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レシートへの祈り

クリーニング屋のレシートが落ちていた。

そういえば、数日前にレシートを集めた人の話を聞いたのだった。私も拾ってみようと思い、少しレシートを開いてみた。

レシートは車に一度踏まれたようで、ピッタリと折られ、アスファルトの形がレシートにうつっている。半分開いたところで、なんだか覗き見をしているような気分になり、閉じた。

「入会金200円」と書かれていたので、初めて訪問するクリーニング屋だったのだろうか。クリーニング屋の会員カード、いつも無くしてしまう。電話番号で会員検索をしてもらうことが多い。部屋のどこかにカードがあると思うのだが、探すことすらも忘れてしまう。

一度開いたレシートをそのまま道路に戻すのは、ゴミを捨てているようでなんだか躊躇した。落ちていた手袋を道の端に退避させるが如く、レシートを電柱のそばに移動させた。

持ち主が気づいて持ち帰るとは思えなかったが、私以外の最適な人に見つかるように、少しだけ祈った。



そのまま立ち去ったが、なんだか写真を撮っておきたくなり、電柱まで戻り写真を撮った。初めは上から見下ろすように撮ったが「なんだかな〜」と思いレシートと目線を合わせて撮ってみた。うん、この方がいい。

ではなぜ最初「なんだかな〜」と思ったのだろう。

レシート自体の儚げな雰囲気が撮れていないと思ったのか、SNSに載せる時のことを考えたのか、私とレシートの関係が写真を撮ることによって邪魔されたと思ったのか。

道に落とされ、束の間拾われ、道の端にまた戻されたレシート。そしてその写真まで撮られ、日記に書かれてしまうレシート。

今これを書きながら、あの電柱の側にレシートがまだ落ちているのか気になっている。


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