おじいちゃんの私小説の話

 今から10年ちょっと前の、おじいちゃんがまだ90歳くらいの頃の話である。おじいちゃんは小説を書いていた。しかもパソコンで、である。
 私が文学部出身だったので「Word」の縦書きの設定をどうしたらいいか?なんて相談を受けたこともあった気がするが、あまり記憶が定かでない。その点、おじいちゃんは本当に昔のことを良く覚えている。

 実はその私小説が親族に配られた時、私はすぐにそれを読もうとしなかった。これで読み切ってしまって本を閉じたら、なんだかおじいちゃんが消えてしまいそうな気がしてしまったのだ。今思えば、それから10年も生きるのだから「何も考えずに読め!」と言いたいのだが……

 そして今、父もおじいちゃんも消えてしまった世界で、ようやく落ち着いて読書し始めたのだ。それが、なんともこ気味の良い文章に驚いている。思わずクスッと笑ってしまう。そして時々涙する……
 こんなに色鮮やかな文章が書けるなんて!文学部だった私は、一体何をしていたのだろうか?!とにかく孫の私としては、本当に楽しくなる文章だ!(もちろん一般に出版はされていないのであしからず)

 とにかく、おじいちゃんは幼少期の頃から大人になるまで、本当に色んなことを細部にわたって良く覚えている。そして、おじいちゃんの周りにいる人々も、ちょっと変わっていて面白い!そんな人たちを冷静に見つめて、そしておじいちゃん自身もそこに全力で向き合っていて、全ての出来事を楽しんでいる。一瞬一瞬の楽しみ方が、現代の私たちには真似できないものだと感じた。

 やっぱり、おじいちゃんてすごい!!

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