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腹腔鏡手術体験談(不妊治療)その2

おへその下のホッチキスに不安を煽られソワソワしながら眠りについた手術当日の夜。

翌朝、看護師さんのノックと声掛けで目が覚めた。

「おはようございます。血圧測るのと採血しますね。」

「あ、はい…」

寝起きでまだ頭がぼんやりしてたけれど、「モーニング採血。しびれるぅぅぅ。」と心の中でぼやいていた。
朝イチの採血なんて、とほほ、と。

血圧は寝起きなのでかなり低め。採血は心の準備ができてなかったのもあって「いて。」と間抜けな声を出してしまった。

「一回抜きますか?」
「い、いえ。続けてください…。」

採血のあと、朝食の時間と診察の時間、そして退院の時間を告げられた。
「あのぅ、昨日トイレ行く時に、ホッチキスの針で傷をとめてて、びっくりしたんですけど…。これ、いつ外すんですか?」
とおそるおそる聞いてみた。
「あぁ、それ。先生がね、取ってくれますよ。注射より痛くないですよ。」
とにっこりと答えてくれた。
「注射より、痛くない、、!」
その言葉がかなり自分を安心させてくれた。ほっと胸を撫で下ろして、時間を逆算しながら、横になってぼーっとしたり、荷物の整頓をして過ごした。

朝ごはんが運ばれてきた。
焼きたてのパン2つ。バター。サラダ。ウィンナー2本に目玉焼き。りんご2切れ。牛乳。ブラックコーヒー。
ガッツリ固形物!!そしてけっこうなボリューム。
前の日に一食。しかもお粥とか流動食ばかりだから、視覚的には嬉しくなったものの、いざ食べ始めると胃がまだこの量を受け付けない。
よく噛んで少しずつ食べた。

牛乳とコーヒーもついててびっくり。
病院のごはんとは思えない豪華なメニュー✨

食事のあと、入院中の食事についてのアンケートがあったので、大満足であることを書いて提出した。

診察の時間は、他の部屋に入院している患者さんと一緒に向かう。
昨日、私の後に手術した女性も一緒だった。
病室を出たところで、
「傷口、痛くないんですか?」
とかなり驚いた表情で聞いてきた。彼女は下腹部に手を当てて、屈んだ姿勢で歩いていた。
「まぁ、痛いですけど、、。」
「え?普通に歩いてるじゃないですか、、!!!」
屈むほど痛いか、といえば、そうでもなく。痛みには個人差があるからなぁと、こういう場合なんて答えるのがベストなんだ?と考え込んだ。

診察室のソファに腰掛けて、名前が呼ばれるまでの間、彼女と雑談をする。前の日から彼女は「寒いですね」とか、「明日が手術ですか?」と話しかけてくれていた。そのコミュ力の高さといい、お肌のきめの細やかさといい、きっと自分より若い子だと思っていた。
「失礼な質問ですけど、おいくつですか?私よりもお若い気がして…」
「えっと、平成4年生まれです。」
「え…、同い年。私より2つくらい下かと思ってました、、、。」
同い年で、同じ日に同じ術式の手術。こりゃ運命しか感じねぇわ!!と思っていたのだけど、連絡先を聞く勇気までは出ず。
連絡先、いきなり聞かれたらきっと不審がられるんじゃないかとか、距離感を急に縮めるのも嫌がられるかな、とか、コミュ障モードに入る。
「術後3時間が1番痛かったですよね。」
「そうですよね。私なんて、出血が多くて、手術に3時間もかかったみたいで。麻酔から醒めたときに、時計見たら3時過ぎてたから、何かあったんじゃないかって不安になって泣いちゃって…」
ひーーー。3時間。旦那さん曰く、私の手術は1時間程度だったという。あなたの方が術後痛むのはその3時間の手術のせいでは、、??
「そういえば、傷口、見ましたか?私、怖くて見きらなくて…。」
「私はトイレに行った時おへその下だけ見ましたよ。ホッチキスの針が2つとまってて。なんか急に怖くなっちゃって、、。今朝、看護師さんに聞いたんだけど、これから多分、取ってくれるって。注射よりも痛くないそうですよ。」
と相手だけじゃなく自分自身に言い聞かせるように言う。
「お仕事はいつ復帰するんですか?」
「えっと、仕事は…実は去年辞めちゃってて。え?仕事してるんですか?」
「え…はい。一応教員なんです。担任もしてるし、1年から3年まで授業行ってるんで、あまり長くはお休み取れなくて…。念の為明日まではお休みをとりますけどね。」
と、仕事の話をしてる間に自分が先に呼ばれてしまった。


処置室に招かれて、そのまま仰向けになるように指示を受ける。「お腹のホッチキス取りますからね、先生を呼んできます。」
と案内してくれた看護師さんは姿を消してしまった。ちょっと待つと、女医の先生が現れた。その後ろにさっきの看護師さんがなにやら物騒なステンレス製のハサミみたいなものを持って女医先生に手渡した。
「はい、お腹見せてね。」
と服を上の方に捲し上げた。創部の3箇所に消毒液を塗られた。
「うーん。痛くない、ことはない。」
女医先生に「外す時、痛いですか?」なんて聞いてないのに。しかも痛くないことはないなんて、、どっかのCMみたいなことを言われてしまった。
「ほら、毛を抜く時も、痛いでしょ?」
あー、なるほど。そんな心持ちでいればいいのか!と少し不安が晴れた。高校時代、眉毛を剃ったらバレるから、100均で買ったピンセットで眉毛を抜いてたからそっち系の痛みなら全然耐えられる!
仰向けになっていたから外す様子は見えなかったけど、触られているかがわからないくらい、すいすいとホッチキスを外してくれて女医先生。
ぜんぜん、痛くなかった。
「はい、終わり。」
心の中で感心していた。なんて手際が良いのだろうと。そして術後1番不安だったホッチキス外しが終わって心が晴れやかになった。
「ありがとうございました。」
とお礼を伝え、待合室に戻る。戻ったら入れ違う形で同い年の子の苗字が呼ばれた。同い年の子は手を小さく振り処置室に入って行った。
(案外、痛くなかったから大丈夫だよ!)と、心の中でエールを送る。
数分後、診察室に呼ばれ、洗浄とエコーをした。
問題なさそうだったので、「自分の部屋に戻っておくように」と看護師さんに伝えられた。診察室を出ると同い年の子が処置室から戻っていた。
「先に、部屋に戻っておくようにって言われてから、先に行くね。」と小声で言って手を胸の辺りで小さく振った。すると、頷いて同じように小さく手を振りかえしてくれた。
一瞬、やっぱり連絡先を聞いておこうか、と頭によぎったのだけど思い直した。同じ産婦人科にかかっているのだから、きっとまた病院で会うこともあるんじゃないかって思ったのだ。
次会えたら、連絡先、聞いてもいいよね。
と自分に言い聞かせ、再会を願いながら自分の部屋に戻った。


部屋に戻った後、看護師さんに傷口のケアと、抗生物質の説明、それから支払いについてお話を聞いた。旦那さんが迎えに来てくれたので、午前10時までには退院。
病室を出る時、隣の部屋を覗くと、電気がもう消えていた。私より早く帰ったのかと、少し寂しく残念に思ったのだけど、「縁があれば、またきっと会えるよね。」と、名字しか知らない同い年の子の顔を思い浮かべた。

帰りの車の中で、旦那さんに、隣の部屋にいた同い年の子のことを話した。
「縁があれば、また会えるよ。どうせしばらくここ(産婦人科)通うんだしね。」
旦那さんに「また会えるよ」と言われて嬉しくなった。
不妊治療は痛いし、先の見えない不安で押しつぶされそうになったりと辛いのだけれど、不妊治療をしているからこそ出会える人もいるんだなぁと、前向きな気持ちになることができた。

退院翌日は自宅療養して、その次の日から仕事に復帰。定時で上がったのに夕方にはヘトヘトになって正直しんどかった。(1週間くらい休んでよかったかも、、と復帰を後悔。笑)
だけど、自分がいなきゃ回らない仕事があるのも事実。
あまりの復帰の早さに、生徒に「先生の最終形態はケンシロウや…」とボヤかれた。13歳なのに、よく知ってるね、北斗の拳。
今は世紀末ではないが、学期末ではあるよ。笑

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