が担う内容はシラバスからカットされましたので全体的にスッキリしました。

リスクベースドテストにおけるテストアナリストのタスク(第2章)

この章もタイトルが変わりました。2012年度版では2.4の節の名前がこの章のタイトルとなり、書いてある内容もそれだけになったので、かなりスリムになってます。

テスト技法(第3章)

この章はタイトルこそは変わっていませんが、扱っている技法がだいぶスッキリしました。Kレベルの見直しも入っています。この見直しは、ISTQBが世界的に行ったステークホルダーを対象にしたアンケートで得られたフィードバックに基づいています。

ただし、ひとつひとつの技法の説明が丁寧かつとても具体的になりました。

技法ごとに見るとこんな感じです。

同値分割法(K3)→(K4)
境界値分析(K3)→(K4)
デシジョンテーブル(K3)→(K4)
状態遷移テスト(K3)→(K4)
原因結果グラフ(K2)→ALTAで扱わなくなった
クラシフィケーションツリー(K3)→(K2)
ペアワイズ(K3)→(K4)
ユースケーステスト (K3)→(K4)
ドメイン分析 (K2)→ALTAで扱わなくなった
ユーザーストーリー (K2)→ALTAで扱わなくなった
欠陥ベースの技法 → ブラックボックステストの一部となった

念のための注記ですが、ALTAシラバスで扱わなくなったからといってそれらの技法がこの世から無くなったわけではありません。技法が適用できるところで使えば有用であることにも変わりありません。



ソフトウェア品質特性のテスト(第4章)

 参照すべき主要な標準としてISO 25010を採用するようになりました。そのため、特性の名前やALTAで扱う範囲に関しては見直しが入っています。
使用性テスト(ユーザビリティ)に関するスペシャリストモジュール(日本語版の翻訳はなし)との間で対象範囲の整合性および一貫性を維持するため、ALTAで重複するような内容はカットになっています。

レビュー(第5章)

学習の目的(LO)は2012年度版と一緒ですがKレベルがK4→K3になっています。内容はほとんど変わりませんが、整理の仕方として、「要件レビュー」「ユーザーストーリーレビュー」「チェックリストの調整」という分類が明確になるように節を追加しています。

欠陥マネジメント 

2012年度版にあった欠陥マネジメントについての記載は、CTFLシラバスで十分かつ詳細に説明されているとのことで、ALTAからはカットされました。

 
テストツールおよび自動化(第6章)

ISTQB® Test Automation Engineer Advanced Levelモジュール(最近、JSTQBで日本語版が公開されています)との間で対象範囲の整合性および一貫性を維持するように見直しが入っています。ただ、内容としては2012年度よりキーワード駆動テストについての記述が丁寧かつ具体的になっています。

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ここまでが変更内容の概要です。

私が読んでいいなと思ったこと

私の個人的な感想をここから書きます。

ちゃんと整理してスッキリした

他のシラバスとの重複内容を整理してシラバスそのものがスリムになり、学習に要する時間、試験時間、試験問題数もスリムになったのが良いと思います。知識として不要になったわけではなく、別のシラバスで扱っているのでISTQBの総合的な知識体系としてはカバーできているということです。

テスト分析についてより突っ込んだ説明がある

テスト分析の成果物であるテスト条件にも段階があるとか、いままで名言してなかった、当たり前だけど大事なことが書かれています、例えば、ある画面(テスト対象)の機能性(テストタイプ)と言ったハイレベルなテスト条件を識別してから、「その画面では桁数が足りないアカウント番号を拒否する」というローレベルなテスト条件を識別するという感じで具体的に段階を説明してます。

テスト技法でできることの記述がよい

テスト技法の網羅基準に関して、このような記述があります。

Completely fulfilling the coverage criteria does not mean that the entire set of tests is complete, but rather that the model no longer suggests any additional tests to increase coverage based on that technique.

つまり、「その技法に基づいてカバレッジを高めるために追加するテストケースがモデルにはこれ以上ないことを意味する」と書かれているのは素晴らしいと思います。この英文を暗記していつでも言えるようにしたいものです。

P-Vについて当然のように書かれている

テスト設計する時に大事になるパラメーターと値(P-V)について、当然のようにいろいろなところに書かれています。すっかりデファクトスタンダードな表現になったんだなーと思います、

テスト技法の説明がわかりやすい

シラバスだけで技法の具体的なことが理解できるようになったのではないかと思います。

「アジャイルだと」ってことが多く書かれている

例えば、アジャイルのスクラムチームだと、必ずしもテストアナリストがいるわけではないがテストアナリストが行う活動は誰かが必ず行うといったことが書かれています。

リファレンスが新しくなっている

FLの時にも思いましたが、定期的な更新大事だなって思います。ALTAもこの更新で、ISO/IEC/IEEE 29119、ISO/IEC 25010という最新の標準がベースになっています。

最後に

というわけで、簡単ですがALTAの変更点を紹介しました。なるべく早く皆さんの手元に日本語版をお届けするように頑張っていますが、英語であればすでに読めるので、語学の勉強がてら読んでみるのもいいと思いますよー。

英語版シラバスの掲載されてるISTQBのページ

以上



サポートありがとうございます。これをカテにこれからも頑張ります。