見出し画像

OHSS+陽性反応が出た後の入院生活のお話①

心の準備も仕事の引き継ぎも中途半端なまま、管理入院することになった。

入院当日は採血があり、診察でエコーと採血の結果を知らされた。
「今日から入院ですね。腫れが引くまでは絶対安静です。待合室で待っててください。看護師が迎えに来ます。」
とドクターに言われ、待合室で待っているとスタッフ専用入り口のような場所から車椅子を押している看護師さんが現れた。
「え?車椅子?」
車椅子が必要なレベルなのかと驚いた。
「かえって振動がいくよねぇ。でも、車椅子の方が…って言われちゃったから、乗っちゃってください。」
と看護師さんに車椅子に乗るように促された。
自分で歩けるけどなぁ…と思ったのと、自分が思っていた以上に安静のレベルが高いことに驚きを隠せなかった。
病室に着くとベッドに横になるように促された。そこから体重、血圧、腹囲の測定をし、検尿カップと記録用紙が手渡された。
「水分を摂った量と、おしっこの量を記録してください。なるべくたくさん水分を撮るようにしてくださいね。」
説明の後、点滴の針を利き腕とは逆の手に刺された。
「今日は、このこれが2袋終わったら、点滴おわりです!明日はお風呂も入れるので。」
入院中はどうしても点滴とはマブダチにならざるを得ない。

看護師さんが退室したあと、やり残した仕事をするためにパソコンを開いたり、データが職場に送信できるのか、iPhoneのテザリングの設定をいじったりして過ごしていた。
定期的に看護師さんが点滴の様子と、水分補給と排泄の水分バランス、血圧、体温を見に来てくれる。

病室に誰もいないタイミングを見計らってパソコンで仕事をしていたら
「トイレに行くのも本当は動かないほうがいいんですから、なるべくベタっと背中をつけて寝ていてくださいね。」
と声をかけられた。ベタっと寝てしまっては読書も仕事も捗らない。
入院した翌週には職場に送りたいデータがあったため、入院して1週間は、看護師さんの目を盗みながら内職をすすめていた。(PC作業をスルーしてくれる看護師さんもいたが、声をかけてくれる看護師さんのほうがきっと患者思いなんだろうなぁ…なんてことも思ったり)

入院中のごはんも、とても美味しかった。だけど、1日寝たきりのため、食欲がわかず、早めにつわり食に切り替えてもらった。
朝のパンは食べられたので、昼はそうめん、夜はおかゆという低タンパクな食生活を続けることになった。

入院して1週間は持ち込みの仕事などやるべきことがあったため、安静生活もそこまで苦には感じなかった。
管理入院中は休診日以外は毎朝エコーで卵巣と腹水の様子、それから赤ちゃんの様子も診てくれるので、少しずつ大きくなる胎嚢を見ることが日々の楽しみになっていた。
ある日診察してくれた女の先生も「入院はしんどいけど、毎日かわい子ちゃんが見られますからねぇ〜」と言ってくれた。その通りだと思った。

赤ちゃんの経過は良好である一方で、安静に過ごしているのにも関わらず、私の卵巣は少しずつ大きくなってしまった。「いつ退院できるんだろう」という不安も大きくなっていった。



入院1週目の最後の診察で、片方が7センチを超えていることがわかった。
「うーん、7センチを超えると怖いね。病院と同じレベルの安静を自宅でも維持できるなら退院でもいいけど。6センチ以上だと捻転もありえるね。どうする?」
と診察でドクターに言われたのだが、入院が決まる時にも同じようなことを思ったなぁ…と思いながらどう返事をするのかを考えた。
入院の時もそうだったけど、病院の先生たちは、医療漫画やドラマであるような断定的な言い方をしない。
『あなたは、ここが悪くて、今後こんなふうにしていかないと悪化しちゃうから、こんな治療をしていかないといけません。だから入院です。』
って、ビシッと言われることを期待していたものだから、
『ねぇ、どうする〜?』
と、判断を患者に委ねられると、困惑してしまうのだ。見方を変えれば、患者がその後の療養について選べるのは、極端に病状が悪い訳ではないと解釈できるし、方向性を自分で決めたいという人にとっては良いのかもしれない。

入院を継続するか、それとも自宅療養に切り替えるか、頭の中で散々迷った。
結論が出せず、次回の診察まで考えてもいいよ、ということになった。



病室で看護師さんが血圧と体温を見に来てくれた時に、
「自宅の安静って、買い出しとかちょっとした家事とかもダメですか…?」
と質問してみた。
「うーん、ダメですね。卵巣の腫れを引かせるには動かないのが1番ですからねぇ。」
と答えてくれた。続けて私は看護師さんに素直な気持ちを打ち明けた。
「入院を継続するか、自宅で安静にするか迷っていて…。先生からはどっちでも良いって言われたんですけど、捻転の可能性があることも言われて、なんだか怖くなっちゃって。捻転したら妊娠したまま手術ですよね。妊娠の継続はできるのでしょうか…。旦那も終日仕事で、家に帰れば病院と同じように至れり尽せりという訳でもないから、同じレベルの安静はやっぱり無理だと思うんです…。だけど、自宅安静で良いレベルの患者が入院してると、病院や看護師さんたちの仕事を増やして迷惑なんじゃないかって思うんです…。」
すると、
「〇〇さんが不安なら、ずっと居てくれても良いんですよ。血圧や体温くらい、いくらでも測りますから。」
と笑顔で優しい言葉をかけてくれた。
看護師さんのこの言葉で、やっと入院の継続を決めることができた。
看護師さんって、患者さんの心のケアも上手なんだな、と思わされた瞬間でもあった。

看護師さんに気持ちを打ち明けたこの日、夜の先生の巡回で、
「ずーっと好きなだけ、居ていいから。」
とぶっきらぼうに言われ、そしてすぐに去られてしまった。
看護師さんが「病院や看護師さんたちの迷惑が…」の下りを先生に話したのだろうか。そう考えると少し恥ずかしくなってしまった。


日頃、自分以外の人に気を遣い、お節介を焼く仕事をしているせいか、いざ自分が至れり尽せりの状態になると、言葉で言い表せないくらいの居心地の悪さを感じてしまう。
感染症対策も緩めていない病院なので、面会もNG、絶対安静だから外出も一切禁止だった。白い壁となかなか進んでいないように見える時計の針を眺めるだけの生活はストレスを感じることもあったが、優しい看護師さんたちのお陰でなんとか乗り切れるような気がした。

入院生活後半はまた今度。
今この瞬間にも不妊治療で悩み苦しんでいる人たちの治療が上手く行きますように。
そして、自分のお腹の子の経過が、今度こそ良好でありますように。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?