受注できる営業って ~「ニーズにお応えします」の是非~

私は今、人材に関するコンサルティングを行う会社(主に女性活躍やダイバーシティ推進に関連する)にて、営業を担っている。
主に人事部の方などとお話しして、課題をヒアリングして、研修や、現状把握のための調査や、女性活躍全般の進め方・戦略立案のコンサルティングとか、各種認証取得のサポート等の提案をさせていただくのだけど、この仕事をやるようになって、(PR会社時代からやっていたことではあるものの)「コンサルティング営業」の面白さと奥深さに改めてハマった。今はここをもっと武器にしていろんな委託先を支援していけるようになるべく、日々取り組んでいる。

そんな中、自分が営業を受ける側になることも、生活の中ではしばしばある。ちょうど今、実家絡みで不動産の売却を検討していて、何件かの不動産屋さんとやりとりしているのだけど、ああ、営業の関わり方で、こんなにも顧客は気持ちが変わるもんなんだな、ということや、こういう部分が決め手になるのだな、ということがわかり、ものすごく勉強になっている。

今回、自分の今の仕事とも照らし合わせて一番思っているのは、「お客様の要望を言っていただければ」も、一見お客様第一主義のように見えて、実は不親切にもなってしまうということだ。

ある、元々つながりのあった会社さんにまず査定を依頼した。内見前に、だいたいそのエリアであればこれくらいなのではないかという金額は教えてもらったが、思っていたより低い金額だった。次に実際に見に来ていただき、その時も丁寧に対応をいただいた。その後、「今、具体的な査定金額を算出していますが、いくらくらいでの売却を希望されているかお伝えください。できるだけご希望に沿うので」と言われた。これには困った。こちらとしては、相場がわからないから査定をしていただいたつもりなので、そこがないのにこのタイミングで希望を出しようがないのだ。
ここに答えるためにもと、別の会社さんにも査定を依頼した。この会社さんは、(今回、建物は古かったのもあり)現地視察に来ずとも金額をすぐに算出してくださり、その報告に来るというスタイルだった。金額は最初の会社さんに元々聞いていたよりもかなり高額な提示だった。説明の際には、何故この金額を自社が提示できるのか、今後何をどう進めていくといいのか、など、こちらが最初からは想像しきれていない、でも不安だと思うところの情報もすべて先回りして出してくれた。ので、たくさん質問して、いろいろと理解を深めることができた。家族がどちらを信頼したかは言うまでもない。(念のためもう数社にも依頼中)

不動産にせよ、女性活躍等のコンサルティングにせよ、忘れてはいけないなと思うのは「顧客は自分たちほど情報を持っていない」ということだ。もちろん、いろいろ勉強していたり、詳しい人もいるので、相手がまずもってどのくらいの知識を持っているのかを把握することが大事だけど、そこを確認した上で、相手が判断できるまでの情報提供をきちんとし、理解をしてもらうプロセスを丁寧にやらないまま「ご希望に応じますので」と言われても、適切な希望は伝えられないので顧客は困るのだ。

女性活躍という領域も、まだまだこれから進める企業が多い。
だから顧客も、各社からの提案をいろいろ見て初めて、自分たちのwillが明確にわかっていくということも往々にしてある。

私が営業をお手伝いしている会社は、研修にしてもカスタマイズ提案をモットーとしていることもあり、失注時に昔はメンバーとも、そこを棚にあげて「もう少し要望を伝えていただけてたら・・」(そこのヒアリングが足りなかったという自戒ももちろん込めて)などと考察していたこともあったのだが、ヒアリングが足りないというよりは、顧客が判断できる相応の情報提供が足りてなかった、ということも大いにあったのだと思う。ヒアリングはその上でさらにやるべきなのだ。

一見親切なように見えて、必要な情報提供を適切にせず、顧客に対して「ニーズにお応えします」とかいうのは、かえって不親切かもしれない。
字面だと当たり前のことのように思えて、実際の提案時にはやってしまいがちなので、自戒も込めて記録しておこうと思う。




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