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【1,738】祝日明けの金曜日

大半の企業や団体は、サンクスギビングの翌日も休みにして、四連休を取るのだが、会計監査の世界はそうでもないみたいで、妻は8am起床、9amには出勤していた。

私も私で、アメリカが連休中であっても日本は普通の週末だから、入ってくる仕事は入ってくる。なのであまり寝ているわけにもいかず、妻と同じぐらいに起床。

週末は部屋の掃除を必ず行うが、明日土曜日はあちこちのローカル・ニュースや新聞などで、LA近郊のエリアほぼ全域で降水確率100%と聞いたし、窓から光が射し込まないと部屋の掃除も億劫になるので、週末に向けた調理用食材の準備(野菜や肉の煮込み、カットなど)と共に済ましてしまう。

一通りの作業を終えてから、夕方への準備も兼ねつつ、PCの前に座り続ける。

早速今年もブラック・フライデーに関連した死傷者報道が出ている事に、東海岸の連中は攻めてるなーとやっぱり笑いつつ(ジョージア州のウォルマートで$1.60のタオルの為に喧嘩するひとたちも出たとかで、誇張かと思ったら他の幾つかの記事でもネタにされていたので、多分本当にあったっぽい)、以前触れたClassic Short Storiesにヘンリー著の短編傑作「The Gift of the Magi(賢者の贈り物)」が掲載されているのを見つけ、丁度このホリデー・シーズンにピッタリな気がしたので一読したりで、程良く時間が潰れたので、仕事相手に会いにダウンタウンLAまでお昼時に出かける。

今日は別に仕事の話しでは無く、単なる雑談だったが、今の日本の中年夫婦は長いあいだ不仲だったりするのが珍しくない、的な話しも含め、方向性が結構多岐に渡ったりもした。

予想はしていたが、ダウンタウンに近づくにつれ人混みが増していて、特にチャイナタウンは、通常の寂れっぷりがウソみたいに、活気があった。

ダウンタウン付近にあるチャイナタウンからは、金持ち中国人の多くがここ20年ほどで、私の住むパサデナの隣にあるアーケディア(Arcadia)を中心としたサンゲーブル・エリア(San Gabriel)に移動したと聞き、ラッシュアワーが撮影された1990年代の栄えっぷりが遥か彼方と言われるほど、人が減ってしまったのだが、こういう連休シーズンになると金持ちチャイニーズがしっかりここへ戻ってくる辺り、本当に誰も戻ってこなくなった感のあるリトル・トーキョーとは違っていて、羨ましくも思う。

帰宅後、別の仕事の準備をしていたら、ツイッター上の書き込みが切っ掛けで、どうしても江戸川乱歩の「化人幻戯(けにんげんぎ)」を読み返したくなったので、棚から引っ張り出す。

230ページほどのそこそこの長編だが、私が持っている角川ホラー文庫版は、これ以外にも「防空壕」や「灰神楽」といった短編を含め、全部で6本、収録されていた。

「化人幻戯」はやれトリックがヌルいだの、物語が破綻しているだので、乱歩作品の中ではあまり評価が高くないのだが、私はこれを10代の頃に読んで、とても刺激を受けたので、「完成度とかアレンジとかどーでもいい、速くてクサけりゃいいんだクソッタレ!」と突っ走る、メロディック・スピードメタル大好きなチェリーボーイズの如き心持ちに戻るというか、久々に読み返しても由美子夫人フオォォォォ!となれるものだ。

そのぐらいこの作品、直接的な表現がそれほど無い事もあって、未亡人の不倫ものミステリの入り口になるというか、多感な10代の頃に読むとけっこうタイヘンなコトになりかねないもので、何でもかんでもオーディオ・ビジュアルを伴って飛び込んでくる今の世の中だからこそ、読み返して結構新鮮な気持ちにもなったものだ。ああそうだよな、紡がれた言葉の向こう側を想像し、補っていく事で、活字の本当の魅力が伝わってくると言うか、たとえその内容がドスケベであっても、むしろドスケベだからこそ、得られる楽しさや面白さが違うんだよな。

尚、「化人幻戯」を思い出すトリガーとなった書き込みが、こちら。正に、他人の風呂へ土足で上がり込んだような形ではあるが、「浴室痴戯」という作中の見出しをどうしても伝えたかったのだと、客観的に見ると思う。

適当に書いているうちにこれまた良い時間になってしまったが、天知茂版明智小五郎ドラマで「化人幻戯」をアレンジしたエピソードがデイリーモーションに上がっていたので、今晩の夕食はこれを見ながら過ごすとしたい。