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葛まんじゅう

京の夏を代表する上生菓子
「くずまんじゅう」

半透明の皮で餡を包んだ
みんずりとした和菓子をいただくと
遠くのほうから
祇園祭の笙の笛の音色が聞こえてくるような
そんな気がするから不思議

そのいでたちは
上品な貴婦人の肌の様でもあり
つるりと喉越しもよいところに
何故か色気を感じてしまう

「涼をとる」
暑さに任せて裸になるという訳でなく
絽や紗の羅(うすもの)の着物に袖を通す
簪は硝子玉を選び太陽を味方にする
クーラーよりも
打ち水をした水蒸気から沸き起こる風を楽しむ

肌と肌を重ねていても
しとねに包まれたその闇夜に
一矢を刺すような鹿威しの音が鳴り響けば
瞬時に汗も引くというもの

自分の体感をいかに目で見て音で感じて狂わせて
寝苦しい夏の夜をしのぐのか
そんな大人の錯覚を味わうひとつとして
このくずまんじゅうを選ぶ楽しみがある

良いものほど賞味期限も短く
冷やしすぎも風味を損なうから
直前にひんやりとした井戸水で冷やすのが粋

何かと慌しい現代人にとって
日持ちがしないことも
井戸水で冷やすというひと手間も
それがとても贅沢なことだと分かる

過ごす空間や時間に余裕がないと
本当の美味しさを楽しめないのかもしれません
葛に色気を見いだし舌を喜ばす
そんな雅な夏を過ごしたいのです

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