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弓張月の御息所

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大人のためのお伽話、こころの奥底にしまっていた胸のトキメキを美しい言葉で綴ります❤️
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2021年6月の記事一覧

片割れピアス

片割れピアス

片割れピアス
初めからそうだったかのように
片耳だけ付けて
それが似合う年齢でもなくなりました

何故、こうして未だに残しているのでしょう
いずれその相方が見つかる宛てもなく
私のピアストレーの一角を
ひしめくひとりぼっちのピアス

もしかすると
それは、その頃の思い出に
しがみつきたいからなのかもしれません

決して揃いになることのないピアスはある意味私の姿
再会が叶うことのない
甘くて少しほろ

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「Lotus」

「Lotus」

例えば
殆ど他人に見せることのない
臀部のあたり
太陽の元に晒されることもなく
私の身体の中の箱入り娘のように
最も白い肌を保っているところ

人差し指より薬指の方が長い貴方は
その指を滑らかに臀部に沿わせ
その特徴から言われる男らしさの定説を
少し誇らしげに話してくれた

触れられたラインに沿って微かな痺れを感じながら
私はふとこの写真を思い出していた

やわらかな光を受けた葉の裏側が繊細で美し

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葉脈

葉脈

激しい雨音が鳴り響く昼下がりの午後は
オーケストラのクライマックスのように
あらゆる音が共鳴し、脳内変革が起こる

余計なものは一切排除
世界から遮断し閉ざされた中で
貴方のことを想う大切な時間

感情を自由に遊ばせ思うがままに呟くのです
「ダ・イ・ス・キ」
一つ一つの言葉を舌の上で転がしてみるの
それは鈍くひかる氷砂糖のように
囁くようにつぶやけば息に甘さだけが残る

枷が外れた身体から溢れる思

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葛まんじゅう

葛まんじゅう

京の夏を代表する上生菓子
「くずまんじゅう」

半透明の皮で餡を包んだ
みんずりとした和菓子をいただくと
遠くのほうから
祇園祭の笙の笛の音色が聞こえてくるような
そんな気がするから不思議

そのいでたちは
上品な貴婦人の肌の様でもあり
つるりと喉越しもよいところに
何故か色気を感じてしまう

「涼をとる」
暑さに任せて裸になるという訳でなく
絽や紗の羅(うすもの)の着物に袖を通す
簪は硝子玉を選

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